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セットプレーとチーム成績 J1第21節vs名古屋グランパス マッチレビュー

サッカーの世界は不思議なことがたくさん。
例えば今日の試合ではグランパスが中3日(しかも延長まで戦って)になのに対して、サンガは中7日で休養十分の状態で迎えることができました。なぜかは分かりませんがコンディションに大きな差があると予想できます。
なぜかは分かりませんが…

一方で「中3日の相手にシバき回される」ことが多々あるのもサンガの特徴であり、これも不思議の一つ。
そして「暑い」の領域を超える気温と湿度の京都で戦う一戦。コンディションの差が試合にどう影響するかがポイントになりそうな試合でした。

試合サマリー

前半

グランパスのキックオフで試合開始。スタート早々に違和感を感じる展開となります。

グランパスがサイドバックに展開してからのパス。1発目が流れてタッチラインを割る。続くランゲラックのゴールキックも弾道がおかしく蹴り損なっていることが明らかなミスキックでした。

ちょっとしたズレかなと思って見ていたのですが、不用意なミスは単発で終わらず30分近くまで続くことになります。
森下龍也の試合後コメントにもありましたが、体が動かずチーム全体で試合の入りに失敗していたようです。

イージーな入り方をしてしまったグランパスに、スタートから仕掛けていくサンガの方針がガッチリと噛み合います。

ハイプレスで自由を奪いミスを誘うのはいつもどおり。
攻撃ではハイプレスで刈り取ったところからのショートカウンターを土台に、山崎をターゲットにしたハイボールに周囲が絡み、一方的にサンガが押し込む展開となります。

決定機に近いチャンスを生んではいたものの、流れの中で取りきれず嫌な雰囲気に。しかしここでセットプレー。平戸の完璧なキックからリフレクションが生まれ、この日絶好調の山﨑が押し込み先制。
良い流れのうちに取り切ったことに価値があります。

得点直後にユンカーの危険なシュートやカウンターから森下の攻め上がりを受けますが、集中した守備で決壊は許さず。
特にセットプレー対応は秀逸。フリーの選手を作らないタイトなマークに、弾いたボールは佐藤響がチェイシングしフリーで打たせないところまで形が作られていました。マテウスのキックは驚異でしたが失点には繋がりません。

とはいえ30分あたりからサンガの足が止まり始めてしまいます。頭からハイペースで仕掛けていった分のデメリットとしては仕方なく、打って変わって押し込まれる展開が続きます。

サンガの守備により耐えられていた部分もあり、あと一歩・二歩の部分で足が出ないグランパスが精度を欠いたこともあり、ギリギリながら1−0で前半終了。

後半

ハーフタイムでガラッと展開が変わ…ればよかったのですが、残念ながら前半の流れそのままにグランパスのゲームが続きます。

今日に限りませんが、サンガがペースを握るときは①ハイプレスと②ロングボールの両者が機能しているときです。
ではその両者が機能しなくなるとどうなるか。言うまでもありません。押し込まれて自陣から脱出することすらできなくなってしまいます。

ハイプレスとロングボールが機能しなくなった主な要因は3点。

  1. ターゲットの選択ミス
    相手のミスを誘発した場面を含むと、山﨑が7~80%近い空中戦勝率をキープしてくれていました。しかしなぜか後半は豊川が競りに行く場面が多く、当然弾き返される場面も増えます。何か狙い(ヘディングのターゲットを絞らせない)があるのかと思っていましたが、ずっと豊川に蹴っていたのは結果としてチームのリズムを壊す一因になってしまいました

  2. 無謀な特攻プレス
    相手を追い込んで、追い込んで、追い詰めたここぞで刈りに行くのがサンガの良い時のプレッシングです。体力的に厳しい30〜60分でこそ賢く「行く」のか「行かない」のかを考えて追わないといけない場面でしたが、無理に突っ込んでフェイントで剥がされ、苦し紛れのファールで止める場面が散見。これもまたリズムを手放すひとつの要因となりました。

  3. グランパスの試合慣れ
    「入りに失敗した」のは明確でしたが、さすがに30分も経てばグランパスが立て直してきました。イージーミスは減り、隙を見せれば危険な縦パスが刺さってくるのはJ1チームとやってるんだなあとの厳しさを痛感しました。

押し込まれ耐えに耐えていましたが、62分に決壊。
右サイドをマテウスに崩され中に折り返されたボールをクリアミス。拾ったドフリーの和泉が冷静に突き刺し同点。
試合で狙われ続けた右サイドからの失点であり、早めに手当したいところでしたが、痛い失点となってしまいました。

失った流れと痛い失点。
厳しい展開が予想された60〜70分で、両チームにて試合を左右する選手交代。

グランパスはターレスに変えて酒井、続いて稲垣・内田に変えて山田・米本を投入。フレッシュな選手投入とボールを握って圧力を強めたい狙いだったようですが、見事に予想が外れてくれます。

酒井が前線で全く起点になれないことで、左サイドからの佐藤の攻撃と守備が息を吹き返します。山田と米本はボールに絡めず、支配するどころかサンガにペースを譲ることになりました。

交代が機能しないグランパスに対して、サンガは山田・パトリック・谷内田を一斉投入。山田は右サイドでポイントを作り、谷内田は平戸との連携でボール保持に成功。

谷内田はたった13分の出場でパス17本(成功14本)を記録。同じポジションで77分出場した福岡が24本(成功17本)であったことを考えると、最終盤でいかにボールを握った場面が多いかを感じることができます。

そして迎えた92分のコーナーキック。
相手は11人が自エリア内へ撤退し、エリア内にはフリーな選手はおろかスペースすらない状況。

「どうしたものか」「これは普通に蹴れば弾き返されるだけかな」「リフレクションを拾ってからが勝負かな」と眺めていましたが、キッカーの谷内田はニアに速いボールを供給。
触った麻田がフリックし流したところに詰めたパトリックがヘディングで叩き込み、貴重な貴重な劇的勝ち越し点。

思えばニアに蹴ったのは90分を通じてこれが最初で最後。体力的に厳しい最終盤で予想を裏切られたグランパス側が、対応に後手に回ったことは全く不思議ではありません。

そこまで見越していたのであれば周到も周到な準備をしていたことになります。苦しい時間も多く、勝ち点は3でも1でも0でもありうる展開でしたが、中断前にこの上ない最高の結果を手に入れることができました。


得点期待値で上回り、パス数・成功数からは内容でも互角以上の戦いができたことが伺えます。

PickUp:セットプレーで得点・失点することの意味を噛み締める

失点が減っていること

セットプレーから失点していません。
17節のアルビレックス戦から5試合続けて、失点がありません。セットプレーで点どころか勝点まで落とし続けた前半戦のサンガはどこに行ったのでしょう。

打たれているけど相手が枠外に飛ばしてくれた。神がかり的なビッグセーブで弾いてくれた。ではありません。

そもそもシュートを打たれている数が明らかに減っており、さらにその前段階で言うとフリーの選手を作っていません。
また横浜FC戦のように、弾いたあと押し上げられずフリーで展開され危険なボールを供給される課題は、クリアした瞬間に佐藤が追いかけプレッシャーをかける決まり事を作ることでしっかり解決されています。

セットプレーの度に相手がフリーになっていて、弾いた先でドフリーで相手が待ち構えている前半戦は一体なんだったのか。
との疑問は拭えませんが、改善さえしてくれたのであれば何の問題もありません。

ここ5試合で3勝1敗1分け。
好調の秘訣は名医新潟クリニックでしょうか。違います。
抱えていたセットプレー守備の大きな問題が解決されたからです

セットプレーから奪った2点

グランパスの長谷川監督が認めたほどの精度のキックから、サンガの2得点が生まれました。ポストスレスレの枠内に抑えた平戸と、ニアにピンポイントで合わせた谷内田のキックは見事と言う他ありません。あの精度のボールを供給し続ければ遅かれ早かれ点が生まれるものです。

そして何より。
上位チームが固めるゴール前を割るのは困難であり、この試合でも「抑えるところは徹底して抑える」長谷川サッカーに苦しめられました。

いくら支配しても点が取れなければ勝ち点も取れないのがサッカーです。ゴール前まで運んでも流れの中から取りきれない、もどかしい時間帯での2得点。
久しく勝てていない名古屋から3ポイントを奪った価値は計り知れません。

ここ5試合で3勝1敗1分け。
好調の秘訣は名医新潟クリニックでしょうか。違います。
セットプレーで点が取れているからです

個人評価

スターティングメンバー

GK 26 太田 岳志 6.5
難しい時間帯で飛んできたユンカーの枠内シュート×2に素早く反応し弾き出す。試合を分ける局面にてファインセーブでチームを救いました。失点場面は流石にノーチャンスです。

DF 3 麻田 将吾 7.0
安定した守備でチームを支え、決勝アシストまで付いてきました。横浜FC戦に続き攻守両面で大きな結果を残すことに。ハイパフォーマンスを続けていることで目に見えた結果に繋がっているのは自信にもなるでしょう。ただひとつ大きな心配があります。オフシーズンの他チームからのオファー…

DF 4 井上 黎生人 6.5
相手のラストパスに的確に対処し、危険なシーンのシュートブロックで何度もピンチを未然に防ぎました。結果的に和泉へのアシストになったクリアは処理の難しいボールでしたが…

DF 20 福田 心之助 5.0
森下相手に積極性を見せてくれましたし、今後への期待感や起用し続けてほしい希望を持ちましたが、補強は必要だなとも思ってしまいました。本人が語るとおりまず「J1の試合で90分走れる体力」が必要です。

MF 10 福岡 慎平77' 5.5
走り回ってバランス取りに腐心してくれているのはいつも通りですが、エリア内ドフリーで前を向いて撃ったシュートがゴールに届かないのは厳しいところです。求められる役割(守備・運動量)と結果(ゴール・アシスト)を両立する平戸と比べて物足りなさを感じてしまいました。

MF 19 金子 大毅 7.5
冷静なボール捌きと対人対応に、機を見た攻め上がりと前での潰し。中心となるアンカーで大きな存在感を出しチームを支え、先制点に繋がるボールも供給するなど大活躍。チームトップのパス成功・こぼれ球奪取・タックル成功数が活躍度を物語ります。早い時間に警告を受けてもフル出場だったのは、監督からも高い評価を受けていることの表れではないでしょうか。
(たまにビックリするようなパスミスがあるのはご愛嬌でしょうか)

こぼれ球奪取"7"って。なかなか出ない数字です

MF 39 平戸 太貴90+4' 7.0
ランゲラックが弾ききれないスペシャルなコースにFKを打ち込み、貴重な先制点の起点になりました。走行距離11.2kmはチームトップでゲームメイクや守備での貢献も非常に大きい。欠かせない選手です。

MF 44 佐藤 響 6.5
対面したターレス・和泉に出足鋭く激しく当たり、チャンスを作らせないどころか度々カウンターの起点になりました。潰しに行き過ぎてたまに裏返されるのはメリットデメリットある話なので仕方ないかなと。課題だった奪った後のパス精度も大きく向上しています。

FW 11 山﨑 凌吾77' 8.0  ★MAN OF THE MATCH
浮いたボールの空中戦でことごとく勝利し、足元に入れば収めて味方に好パスを供給し、守備でも高い貢献度を見せ続け、3ポイント獲得に大きく貢献しました。抜け目なくこぼれ球にも詰めてゴールまで記録。古巣相手に圧巻も圧巻の素晴らしいパフォーマンスでした。92分のパト劇的弾に目を奪われがちですが、ゲームを作りチームを支えた山崎がMOMで決まりでしょう。
「センターフォワードの1stチョイスは俺だぞ」って気迫が伝わってきます。

単独トップのラストパス"3"



FW 17 木下 康介 5.5
守備で奔走していますが、やはり攻撃面で本領を発揮できず。前半のエリア内シュートは枠に飛ばしてほしいところです。

FW 23 豊川 雄太77' 6.0
いつものように山﨑との連携とアグレッシブな追い込みで前線を活性化。アグレッシブさの裏返しで、飛び込み過ぎてかわされるのとファールの多さが目立つ点は改善してほしいところです。

控えメンバー

DF 5 アピアタウィア 久 90+4'
なし

MF 25 谷内田 哲平77' 6.5
CKから決勝ゴールにつながる素晴らしいボールを供給。短い時間でしたがボールに関与する機会は多く、終盤の巻き返しに大きな役割を果たしました。

MF 27 山田 楓喜77' 90+6' 6.0
右の高い位置で起点を作ってくれました。インアウトは試合展開によるものであり、気にする必要はないでしょう。とは分かっていても悔しいと思いますが。

MF 8 荒木 大吾90+6'
なし

FW 9 パトリック77' 7.0
またまたまた1シュートで1得点。とんでもない決定力です。シュート精度はもちろんですが、ボールを呼び込むための準備の良さが目を惹きます。

監督

曺 貴裁 7.0
膠着すれば個で打開されると予測しスタートダッシュを仕掛け、ギリギリまで我慢した交代も大当たりし、難敵相手から3ポイントを奪いました(試合中「まだ交代なしかよ」と毒付いていたので掌を返しておきます)。
自分たちの得意とする攻守の形が整いつつあり、セットプレーも整備され、いよいよチームが形になってきました。あとは30〜60分あたりの押し込まれて苦しい時間帯で、どうやって苦しい時間を減らし押し戻すかが課題でしょうか。

支配率で並んでも、スプリント数で大勝ちできなくても、勝点3が取れました

さいごに

中断期間前に勝つとどうなるか?
そう、1ヶ月まるっと気分がいい!です。
(負けるとずっとしんどい)

最高の雰囲気でファン感謝デーも迎えられ、J1でこんな良い気持ちで過ごせるのはいつ以来やら(そもそも過去にあったかな)と感慨に浸っていました。

中断期間でマッチレビューもお休みになるので、経営情報や前半戦振り返り系のnoteを書きます。引き続きよろしくお願いします。

以上です。
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