なのか展備忘録-Ⅱ 「幽霊」
今日は、オインクゲームズ様が出展された「幽霊」について。
今回、オインクゲームズ様からは「屍」と「幽霊」の2作品が出展されています。
幽霊とは
「幽霊」のコンポーネントは、会場に散り散りに置かれた透明の三角コーン。大きさは通常の三角コーンと同じくらいありますから、気づかずに躓くようなことはありません。重量は少しありますが、取っ手がついていて持ち運ぶことができます。
テロ防止かなんかの観点で使われてる、一瞥すれば中身がわかる三角コーン。あれに似てます。
最後の一つだけは展示場所に置いておかねばなりませんが、それ以外の「幽霊」たちは来館者が自分の好きな場所に動かすことができます。
他の展示の近くに置いて一部として溶け込ませたり、道の真ん中に、一つぽつんと置いてみたり。いろんな置き方を楽しむことができます。
僕もとりあえず、入り口すぐ右の通路を封鎖するように置いてみました。
この置き方では、人の通行を制限するだけの力はないようでした。触らないように気をつけながら、幽霊を避けて進んでいく来館者たち。
そのうち、幽霊はどこかに持って行かれてしまいました。
仕組みを提供するゲーム
このゲームは、「面白そうなものを作ったから、ユーザーが使い方を工夫して楽しんでね!」というメッセージが込められたもの。「なのか展」という企画、そしてそのユーザーへの信頼が窺える作品です。
「ゴミを投げるゲーム」の近くに置いて、ゴミ箱を増やしてみるとか、狭い通路に並べて通行不能にしてしまうとか。他のゲームや館内の状態に影響を与えられるという点では、「ゲームの住人」にも近いものがありますね。
物販に置いてあった幽霊も気になりましたが、流石に手が出せませんでした。
これはゲームなのか?
これはもう申し分なくゲームなのですが、このゲームを楽しむポイントは「これがゲームであると気づいた後の思考の変わり方」なのかなと思いました。
ルールを知らなかった時の僕は、「なんかよくわかんないところに変なコーンが置いてあるな。避けて通ろう」くらいに幽霊を見ています。
ところが、ルール説明を読んでからは「幽霊」そのものに関してもそうですし、来館者に対する見方も変わってくるのが不思議なところでした。
これをどこに置いたら面白そうかな。ここにこれを置いたのは誰なんだろう。狙い通りに人が動いたぞ、みたいな。幽霊を通して、いろんな人の思いを見ることができた気になるのです。
プレイヤー同士が任意に配置できるオブジェクトを通して、無言のコミュニケーションを取っている。暗黙のルールを軸に出来上がった空間そのものが、ゲームでありアートなのだなと感じました。
幽霊置きたかったけど、流石にダメかなと思ってやめたところ何点か。
・「ヤコブの椅子」の上。
・「リモートビューイング」のプレイヤーゾーンの下。
・「城のゲーム」の出入り口。
これらの場所にも、置いちゃダメというルールは特に定められてないんです。それでも置かなかったのは、「流石にこれは危ないな」とか、「やめておいたほうがいいな」という暗黙の了解。
「人はそこに近づいてはいけない暗黙のルールを敏感に感じ取る。」というキャッチコピーは、コーンを避ける来館者のみではなく コーンを持って歩くプレイヤーにも向けられたメッセージなのかもしれないと、そう感じました。
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