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負けたのは個人かそれともチームか J1第6節vsヴィッセル神戸 マッチレビュー

上位対決での京神ダービー。
去年残留を争って泥にまみれていた2チームが、まさかの形で対戦することとなりました。

両者とも好調な一方で、好調にたどり着いた過程は別物です。
京都は新戦力の加入とフィットで。神戸はメンバーに変化少なく組織力の洗練で。手応えを伴った好調です。
「なぜか分からんけど好調でええわあ」と違い、苦しんだ時期を超えたことに深みと価値があります。

神戸はスタッツでも圧倒的。
「我々は攻守に歯車が噛み合っています」
そんなメッセージが伝わってきそうです。4連勝の前に立ち塞がる高い壁ですね。

中身を見ていきましょう。

試合サマリー

前半

京都は立ち上がりからいつもどおり。パトリックめがけたハイボールで押し込んで、ハイプレスによる高い位置での刈り取りを狙います。
対する神戸も同じスタイル。後ろの組み立てが窮屈と感じたら早めに大迫へ。

両者ともに無理せずロングボールの選択肢を持ちます。しかしつなげる場面はきちんと繋いで攻撃を組み立てていたのが印象的でした。スピード・強度が高い一方で完全な蹴り合いにならず、見ていて面白いゲーム展開。

京都の狙いとターゲットは明確。守備が不得手かつ逆足サイドでビルドアップが難しい初瀬亮の左サイドに集中砲火をかけていきます。

一進一退気味ではありましたが、サンガとしてはしんどい展開になってしまいました。パトリックがいつもどおり競り勝てず、穴と目した初瀬には安定した守備を披露されてしまい敵陣に押し込むことができません。
欧州帰りの山田のガス欠が早く、木下が酒井高徳に全敗してしまったのも辛いところです。

神戸としては「狙いどおり」「余裕がある」といった前半だったのでしょう。大迫をはじめとした前線の3人が、集中を切らさず守備と起点作りに奔走していた点からも狙いが感じられました。「前半はこれでOK」と。

そして終了間際に京都にアクシデント。武田将平の膝が再発してしまい金子と交代となります。これもキツい想定外でした。

後半

開始早々試合が動きます。不用意なロストから与えたセットプレー、こぼれ球を汰木に突き刺されてしまいます。不運なように見えますが、昨年から毎試合セットプレーのこぼれ球が決定機になっているので、運ではないのでしょう。札幌戦然り。

数字の「1」以上に重たい失点になってしまいました。神戸は横幅を広くとってサイドの高い位置での起点作りにシフトチェンジ。サンガはハイプレスのかけどころを完全に失ってしまいました。

失点の気落ちが回復して「さあこれからだ」のタイミングで、左サイドの不用意なロストからまた汰木に決められ2失点目。得点以外はずっと白井に抑えられていた汰木ですが、我慢強くチャンスが来るまで待てるのはチームの調子がいい証でしょう。結局最後まで右サイド(酒井)の壁を崩せなかった京都とは対称的でした。

その後は単発ながらチャンスを作る京都ですが、エリア内ドフリーのヘディングがサポーターゾーンに突き刺さったり、山川の好セーブにあったりで得点に至らず。逆にバックパスミスを掻っ攫われ大迫で3点目。ここで試合はお終いとなってしまいました。

前節の横浜FCが「不安定」「自分達のサッカー(繋ぐことが大事)」であったため、ヴィッセルの「安定」「結果からの逆算」が際立って感じられました。崩れないチームとの対戦がいかに難しいかも含めて。

ポイント分析:前線の孤立原因

「個の力で負けた」との意見が多かったですが、レオメッシに3人抜かれて失点した…ではないですよね。個別での負け=チームの負けではなく、なぜ個人能力の差がチームとしての負けに繋がったのでしょうか。

感じていた方が多いようですが、ゲームを通じて前の3枚が孤立してしまいました。
前線と後ろが分断されると個人勝負に晒されてしまいます。
孤立の大きな原因となった3点をまとめました。

①縦の間伸び

前述した
・パトリックの空中戦が思った以上に止められたこと
・初瀬で引っ掛けられなかったこと
・山田のガス欠が早かったこと
で、相手の深いところに入り込めませんでした。

加えて、アバウトなボールでも収められるだけでなく、裏抜けとフリックでラインの背後に脅威を与えられる大迫がやっかいでした。

井上・麻田がよく抑えてくれていましたが、数的不利でも時間を作れる大迫にもう一枚が加わる神戸の攻撃で後ろの押し上げが遅れました。
武田が挟み込んで奪ったシーンは素晴らしいものでしたが、逆を返すと武田が自陣ゴール前まで引っ張られているとも取れます。

②横の偏り

また、右へリソースを集中した分左が分かりやすくガラガラになりました。守備は佐藤が広大なスペースを1人で埋めてくれたものの、攻撃時の木下のドリブルはゴールからも中央からも遠く、サポートもなくなります。

特に木下が孤立してしまいました。これはチームとしての狙いなので仕方ありません。「左は耐える・右で勝つ」を掲げて右で勝負をつけられなかったのは、誤算だったのでしょう。

③ゲームメイカーの交代

ただでさえ重要な武田がこの試合で交代してしまうのは痛恨でした。長短のボールを適切に選択して前と後ろをリンクできるのは、武田将平だけです。福岡・川崎・金子にその力はありません。
(というか、リーグ全体を見てもそんなにいません。マックス?パワー?)

途中で入ってきた天馬が怒っていたように、連動を失ったチームは出しどころを失い後ろに後ろに下げられることとなります。セットした神戸を縦にも横にも揺さぶれず、高く長いボールに頼るだけとなってしまいました。

結論まとめると「個人の能力で負けたから負けた」に一文加えて「個人の能力で負けてチームとしての狙いが出せず、結果としてチーム全体で負けた」と見るべき。と考えました。

…書いてて思いましたが、なんだか高度な話ですね。
ついこの間まで

闘莉王の頭!ツインタワー!ファイヤー!
J2残留!!やったー!!!

を繰り広げていたことを考えると、信じられない成長な気がします。
課題はたくさんですが乗り越えてくれそうな手応えもあるので、見守っていきましょう。

個人評価

スターティングメンバー

GK 1 若原 智哉 6.0
3失点はしたもののノーチャンス気味。良いセーブもあり、素晴らしいミドルパスも見れました。課題だった足下が試合を追うごとに改善されています。

DF 3 麻田 将吾 5.5
井上と共に大迫へ対応し続けました。失点後に目に見えてガックリしているのは大変良くない。非はないものの、3点目のようなシーンで武藤を抑えられるようになってほしいなあ。と期待しています。

DF 4 井上 黎生人 6.0 ★Mon Of The Match
「大迫を止める」は目標ではなく最低ラインとして設定していたのですね。奪った後の繋ぎやビルドアップまでやってやるぞとの並々ならぬ気迫を感じました。凄まじい勢いでパフォーマンスを向上させていますが、その中でも最高の出来でした。頑張りが報われてほしかったです。

DF 14 白井 康介 6.0
ようやく欠点が見つかりました。逆サイドからのクロス対応苦手なのですね。失点時以外にも汰木を離してしまうシーンが見受けられました。地上戦では攻守ともに⚪︎

MF 7 川﨑 颯太 6.0
プレーが「ドイツとベルギーを相手にするならさー、これぐらいはさー」と言っていました。地獄のミサワ風に。対人が良いのはいつもどおりですが、横に出せるのにリスクを覚悟で縦につけたりして成長を感じます。チームの流れを変えられる存在になりたいですね。

MF 10 福岡 慎平 74'  5.0
良く言えば規則正しく、悪く言えば単調。チームが良いときは潤滑油になれるものの、悪い流れになると途端に存在感がなくなります。
佐藤が引っ掛けたとき、完全にロストして後ろを取られるまでリカバリーのスタート切っていなかったのは何故でしょうか。失点の大きな要因のひとつと自覚してほしい。
背番号10に値するプレーではありませんでした。

MF 16 武田 将平 39'   6.0
いなくなってわかる重要性。どなたか膝の名医を紹介してください…

MF 27 山田 楓喜 69'   5.5
初瀬に上手く対応されてしまいプレスも仕掛けも奏功せず。気合は入ってましたが。ガス欠もいつもより早め。コンディションを整えて次節に臨みましょう。

MF 44 佐藤 響 69'  5.0
広大な左のスペースを運動量と出足の速さで1人で埋めていました。前半は素晴らしいパフォーマンス。後半のロストが試合を決めてしまいましたが、毎試合前後半それぞれ2回づつ大きなミスをしていればいつかは失点するものです。根本的なところを解決しないとまた同じ光景が繰り返されるのが目に見えています。どうしたものでしょう。

FW 9 パトリック 5.5
珍しく空中戦での負けが目立ちました。それでも勝率は高いのですが、今のサッカーではパトリックが起点になれるかどうかにかかっています。

FW 17 木下 康介 74'   5.0
チーム戦術の都合で孤立した中で酒井高徳と対面。ことごとくロストしてしまい起点にもなれませんでした。ゴール前のこぼれ球にも反応し損ねて散々な1日に。

控え・監督

DF 6 三竿 雄斗 69'   5.0
厳しいプレーでした。とても

MF 18 松田 天馬 74'   5.5
懸命に走り回るものの、何にも結びつかず。ビハインド時に中盤に入れても…と感じてしまいました。本人だけのせいではなく。 

MF 19 金子 大毅 39'   5.5
逃げ切り局面で見せていた安定感が、追いかける立場ではテンポダウンになってしまいまいました。プレースタイルの問題でありこれも本人だけのせいではないのですが。

FW 11 山﨑 凌吾 69'   4.5
ゴール前10mでドフリーのヘディングをスタンドに突き刺す。その後は起点にすらなれず。流石に閉口してしまうパフォーマンスでした。

FW 15 木村 勇大 74'   6
苦しすぎる展開でも諦めずに相手ゴールに向かい続けました。左WGに適性があるのかは、私には分かりません。

曺 貴裁 5.5
相手への対策を中心に、首位を食ってやろうとのモチベーションは感じました。交代カードも使い切りましたが力及ばず。追いかけることも想定してサブを考えてもよいのでは。

以上です。
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3連勝の後に手痛すぎる敗戦。ルヴァンも挟んで苦手福岡戦に向け、どう課題に向き合ってくれるのでしょうか。怖いような楽しみなような。

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