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当社社長の榎本が産業衛生学会シンポジウムに登壇しました(JES通信【vol.148】2022.06.10.より)

 5月28日、第95回日本産業衛生学会のシンポジウム「長期メンタル休職者に対する職場適応力向上のための工夫‐様々な立場から」に当社代表取締役社長の榎本正己が登壇しました。

 榎本からは「外部EAPによる実践と工夫」と題し、休職期間長期化の背景となる要因をBPS(生物・心理・社会)モデルで整理し、それぞれに即したEAPでの対応を簡単に紹介して他のシンポジストの発表・意見交換につなげました。各シンポジストからの発表内容も簡単に報告します。

<EAP>
・Bio(生物):「治っていない」ケースには、治療環境や家族関係の調整、家庭問題の解決や軽減を支援する。
・Psycho(心理):「治りたくない、戻りたくない」ケースには、認知行動面やキャリア面へのアプローチなどにより、レジリエンスやモチベーションの回復向上を支援する。
・Social(社会):「戻してくれない、戻り方がわからない」ケースには、事実・思い・ニーズやルールの確認により、会社と本人の認識のズレを明らかにして相互理解を支援する。

<就労支援>
・発達障害傾向が職場適応能力を引き下げ、不調の再発や休職期間の長期化につながっているケースは少なくない。
・最低半年のプログラムの中で、個人セッションとグループセッションを通して認知や行動の変容を目指していく。グループの効果もあり、他者受容、自己受容、自己理解、他者理解と進んでいく。

<主治医>
・医療の役割は、疾病で低下した職場適応能力の回復。故に主治医は症状が改善すれば能力も「元通り」と考える。職場適応能力の高低自体はあまり復職の可否の判断に入れない。
・「発達障害だから仕事ができない」と「仕事ができないのは発達障害」が混同される風潮は困る。ただ、休業初期に休業要因を会社と本人ですり合わせておくことは、主治医による「下ごしらえ」とそれに続く外部機関や会社による支援のために重要。

<人事>
・就業場所や業務内容を限定しない労働契約で雇用している以上、限られた休職期間で原職(元部署・元業務)への復職を目指してもらうしかない。
・復職基準、休職から復職までの流れ等は全て文書化して配布し、常に立ち返って説明している。労務管理やルールの説明は会社の役割である。ルールの中で対応できないものは早めに説明する。

<弁護士>
・休復職のルールが一義的になる(人により変わらない)よう、判断基準と行動手順を具体的に定めること、繰り返し伝えること、従業員の理解を確認し、逸脱した言動にはフィードバックを行うこと。これらが従業員の適切な行動を促し、職場適応能力を鍛える。
・判例は最悪のトラブル例。結果だけをそのまま対応に用いるのではなく、プロセス含めて「こうならないために」の検討が大切。予防法務で大事なのは説明と対話。そのためにルールが必要。

 座長は産業医である高尾総司先生で、シンポジスト間でのコメントも随時入れながら進みました。休職者本人に会社のルールや職場での問題点を伝えるのは会社の役割である(主治医でも産業医でも外部機関でもない)こと、それを受けて本人が前に進むために「休職者によって言うことを変えない」「関係者によって言うことが変わらない」ことが大切、といったお話は、当社が目指し、実践している「職場と連携・役割分担した復職支援」がうまくいく企業でも共通しているポイントと感じられました。

▽大会プログラムはこちら
https://sanei-shikoku.jp/

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