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積んだ成功を崩す・・・ J1第7節vsアビスパ福岡 マッチレビュー

昨シーズンダブルを食らったアビスパ福岡。
結果としてのダブルはまだしも、1から10までまんまと長谷部監督にしてやられた辛い記憶を刻まれた相手です。

自分たちのサッカーどころから、まともにサッカーする機会を与えてもらえませんでした。さすがに三度目の繰り返しは避けたいところです。
インタビューを見ると曺監督も自覚しているようで、勝ち点3と同じくらいどう対策するかが興味深い試合となりました。

中身を見ていきましょう。

試合サマリー

前半

予想どおりラフにルキアンへ当てくる福岡。
開幕戦で鹿島が取ってきたように、後ろからは蹴っ飛ばしてハイプレスの機会を奪い、前線から激しく追いかけ回して組み立てさせない。サンガを殺すために1番有効な手を取ってきました。
流石の長谷将。バチバチに対策されています。

対する京都は少し意外な形。ロングボールは使うものの後ろから繋いで組み立ても交えていきます。
去年の苦すぎる経験から、先に失点は避けたいと考えていたはずのサンガとしては予想しなかった展開でした。

何度かビルドアップで剥がせていたものの、剥がせたどまり。帰陣とゴール前にセットされた守備を相手にチャンスまでは持って行けず。DFラインで剥がして作った数的有利を、どう前線にリンクさせるかが今後の課題になりそうです。

横浜FC戦で「低い位置のビルドアップで剥がされるけど、次で押さえればいいだけだから怖くないなあ」と感じていましたが、きっと福岡も似た感想を持っていたのでしょう。

流れの中では5分5分なものの、セットプレーから生まれるチャンスで明確な違いが生まれていました。よく失点せず前半を折り返せたくらいの差を感じます。

後半

開始10分で試合を動かします。セットプレーの流れから佐藤のクロス、こぼれ球にきちんと詰めたパトリックが流し込んで先制に成功。
1点が重要なのはもちろん、先制点を奪われてその後なす術がない展開を避けることができました。

先制後もハイプレスの手を緩めず。積極的に圧力をかけて相手DFラインのビルドアップミスを誘発したり、狙い通りの流れになっていました。
(福岡慎平が「前で刈りに行き過ぎた」と試合後コメントを残していますが、リスク管理を捨てた無謀なプレスとは感じませんでした)

守備時はある程度ハマるものの、攻撃時にはパトリックが競り勝ってもセカンド拾えず。後ろの押上げが足りず連動を欠いた前節と似たような展開。
相手のボール保持が多くなり、結果として自陣ゴール前に押し込まれる時間が増えてしまいます。

そんな中残り15分を切ったところでルキアンに楔が入り、浮かせてはたいたボールが麻田の手に当たってPK判定。
ゴール前に押し込まれれば当然アクシデントも増えるものです。麻田に非はなく、チームとしての失点でした。

嫌な流れで迎えた82分。コーナーからウェリントンを完全にフリーにしてしまい、ヘディングで叩き込まれ失点。常に危険なシーンを作らせていたセットプレーが最後に実を結んでしまいました。今節に限らず先に触られすぎです。

その後は転がり続ける福岡の選手を眺める時間に。良い崩しから得た最後の決定機も決められず、痛い逆転負け。せめて1ポイント…との後悔が強い試合でした。

基本スタッツは全体的に劣勢で、ゴール期待値は終始福岡に上回られました。
スプリントで大勝ちかつ支配率45%以下。この条件を満たせないと勝てないのは昨年と同じ。

今節のポイント:成功を崩して身軽に


今節感じた違和感。それはここ最近の試合と闘い方が違ったことです。

・パトリックに当てて押し込んで猛烈ハイプレス
・特に相手の左サイドに集中砲火
・後ろは無理に持たず早めにロングパス
が3〜6節で見せたサンガのパターンでした。

勝ち点だけを狙うなら今まで通りの戦い方だってあったでしょう。小田逸稀の足元を考えれば左へのアタックもハマったはず。

にもかかわらず、今節は戦い方を変えました。ロングも蹴りますが明らかに後ろから繋ぐ回数が増えていました。その戦い方は福岡の狙いどおりだったと見えました。

時間帯によっては左に偏ったことも

なぜそんな策を取ったのでしょうか?
私には、意図的に成功を崩しているように見えました。
頼れる武器は見つかったけれど、これだけでは先が見えないと。

DFは無理せず蹴る、パトリックへ当てて押しこむ、ボールを持った相手のサイドバックに鬼プレス。
これ自体は武器ですが、現状この武器を回避されると撃つ手がなくなるのは大きな弱点です。
前節神戸戦で露呈してしまったように。

鈴木優磨、知念、大迫、ルキアン…
フィジカルがあってポストワークが得意かつ、裏抜けまで駆使できるFWを抱えているチームを、サンガは苦手としています。

井上・麻田はフィジカルが弱点とはいえませんが、CBとしてはストロングでもありません。ズルズルと押し下げられることで前と後ろの距離が延び、前線が孤立する要因を作ってしまっています。

シーズン残り3試合
勝たなければ残留できない
でも、相手に対策され尽くして打つ手がない

そんな状況を回避するための先んじた準備。
と信じています。違ったらプンスコです。

そもそもレギュレーションの都合で降格は1チームだけ。
リーグは序盤。加えて下にもまだいっぱいチームがいて、特に横浜FCは清々しく最下位を独走中。
相手は序盤やけに好調で残留争い相手にならなさそうな福岡。

これらの事情から、チャレンジするなら今節が絶好期だったのは間違いありません。

監督が「何か新しいことにチャレンジしたい」と思っていそうなことは、開幕鹿島戦の布陣や戦い方を見て感じていました。
(その時は散々も散々な目に遭いましたが…)

降格が3枠になる来季にチャレンジする余裕はありません。今季のうちにまずは手にした武器で勝ち点を稼ぎ、トライアンドエラーでチームの発展を図る。方向性としては正しいのではと。

何か計画的な狙いがあると信じて見守ります。

こういう狙いがあるんですよね?ね?

個人評価

先発

GK 26 太田 岳志 6.0
失点2つはノーチャンス。目立ったセーブはなかったものの、ハイボール対応・シュート対応・ビルドアップとすべての面で安定していました。キツいプレッシャーを受けてもパス精度が落ちないのは良いですね。素直に考えると次節も先発でしょう。

DF 3 麻田 将吾 6
DFとしての役割は果たして良い対応ができています。なので自責点でもないPK献上で気を落とさないでほしい。外国人FWをフィジカルで押さえられるようになるととても有り難いのですが…

DF 4 井上 黎生人 6
厳しいチェックでルキアンを封じ、長短のパスで起点になりました。DF要因での失点が少ないのに勝てないもどかしさはあると思います。引き続き頼りにしています。

DF 14 白井 康介 6.5
相変わらずの体のキレ。対面した金森を早々に交代に追いやりました。攻撃が停滞していればビルドアップと守備で活躍。鶴野の決定機でもいいカバーを見せました。

MF 7 川﨑 颯太 6
捌けて戦えていた一方で、相手のフィジカル攻勢を止めきれず。アンカーに配置されるとどうしても体格の差を感じてしまいます。押し込まれる味方を救う何かを身に付けられると良いのですが。

MF 10 福岡 慎平79' 6
フリーキック精度の向上が目覚ましい。白井と絡んで右を攻略しましたが、足が止まってからは右で押し込まれました。そりゃあれだけ走っていれば疲れるのはやむなしです。

MF 18 松田 天馬85' 5.5
いつもどおり動いてもらって動いてもらって…を繰り返してリズムを作っていました。左の攻撃が増えたのは天馬のおかげかもしれません。

MF 27 山田 楓喜46*' 5
ヨーロッパ遠征からコンディションが下落傾向。欠かせないピースなので早く本調子に戻ってくれることを祈っています。

MF 44 佐藤 響 6.5 ★Mon Of The Match
ボールがないときの対応は引き続き良し。絶好調の紺野相手によく我慢して対応し、今日は素晴らしいアシストも付いてきました。突然の不用意なロストとステイ時の守備で課題は残りますが、大きく改善しています。

FW 9 パトリック 6
こぼれ球にしっかり反応して今季3点目。しかしなぜ空中戦が得意な小田のサイドへ流れていってしまったのかは分かりません。相手のストロングで戦う必要はなかったでしょう。

FW 17 木下 康介53' 5.5
孤立している中ドリブルで奮闘してくれていますが、あわや退場のシーンが2つ。相手の対策が目に見えて厳しくなっています。どう越えていくか。

控えメンバー・監督

FW 22 一美 和成46' 6
キープできて時間を作れる選手が少ないサンガでは、違いを作れる貴重な存在。持ちすぎに見えてしまうのは前が孤立してしまうチーム事情もあるので難しいところです。

FW 23 豊川 雄太53' 5.5
精力的に動いてくれて守備と起点づくりに貢献してくれました。見た目以上に難しいシュートですが、決定機は決めてほしかったなあああ。次に期待です。

DF 5 アピアタウィア 久79'-85' 採点なし
失点シーンはもちろん、失点したコーナーキック直前の対応でも集中できていないことが明らかでした。

MF 25 谷内田 哲平85' 採点なし
短い時間でしたが決定機の起点に。白井とのフィーリングも良さそうで、頭から見てみたいと思わせるパフォーマンスをずっと続けています。

MF 33 三沢 直人85' 採点なし
コンディションは良さそうですが、いかに。

曺 貴裁 5.0
チャレンジらしきサッカーがハマり切っていないのは先を見据えた話。采配が当たる当たらないは個別の話。なので置いておきます。

何よりの問題はセットプレーの守備が改善されていないこと。最終的に失点したのは残り5分でしたが、前半から何度も何度も危険なシーンを作られました。
毎試合エリア内でドフリーを作れば、運良く直接叩き込まれずともその後何かしら決定機は生まれるものです。開幕戦から何も進歩がなく勝ち点を落とし続ける要因となっているセットプレー守備の放ったらかしを重く見ています。
未来を見据えるのも大事ですが、先に手を付けるべき問題があるのでは。セットプレーの守備をおざなりにしてよいチームなどこの世に存在しないはずでは。と感じてしまいました。

以上です。
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絶賛嫌な流れになってしまったところで、次は今季初勝利で気勢を上げるガンバ。嫌な巡り会わせは続くもので。雨予報の重馬場サンガスタジアムで後ろから繋いでくれるチームなことを考えると、相性自体は良いはずです。
勝ちが欲しいですね

最後までご覧いただきありがとうございました!

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