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2022サンガに足りなかったもの(シーズン振り返りnote①)

はじめに

12月もあとわずかとなりました。
最高順位5位から自動降格圏まで推移した順位、5センチのズレで世界が変わった参入決定戦、日本代表の躍進とメッシの戴冠が印象深いW杯。サンガサポとしては1年を通じて目玉イベントたくさんでお腹いっぱいです。

至上命題であった「J1昇格翌年の残留」も果たすことができました。
「良い一年だった」で終わらせるには簡単ですが、そこまで能天気に2023シーズンを迎えていいのでしょうか。
いいはずがありません。

シーズン中盤以降ずっと苦しい戦いになりました。
コンサに救われ自動降格を回避し、ロアッソを上回れたのはレギュレーションによるもの。
結果に至るまでのプロセスに問題があり、来年に向けた課題があることは明確です。

編成を分析し考察noteを書いていると、サンガの来年が見えてきました。しかし来年を見る前にまずは今年の振り返りです。
過去の自分と向き合う。チームの問題・課題を考える。チームとして発展するための選手補強には現状把握が不可欠。
データと分析をもとに2022年を振り返ります。

サンガに足りていたもの:走力

J1リーグにおけるスプリント数

2022シーズン、サンガの最大の武器は「走力」でした。
走力は曺監督の代名詞。試合を見ていてもよく走っている感覚はありました。その感覚はデータで見ても裏付けられています。

サンガの1試合平均スプリント数は190回。リーグでは圧倒的に走る鳥栖に次ぐ2位と、良い数字が出ています。
一方でリーグ平均177回を下回るチーム(水色線より右)を見てみましょう。川崎を例外としてことごとく残留争いに巻き込まれています。

同じ「走力」ではありますが「走行距離」はあまり順位との関係が見られません。走行距離の一例として、清水は5位、サンガは10位、ジュビロは11位、神戸は12位です。アビスパは最下位ですが…。
スプリントほどの関係は見出せません。

スプリント勝利とサンガの勝利の関係

次に、サンガがスプリント勝ちした試合の成績を見ていきましょう。リーグ戦34試合をスプリント勝利数に並べて3分割。それぞれのセグメントの勝率を見えるようにしました。

3ポイントを取れたほとんどの試合が、スプリント数で大きく相手を上回っています。スプリントで負けているのはもちろん、均衡していてもいけません。スプリントで圧勝して初めて3ポイントが見えてきます。

走力勝負の鳥栖にスプリントでも結果でも上回れた点は評価できるでしょう。一方でFC東京には抑え込まれ続け、走力を弱みとする福岡にしてやられている事実もあります。
サボって走り負けているのではなく、対策してくるチームには「走らせてすらもらえない」と考えるのが素直ではないでしょうか。

走力勝負の手応えと課題

スプリントが順位に強い影響を与えること。
重要なスプリントで大きく優位性を作れていたこと。
スプリントを武器に残留を勝ち取れたこと。
をここまで見ていきました。

しかし一方で疑問が出ます。
なぜ重要なスプリント数で優位を作れているのに、結果として最終順位「16位」なのでしょうか。

「走れてはいるが走れているだけ」と揶揄されることがあります。そしてサポーターの我々も感じているところです。
同じサッカーを続ければ来年もジリ貧で、降格枠が3に戻ればいよいよJ2逆戻りが見えてきてしまう。そんな危機感もあります。

危険な状況を回避するために。そしてサンガがこれから曺監督とともに飛躍していくために。一体何が必要でしょうか。サンガの問題を深掘りしていきます。

サンガに足りないもの:攻撃に関するほぼ全て

攻撃面に問題を抱えていることは見ていて明らかでした。とはいえ「攻撃が良くない」だけでは何の改善にも繋がりません。
データを見ながら解像度を上げていきます。

①自分たちでゲームを作れない

スプリント数分析と同じように、支配率の順で試合結果を並べて3分割しました。
見てのとおり、支配率が下がれば下がるほど勝率は高くなります。中途半端に拮抗した支配率の試合では大きく負け越しているのも印象的です。

相手にボールを渡してカウンターで勝つ。咬み合わせがよく支配できれば1ポイントは拾える。そんな構造が見えてきます。

数字の色は、良い順に赤⇒オレンジ⇒グレー⇒青色、です。

陣地を問わないポゼッション数値と、ロングカウンターの数字が悪いことからも、ゲームを主導する力のなさを感じます。
自分達で深いところから相手のゴールまでを組み立てていく力がないのです。
バズった柏戦のゴールを何度も見ているせいか、このデータにはびっくりでした。問題はフィニッシュの部分かなと思っていたのですが。

②まともな武器が一つしかない

中央攻撃とショートカウンターにて「やや良い」の数字が出ています。
しかし逆を返すと、その2点以外に良い所がありません

敵陣どころか自陣でも支配できないポゼッション
貧弱なサイドアタック(特に右サイド)
決まらないセットプレー

ハイプレスを仕掛けて奪って、ショートカウンター×中央突破の掛け合わせで仕留める。これがサンガの最強の武器であり、唯一の武器です。
白井やオギの爆走で「多少はサイドでも戦えているのでは」との感覚がありました。ただの感覚だけでした。

白井とオギへの不満を述べているわけではありません。
他チームのサポーターから賞賛されていた白井、浦和への復帰を勝ち取ったオギ。この二人を抱えてもなお数字が悪い。これはつまり、チームとしてのサイドアタック力のなさを物語っています。個人の力ではカバーしきれないほどに。

③時間とともに失われる唯一の武器

チームスタイルの数字を見ていると気になる部分があります。
「ハイプレス」の数字が異様に悪いのです。武器であるショートカウンターの根幹ではないのか。流石にこれは何かの間違いではないかと思いましたが、これにも理由がありました。
詳しく内訳を見ていきましょう。

「ハイプレス」と言っても、むやみやたらに仕掛ければポイントが上がるものではありません。ハイプレスを仕掛けた率と成功した率で評価がされます。

ここも問題となるポイントは明らか。
ハーフタイムを境にそもそもハイプレスを仕掛けられなくなること、前半ラスト15分と後半61分以降、特に76~90分のハイプレス精度が極端に落ち込むことです。
(なお、Jリーグ公式データを利用するサッカーデータサイト「Football LAB」の情報を利用しています)

ハイプレスが体力の消耗を伴う技である以上、打てる数には限りがあります。最後まで異常な運動量を続けられる武田将平が11人いなければ、ハイプレス精度が落ちるのも当たり前の話。
唯一の武器は回数限定の必殺技なのです。

まとめと来期の課題

自分たちで試合を作れないが故に、相手のミスに依存するしかありません。
走力、特にトランシジョンでのスプリントで上回りショートカウンターで中央から仕留める。以外に武器がありません。
その唯一の武器は時間の経過とともに失われ、後半60分でカラータイマーが消灯します。

サンガスタの神戸戦やアウェイ鳥栖戦のように、早々に点を奪って空回り覚悟のハイプレスで追いまわし、最後は自陣を固めてクロージング。
これが唯一の勝ちパターンです。
(ホーム札幌戦のように相手が退場すれば話は変わるのでしょう)

「走力が最大の武器」ではなく「走力が唯一の武器」と表現した方が正確かもしれない。そう思わされるデータでした。
感覚レベルでも感じていたことですが、ここまで明確にデータで裏付けられるとしんどいものがあります。

特に弱いところばかりをピックアップしてしまいました。
気が滅入る内容で恐縮ですが、これが今の京都サンガF.C.の偽りなき立ち位置です。
自分と自分の問題と向き合う方が第一歩であり、このステップを外すことはできません。

とはいえ、攻撃面で悪い数字が出ていることは仕方ないのでしょうか。
走りに重心を置くチームならば仕方ない、なんてのもあるかもしれません。

仮説が出たときにやることは一つ。他チームとの比較です。比べることで初めて自分たちの位置が見えてきます。

次回、2022サンガに足りなかったもの(シーズン振り返りnote②)。走力を武器にJ1を席巻するサガン鳥栖との比較を通じて、サンガが目指すところを考えます。
「走力」と「ショートカウンター」以外の武器を探しにいきましょう。

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