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雲南日本商工会通信2019年6月号「会長の挨拶」

 日本では「カスハラ」が社会問題になっているというニュースがNHKで特集されていた。カスハラとはカスタマーハラスメント、いわゆる客の立場を笠にかけて店員や担当者に執拗にクレームや言葉の暴力を振るう行為である。
 ある路線バスの運転手は運転中にその運転が粗いとかプロじゃないとか延々と文句を言われ、挙句の果てにその客は、そのあと事務所まで来て謝罪をさせたという。運転手にしてみれば安全を考えて運転中揉めるわけにもいかず、ひたすら謝るしかない。
 あるタクシーは若者二人を乗せたが、その若者は行く先が決まっておらず、決まっていないのに関わらず車から降りないことを注意した運転手は、ネームカードを写真に撮られネットに公表され、この会社のタクシーには乗らないほうがいいとまで挙げられ、結局は職を失った。
 あるコンビニの定員は商品の袋詰めの要領がよくないことからクレームをつけられ、その場で謝罪のために土下座までさせられたという。
 ある介護の現場ではホームに入っているお年寄りの家族が、仕事が忙しいから着替えを家まで取りに来いとか、外食に連れ出す際に帰りはレストランまで迎えに来て自分を家まで送り届けた後に親を連れて帰れなどの無理難題を押し付け、規則上できないと言っても金を払っている客に対して何だと馬鹿呼ばわりまでされる始末。
 元々介護の現場は人手不足が続いているなか、仕事に対する誇りややりがいすら持てなくなるような顧客の対応にさらにこの職に就きたくないと思う人が増えているという。
 “お客様は神様”、“おもてなしの心”など、日本人の心にこの精神と文化があるために、日本は世界から称賛されるほどの質の良いサービスを提供できる国である。しかしながら提供される側がそのことに慣れきってしまうことにより、そこに乗じたハラスメント文化を同時に育んでしまってきたのではなかろうか。
 来年多くの海外からの観光客を受け入れるオリンピックではやはり日本の様々なおもてなしが観光客から称賛されることだろう。この病んだ社会問題は表にさらされることは無いだろうから。
 たまに日本に帰ってコンビニに買い物に行くと、その店員の過剰とも思える対応にかえって戸惑いを感じ、逆にこちらも何か粗相をしてはいけないと気を遣うことすらある。
 中国の生活ではお釣りを投げられても、並ばない客を優先してしまう店員がいても、気を荒立てることもなくなり、却って気を遣うことのない気楽さを感じている自分は、こちらに慣らされてしまっているのだろうか。 
まあ、どちらが良いとは言い難いが……。

 ところで、4月に重慶の総領事に新しく就任された渡邊信之新総領事が5月21日に昆明を訪問されました。時間の都合上、残念ながら公式に日本商工会との席を持つことは叶いませんでしたが、21日晩の雲南省人民対外友好協会との会食に小職もご招待を受け、参加させていただきました。中国駐在の経歴も長く、中国語堪能な総領事と友好協会の周紅会長をはじめとする食事会では、雲南省の文化や中日青少年交流の在り方や将来について語り合いながら、終始和やかに会食されました。
 食事後は総領事をアスカさんのお店である「誰在居酒屋」にお誘いし、快諾いただきました。特に商工会メンバーに声を掛けたわけでは無かったのですが、偶然にもその晩多くの日本人が誰在居酒屋に集っており、雲南省に住む様々な日本の方々をご紹介することができました。
 渡邊総領事は非常に温厚かつフレンドリーな方で、偶然にもたくさんの日本人に会えたことを大変喜んでおられ、我々雲南での様々な人の流れをお話しさせていただくと、一つ一つ大変興味を持って聞き入っておられました。また、90年代に秋篠宮様に同行されて雲南省を訪問された時のお話をされ、我々も非常に貴重で楽しいお話を聞くことができました。弊会最強女子たちは、しまいには総領事を“ノブちゃん”との愛称で呼ばせていただき、宴会は夜遅くまで続けられました……。
 多少の御無礼もあったかもしれませんが、最後まで快くお付き合いいただいた総領事にこの場を借りて感謝申し上げます。ありがとうございした、また雲南にお越しいただけること心よりお待ちしております。
 
さて、今月本商工会の年一度の総会が無事に終わり、新事務局長に渡辺氏を迎え、そのほかは今までと同じメンバーで継続して運営していくこととなりました。
 この雲南日本商工会の最大の特徴である会員の“和の心”を継続できるよう引き続きお手伝いさせていただきますので皆さま今後ともどうかよろしくお願いいたします。

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