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新型コロナウイルス対策に関する東大の教養学部長・総合文化研究科長からのお願い

こんにちは、Choimirai School のサンミンです。

【主要なアップデート】
(2020年5月15日)「感染症と文明 共生への道」に関するコメントを追加

新型肺炎に関する現状と今後の対応について、東大総合文化研究科長の太田先生からのメッセージです。マスコミの断片的で繰り返しの多い報道より、はるかに新型肺炎の要点を簡潔にまとめてあると思います。ツイッター上の画像は小さく、文章も少々読みづらいため、以下に文章を転載しましたのでまだの方はぜひ参考にしてください。

長崎大学熱帯医学研究所教授で、国際保健学や熱帯感染症学を専門とする山本先生の「感染症と文明 共生への道」もこの時期大変参考になる本です。感染症の完全な撲滅ではなく、あえて緩やかな共生を目指すというスタンス。今回のコロナ対策を考える上でも示唆に富む一冊です。

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                                                                                              令和2年2月1 8日

新型コロナウイルス対策に関する研究科長からのお願い

                                                                            総合文化研究科長 太田 邦史

この度の新型コロナウイルスの感染拡大に際し、 今後、 政府や本学において適切な対策が講じられていくと思いますが、 それに先行して暫定的に駒場でできることを考えました。免疫も研究している生物学者としての私自身の知見も踏まえ、 下記に少し長めにお願いを 書かせて頂きましたのでごー読頂き、 ご協力頂けますようお願いいたします。

【現状の認識】

国内で感染源が不明な事例がいくつか出て来ました。 厚生労働省によりますと、 この段階は感染拡大の初期に当たるとのことです。 この段階に入りますと、 水際で感染症が国内に侵入・拡散するのを排除することは不可能になります。

新興病原体に対する有効な防御法には、 ①検疫、 ②公衆衛生的な管理、 ③迅速な診断法、 ④ワクチン、 ⑤治療法・治療薬、 ⑥各人の免疫システム、 の6つの「盾」が考えられます。 今の日本では①の盾が破られ、 ③~⑥の盾はまだ有効に機能しないか、 存在していない状況です。 従いまして、 いずれ多くの方が新型コロナウイルスに感染することを前提として、 行動することが必要になってきました。

【ウイルスの特徴と症状】

今回感染拡大が起きているCOVID- 19 (coronavirus disease 2019)は、 普通の風邪の原因となるコロナウイルスの仲間で、 一本鎖RNAを持つウイルスです。 まだ、 このウイルスの迅速な検出法は存在しておらず、 RNAをDNAに逆転写した後、 PCRという方法で定量的に分析するという、 手間と時間の掛かる方法でないと検出できません。

以下、 感染者の状況を知る臨床医の方からの情報を記します。 幸い感染者の多くは症状が軽く、 普通の風邪のような症状があるだけのようです。 特徴としては、 通常の風邪は2〜3日で回復するのに対し、 1週間ぐらい熱が下がらず、 倦怠感と息苦しさが出てくるというものだそうです。 体のむくみや、 下痢がある人もいるようです(一部には発熱もしない無症状の感染者もいるようです)。60歳以上の高齢者や、 結尿病や高血圧、 呼吸器疾患などの基礎疾患のある人(以下「高リスク者」)で、この経過を経ることが多いそうです。しかし、健常な若者にも一部このような症状が見られることがあります。不思議なことに、小児がこのような症状を示すことは稀とされています。 感染後に発症するまでの潜伏期は、 平均で5日(1-11日)程度のようです。 なお、 ウイルスの感染力がもっとも強いのは発症から3~4日目頃と考えられています。 発症後、 1週間ほどで解熱して回復する人もいるようですが、 先ほど述べた高リスク者の一部では、発症から10日ぐらい経過した後に 入院を要するほど呼吸器症状が重症化する症例が見られます。注目すぺき点は、 小児や若者など免疫力が強い年代は、 重症に至る確率が相当低そうだという点です。 一方で、 高リスク者である基礎疾患保有者、高齢者、要介護者、 入院患者では重症化の確率が高くなります。 したがって、今後はリスクに応じて対応法を変えることが童要です。

【今後の対応方針】

この段階に入ったら、日本国内での感染の拡大はある程度避けられないと考えられます。最終的には、 感染から回復してウイルスヘの免疫を獲得した人の割合が増え、 感染拡大が収束してくることになるでしょう。その時には、 診断法やワクチンなどもできてくると思 います。 しかし、 それはかなり先(半年~1年後?)の話です。

もし、 感染拡大速度が武漢のように速くなってしまうと、なによりも医療現場の混乱が生じます。人の移動の制限や、 商業活動の停滞など、 経済・社会活動も大きな影響を受けます。 高リスク者の死亡例も増えてくるでしょう。 今、 早急に着手しなければならないことは、 高リスク者の新型コロナウイルスによる死亡率の抑制と、 医療機関の機能維持です。

このために、 今後いくつかの対策を政府が行ってくると思われます。 今回の駒場での対策は、 それを一部先取りしたような形になると思います。 皆様方におかれましては、 どうぞ自分のこととしてだけでなく、社会全体にどのような影響を及ぼすかも考えて、慎重に行動をして頂きたいと願っています。

【具体的な対応策】

1.  体調管理

定期的に検温(できれば毎日)し、 37.5℃を超えた場合は、 出勤・登校をせず、 自宅・自室にて待機しながら体調回復に専念してください。 これは、 交通機関や職湯で感染を拡大することを防ぐ意味もあります。 また、 なによりも皆さんの免疫機能をウイルスに対して 効果的に作用させるためでもあります。 とにかく無理して出てくるのは禁物です。(休業に 対する取り扱いについては、 大学本部の指示に従うことになります。)(※1)

2.テレワークや電子的ツールの活用

もともと働き方改革で取り上げられていますが、 不要な会議はできるだけ減らしたり、会議時間を短縮したリするようにしましょう。 ネット会議・ メ ール審議で済むものは、 できるだけそれで済ませるようにしてください。 狭い空間に長い時間、人が集まるのはリスクになりますので、 最小限に留める努力が必要です。(※2)

3.消毒や手洗い、マスク着用など

これは厚生労働省なども指摘していますが、 多くの人の手が触れる場所(ドアの取っ手やスイッチ、 リモコンなど)をアルコール消毒するのは有効です。 帰宅時にウイルスを家の中に持ち込まないことも大切です。 帰宅後も消毒、 入念な手洗い、 洗顔、 洗髪などをすることにより、 家庭内での感染リスクを低減できます。

4.  時差通勤や人混みを避ける工夫

高リスク者の方は、 朝夕の満員電車は感染のリスクが高いので、 時差通勤をしてみるのも良いと思います。 人混みや、 バーティーなども、 感染のリスクが高いので、(年度末なので難しいと思いますが)できるだけ避けるようにするのが望ましいと思います。(※3)

5.  ウイルスに罹ったか心配して不用意に病院に行かない

症状がひどくない段階(熱が出て2~3日の段階)において市中の病院に行くと、 (実はコロナウイルス感染者でないのに)他の感染者からウイルスをもらったり、(自分が感染者だった場合は)他の高リスク者の患者にウイルスを移したりする可能性があります。 いつ 診断するかについては、 各人のリスクに依存しておリ、政府から指針が発表されております。

(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html#Q16) この指針に従って、 的確なタイミングで「帰国者・接触者相談センター」や保健所に連絡するなど、 対応を適切な時期に行ってください。

6.健康メモをつける

しばらくの間は体調や体温、行動内容や移動範囲などをメモしておくと良いと思います。 万ー感染したときに、 治療や感染拡大防止を行うことができます。

皆様方におかれまして、 くれぐれも体調管理に気をつけて頂きたいと思います。年度末の多忙な時期ですが、どうぞよろしくお願いいたします。

《事務部からの補足》

上記の研究科長からの文書について、 事務部から制度的な面を中心に補足させていただ きます。

(※ 1)発熱による休暇取得について

37.5度以上の発熱があった場合は、 無理に出勤はせず、 自宅療養としてください。 この期間についての「教職員の就業上の措置」については、 「新型コロナウイルス感染症に関する就業上の取扱いについて(令和2年1月31日)」に従い、 産業医に相談の上、研究科長の判断により、 特別休暇となることもあります。

勤怠管理については、 回復後出勤可能になってから手続きを行いますので、 まずはご自身の療養と、 感染拡大防止にご協力お願い申し上げます。

(※ 2)テレワーク(在宅勤務制度)について

テレワークについては、 解熱後も自宅待機等となった場合、 職員については在宅勤務制度の試行を今年度、 実施しておリます。 ご本人の希望があり、 自宅等に勤務できる環境が整備されている場合は在宅勤務を実施することができることもありますので、 その際は、上長にご相談ください。

(※ 3)時差通勤について

時差通勤については、 教員・研究員は裁量労働制が適用になっておりますので、 出退勤時間については本務に影響がないようにラッシュアワーを避ける等の工夫を適宜行ってく ださい。

職員については、 勤務時間等規則第3条第1項に基づく始業及び終業の時刻について、1 2区分の勤務時間が規定されています。

新型コロナウイルスの感染予防として時差通勤を希望される方は、 勤務時間区分と期間について事前に上長に相談の上、 各勤務時間管理員に変更申請を行ってください。


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