そろそろ左派は〈経済〉を語ろう

お金儲けはすばらしい、なんせ、しっかりお金を稼ぐことで、より多くの負担ができて、それが弱者の生活の役に立つのだから、なんて、これは現実とはかけ離れた理想論だけれども。世の中はそのようなあり方には程遠く、ほんの一握りの人が「富」を独占している、のが現実です。

そんなにお金をもってどうするの?ということを踏まえて、なのでしょうが、二〇一七年の「経済民主主義指数」のリストで日本はOECD加盟の三二ヶ国中下から四番目、という結果を踏まえ、ブレディみかこは記述しています。

日本は世界で経済的に最も不平等な国の一つであり、「経済にデモクラシーを」後進国であるということだ。日本人の家計金融資産が史上最高の一八三二兆円と報じられる一方で、家庭を持ったり子どもをつくったりするのはエリートがすることだと思う若者たちが存在し、就職氷河期に社会に出ることを余儀なくされたロスジェネ世代が忘却され、シングルマザーたちが毎月の生理用品を買うために食事を抜いているということだ。

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「経済にデモクラシーを」の必要を説きます。つまり、経済の効用があまねく行き渡ることを目的としなければいけない、ということなのでしょう。それが困難な理由を、北田暁大は説明します。

 わたしは日本の問題は、「左翼が下部構造(マルクス主義の用語で、社会の土台である経済のしくみのこと)を忘れている」ということなんじゃないかと思っています。(略)経済的な下部構造の問題よりも、上部構造(下部構造に規定される法や政治、文化などの次元のこと)の問題――たとえば、文化の問題やマイノリティ、ジェンダーなどのアイデンティティの問題――に焦点を当てがちなんですけど、いつの間にか「大事なのは経済だけじゃない」というのが変質して、「経済は大事じゃない」ということになってしまったように思えます。

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「大事なのは経済だけじゃない」が変質して「経済は大事じゃない」となった、という姿勢を持つ左翼の弱さにつながったことを指摘しています。(柄谷行人のいう「生産様式ではなしに交換様式」としての)経済という土台をを見ないようにしているということですね。

「経済にデモクラシーを」が、優先されないことから生じる最大の問題点は、エッセンシャルワーカーをはじめとする、仕事の待遇の悪さにあるといえます。その仕事にあたる労働者が良好な待遇であれば、安全・安心も改善されるし、得た収入が消費へ回る、という良好な循環の経済の実現が必要、と痛感させられました。

『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう レフト3.0の政治経済学』
ブレディみかこ 松尾匡 北田暁大 亜紀書房 2018

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