見出し画像

埼玉いのちの電話研修講師:自死問題への取り組み

▼埼玉いのちの電話に関わるようになった経緯

 2023年11月、今年度も電話相談員の研修で、自死(自殺)の講義を行ってきました。
 社会福祉法人埼玉いのちの電話のお手伝いを始めたのが1991年ですから、もう30年以上のお付き合いになります。電話相談員の研修で自死について講義をしてもらえないか、と声をかけられたのがきっかけでした。私は筑波大学の大学院で稲村博先生に指導を受けました。稲村先生は日本のいのちの電話の創設者の一人であり、自殺学の大家でもあります。私自身は自死を専門に研究していたわけではありませんが、調査研究をお手伝いすることはありました。また東京のいのちの電話の面接室を何年かお手伝いしましたし、茨城いのちの電話立ち上げのお手伝いもしたことなどから声がかかったのだと思います。2023年からは理事も務めております。
(最近は「自殺」ではなく「自死」という言葉を使うことが増えてきましたが、「自殺学」など固有名詞的に使われているものはそのまま記します) 

▼自死問題はいのちの電話の中心テーマ

 いのちの電話はイギリスで自死予防活動を行うサマリタンズが見本になっています。自死問題はいのちの電話の中心テーマであり、研修でいい加減な話をするわけにはいきません。当初は学生時代の稲村先生の講義ノートをほぼ丸写しで喋っていました。すいません。ただ何度も喋っていると、相談員さんが求めているものもわかってくるので、徐々に内容をブラッシュアップしてきました。毎年講義の時期になると、この一年の自死関連の情報、話題を振り返り、私自身が学び直していく感じでした。

▼自死講義の概要

 現在は以下のような話をしています。

 ・前年度の自死数と特徴。ここ数年の傾向やトピックなど
 ・自死の3大動機+経済問題(業務起因性自死)
 ・自死未遂について
 ・自死防止の実際(心の絆療法の概要)
 ・フィンランドや我が国の自治体の試み
 ・「死にたい」と打ち明けられたら
 ・リストカット
 ・答えを急がない勇気(ネガティブ・ケイパビリティ)

 中でも「『死にたい』と打ち明けられたら」が、やはり研修生のみなさんの一番関心があるところで、毎年必ず質問を受けていました。私がお伝えしてきたのは、小手先のカウンセリング・テクニックではなく、「あなたに死んでほしくない」というみなさんの思い、迫力こそが大事なのだ、とお話ししてきました。そして、1月のnoteに掲載しましたが、今年度はネガティブ・ケイパビリティを紹介しました。自死の相談電話では、まさしく答えが出ない状況に向き合い続ける、逃げない誠実さが求められます。相談者が、話を聞いてもらえる、私は話を聞いてもらえるだけの価値がある人間なのだと気づき、新しい一歩に踏み出してくださること。それは電話のかけ手にひたすら寄り添うことで生まれてくるはずです。研修生のみなさんには、「自分もできるかもしれない」と思ってもらえるような応援を続けています。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?