愛についてのデッサン
という本を知っていますか?私は大学の附属図書館でたまたま通りがかった文学コーナーのたまたま手に取った本がそれでした。パラパラと目を通してみたらなんだか面白そうで、その本を借りて家に帰ったのです。
それが1月15日 金曜日でした。
家に帰って、勉強の合間に読み始めたその本は古本屋のオーナーである佐古啓介という人を主人公にした謎解きのような、エッセイのようなお話でした。若い男性が、親の古本屋という家業を趣味の様でありながら本業として引き継いで細々とやっていくのですが、訪れる人の古本に対する依頼は難易度が高く、思ったよりも佐古さんはあっちこっちに飛びまわって本を探しに行ってました。佐古さんがお店を空ける間は妹さんがお留守番をしていました。
この本が1979年に書かれた本だと、私が友達に送ったLINEにありました。小学校から陸上部でずっと外にいた私には読書という習慣は殆どありませんが、この本はのめり込むように読んでしまいました。読むことが娯楽だと思える本って私にとってはかなり衝撃でした。たしかその時、しなくちゃいけない課題があったけど、本を読むことと天秤にかけて、本は課題が終わった時のご褒美として取っておくことにしたのを記憶しています。それは、本好きの子供たちや大人たちにとって当然の経験だろうけど、私にとっては新鮮な感覚でした。
そんな中、2月の尾道帰省でひょんなことから23時に開店し26時に閉まる古本屋さんがあることを知りました。ゲストハウスに泊まっていたので22時に出発して海岸通りを歩きながら、久保の方にある弍拾dBさんを訪ねました。その折には、何の本も買わず、お店の方とも声を交わさず、ただ見学して出て行きました。
その後Twitterで弍拾dBのオーナーさんのアカウントを見つけ、すぐにフォローしました。
過去の呟きを遡りながら、オーナーさんが思ったよりも若いこと、妹さんがいて妹さんも尾道で古本屋分室を営んでいることを知り、また本をこよなく読み愛する人なんだろうなということを感じました。その姿があの話の中の佐古啓介さんに重なってみえて、それをご本人に伝えたいという気持ちが沸きました。
そして、今夜友達と再訪問。23時に開店するのに合わせて、近くのイタリアンに20時半に入店して23時前まで飲んでいました。尾道の方が京都より長く夜遊びができることに驚き。
アルコールが入ってこの前よりも口が滑らかに、気持ちは勇ましくなっていたので、今日は絶対に店の主に声をかけるぞと意気込んで参りました。それから声を掛けるからには何かを買おうと思って、お店の本棚をじっくりと膝をついてみたりして見渡しました。
店内は石油ストーブがついていて、冷え込む夜に心地よい暖かさでした。そうやって何かいい本はないかと探していて見つけたのが、野呂邦暢さん。『愛についてのデッサン』の著者です。さらにタイトルは『水瓶座の少女』ときた。これは私が今日買うべき一冊に違いない。神様が縁結びしてくれたんだと思ったので、こちらを勘定台に持って行きました。
そして店主さんに「あの、この作者さんの愛についてのデッサンってご存知ですか。すごく主人公と境遇が似ているような気がして。」と声を掛けました。そしたら「あぁ、知ってますよ、いい本ですよね」と返され、えっ知ってるんだと嬉しくなりました。他のお客さんにもこの本を買取依頼された際に主人公と似てるよねと言われたことがあるらしく、その折に読んで、自分は佐古啓介なのかもしれないと思ったそうです。
昔の本で自分にとっては偶然の出会いだったあの本は、やはり本読みの皆さんのなかではよく知られてるみたいで、面白い世界が存在するんだなぁと思いました。『水瓶座の少女』も楽しんで読めたらいいなと思います。
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