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純粋三次元思考"学会"のすゝめ

今回は、純粋三次元思考本の編集をリードした佐々木星児と、本の中のコラムやコンテンツ制作に協力していただいた藤野清太郎によるテキストチャット対談の模様をお届けします。



佐々木:昨年僕らは、新しいことや面白いことを考えるための思考や態度を「純粋三次元思考」と名付けて、本まで作ってしまったんだけど、これをさらに深めたり広げたりしていきたいと思ってます。
そこで、「純粋三次元思考学会」というコミュニティ的なものを作ってみようと思ってます。

藤野:最高っすね。

佐々木:学会と言ってもそんな堅苦しいものじゃなくて、何かのテーマに対して想像力だけを頼りに、あーでもないこーでもないとカジュアルに思考実験(妄想)する場を作りたいんだよね。

藤野:なるほど。そういえば、夏目漱石も木曜会というものをやっていて、彼の家に教員時代の教え子や若手文学者が集まり、さまざまな議論をしたらしいです。毎週木曜日に開かれたのでこの名が付いたとか。

佐々木:そうそう、そんなイメージ。そういう場を作ることで、実践やコミュニティを通して純粋三次元思考の輪郭や内容をアップデートしていけるといいな、と。

藤野:ためしに今やってみますか?

佐々木:やってみよう。じゃあ最近俺が気になっている「美の領域で、どんな未来変化がありそうか」というお題で、歴史・文化・音楽・映画・本・ファッション・アート・テクノロジーなどなど、色々な視点で話してみるとどうなるかな。

藤野:いきなり超難しいお題ですね(笑)。ちょっと考えてみます。

※以降のやり取りには、事実誤認や勘違い、ソースの曖昧な情報、時代の変化が早すぎて古くなった考えなどがありますが、会話のライブ感や、純粋三次元思考学会の目指す「カジュアルに思考実験する場」を描写するためにそのままとしました。

藤野:単純に今の延長線で考えるやつだと…生身じゃなくてバーチャルなアバターのファッションのプライオリティが上がる。つまり、実際の洋服より、アバターに金をかけて、アバターでコミュニケーションすることが増える。VTuber、メタバース…とかで。
そのあと反動で、今度はアバターの洋服や容姿を、リアルで再現することが流行する。今のコスプレとかが、一部の人の趣味ではなくみんなが当たり前にするようになる。今でもそういうブランドとか、ゲームとコラボするとかある。アニメキャラみたいなデカ目とか、派手な髪型とか、ナノテクとかで簡単にできるようになるとか、わけわからないことが起こるかも。

佐々木:いいね。妄想が早い。

藤野:ファッションもマス展開するファストファッションや、ブランドが衰退して好きなものを自分でイチからつくる世界になる。新しい民族衣装や、カラーギャング的な集団で同じものを着るなど、服装やファッションの思想が超多様化する。世界が90年代の裏原みたいになったら面白くない?
あとはもう傾向があるけど、オープンワールドのゲームとか、新海誠的な汚いところが削ぎ落とされた都市とか自然のイメージが求められるようになってきそうよね。解像度が高いのがダサい、とか。

佐々木:超多様化とパーソナライズは間違いないよね。もっと変態的に考えるとどうなるんだろうか?つまり美に対する概念や価値観がどう変わるんだろうか?

藤野:今も昔も、人類は自分の身体を加工したりするのをよくするから、ツノ生やしたり、他の動物の部位をつけたり、手を増やしたりを技術が進んだらやりそう。成人したら頭に一本の角を生やすことがしきたりとか、青色に皮膚の色を変えることがイニシエーションの村とか出てきそうよね。

佐々木:この前テレビでアフリカの僻地の少数民族の生活を紹介する番組でやってたんだけど、そこでは成人になると髪の毛に赤くペンキみたいなものを塗ったり飾り物つけたりして、それ以降はそれで生きていくっていう風習があったな。実際に文明がまだ入り込んでない現実世界で起きているね。これが文明社会で起きるイメージか。

藤野:別の角度だと、食も細分化すると、珍味やゲテモノ喰いという嗜好もあるから、オーガニックのカウンターで、AIとかに人工的に人類が体験したことのない味覚の料理を作らせてそれを食べる、SFとか漫画に出てくる空想の料理を作るとかは、バイオミートの流れでくるかも。SandSの浅見くんがRPGの世界の中での食体験とかしてたやつが料理の一ジャンルになるとか。
一生、バーチャル世界で美少女として生きる人とか、AIを神様にする国とか、人類の暴力性をなんとかするためにコロシアム的なショーが流行るとか、ロボットと結婚するとか、生物を改造する流行と反発とか。世界がSF化していくのがわかるので無限に考えられるな〜(笑)。

佐々木:加工はたしかにそうだよね。食べなくても飲めば健康な身体は維持できるとき、食べるのはエンタメ、贅沢品になる。

藤野:人の手でつくったテクノロジーでありながら、人間が予想できないことが起こり好まれる…という博打性への許容が増えるか、気候変動とかの対応でコントロール重視になるか…の対立を考えると、超自由なアート人類と超管理的なマニュアル人類とゆるい管理とゆるい自由のオーディナリー人類に分かれるのか?難しい(笑)。

佐々木:多様な美→自由な美→次はなんだ?

藤野:未知の美…とかですかね…。未知とは人間にとっての未知で、それは視覚と聴覚がメインの感覚器官が解釈できる美意識ではないものという意味での未知。
これから近い未来にはAIやらメタバースやらで、人間の身体にとってのあらゆる快楽とそれが感じることのできる美的感覚はやり尽くされてしまう。
となると、その後はもう外の外部要因をどうこうするのではなく、ハードウェア(自分の身体)を改造するしかない。
となって、聞こえる音の領域を広げたり、可視光線以外も見えるようになったり、共感覚を強化したりとかで、普通の身体とは違うインプットができるようになれば、体験や思想も変わって、そこから生み出される美も変わる=未知の美が生まれる…という展開とかどうです?

佐々木:なるほど。

藤野:走光性のある昆虫にとっての光とか、イルカやクジラの長距離のコミュニケーションとか、犬の嗅覚で見る世界とかを人間の自我を持って体験したら、新しい美の概念や言葉を生み出せそう。

佐々木:トランスヒューマンで美の概念が変わるか、確かに。知覚や認識の更新が起こったら、価値観と体験はガラッと変わるな。あ、これ野村さんがやりたいことだ。

藤野:VRの実験で人は人以外の身体になっても結構すぐに適応できるみたいな本を読んだことがあり、反復説という考えもあったりで、結構人間の脳は汎用性があるのではと。
もう一つの可能性としては、今のAIの感じの延長だと、AIが美を判断するようになる…というのはディストピア的にはありそうですよね。AIで生成されるものが美しい。コンピュータが読み込めるものが正しい…とか。

佐々木:味気ない寂しい世界。

藤野:今のChatGPTだと日本語より英語で指示した方が回答の精度が高いとかの問題がありますが、AIの能力を引き出せない言語は将来的に衰退する…みたいなことを言っている人もいるので、あながちSFの話とも言い切れない状況になるかも…。またはAIの機能が今よりもっと上がれば解決する問題かもですが…。

佐々木:AIが美を判断する。興味深いです。多様性とかめんどくさいから決めてくれた方が楽な人はたくさんいるかもなぁ。そこで人間性、人間らしさが問われるのか。感情が揺さぶられるのが人間ですか?

藤野:こういう世界になったら、人間も機械の一部な気がしますよね。人間を測定して特定の脳派パターンになったら美しいと判定するシステムができたとしたら、それは車のガソリンが減ったらランプが点くことと、何が違うのか…?という…マトリックスになりそうですね(笑)。
この思考実験だと感情すら作られたものになるし、現在のリコメンドとかフィルターバブルはすでにそういう技術となっている気がするし。

佐々木:人間とは、人間らしさとは何か?という価値観が揺さぶられるな〜。

藤野:よくあるSF的なディストピアを課題として、それを乗り越えることを考える人も増えていそうですよね。だから、今は哲学が流行っているんやな。そういう意味では、勉強や知性に対する美意識的なものは必要な気がする。分からないことをちゃんと考える、自分の行動を意識的に行う…とか言語化するとチープですが、そういう理性や身体性を軸に生きる感じのことを、21世紀的な概念で再定義したいですね。賢人とか天才とかの使い古された言葉ではなく。

佐々木:言葉は重要だよね。耳慣れた言葉は全然頭に入ってこないし、思考が広がっていかないね。言葉は、その言葉を軸に未知の領域が広がるものが良いよね。

藤野:エンパワーメントとか啓発とかが近い概念かな…COTEN RADIO的なああいう活動の格好よさを定義する言葉がほしい。あれ、もしかしてそれが純粋三次元思考?

佐々木:あ、それ、純粋三次元思考ですね。全然話変わるけど、「ルッキズム」は外見だけに着眼して、人に優劣をつける習慣への反省からでた言葉で、「ジェンダー」は、男女間の格差や男らしさや女らしさといった社会的な固定概念への反省からでた言葉と捉えると、次の反省はなんなんだろう?

藤野:「ヒューマンシップ」という人間が機械の一部となり、人間らしさの欠落といった反省から出た言葉があるそうなんですが、今タイムリーなところだと、人間至上主義、人間中心主義への反省はあると思います、気候変動とか環境破壊とかで。サーキュラーエコノミーとかステークホルダーキャピタリズムとかがそうな感じがするけど、ビジネス文脈だよな〜。
日本語だと三方良しとか?なんかもっと、宇宙規模の循環の中にいる感じがいいな~。森羅万象とか万物流転とかガイア思想的な。宇宙船地球号とかいい言葉だと思うんですが、そういう感じのやつ。

佐々木:なんか勝手に妄想広がってますね。

藤野:ホモ・サピエンスって名乗るのをやめるとか(賢くないし)。人間のあたらしい生物学的名称を考えたほうがいいと前から思ってたんですよね。ホモ・ファーベル(作る人)とか、小島秀夫が好んで使うホモ・ルーデンス(遊ぶ人)とかみたいにあるっちゃあるけど。サピエンスは、自分たちを万物の霊長だという驕りが感じられる名称だから、もっと不完全で、適当な感じのニュアンスの名前をつける…。と、いまの行き過ぎたコンプラとか、真面目文化を相対化できないか…とか。

佐々木:...。

藤野:あれ、美意識と違ってきたかな!

佐々木:ホモ・サピエンスじゃなくてカカロットだよね。でも、木曜会ってこういうことだよね。

藤野:こういう雑談を、かしこまらず、エビデンスとかも適当に、思い付きでしゃべる、深夜のファミレス談義のイメージですね。

佐々木:それだ。

藤野:やはりCOTEN RADIOが参考になるけど、彼らの言う「自分たちは専門家ではなく勉強家だ」ということかも。自分なりに興味のあることはちゃんと勉強して当たれる文献や情報を得つつ、素人だからこその解釈の間違いや、専門家は普通考えない領域を相関して考えてみたりする。そういうことから専門家にはない新しくて面白いものが生み出される、そういう空間、そういう場所…というか。

佐々木:お~。目指す学会っぽくなってきた。

藤野:マアチュアリズムだな。ライムスターのグレートアマチュアリズムが今聞こえてきました。
勉強しないで、何となく集まって、偏向した考えをいったり、妄想していくと、下手すると陰謀論に陥りそうですしね…やっぱ勉強大事だな。勉強が核にあり、何を勉強するか?が差異であり、多様性を生む。

佐々木:アマチュアリズムいいねー。過度な競争や、AIの生成する嘘情報もあり、専門家の言うこともそのままには信じられない。でも、これだけ情報爆発してると個人ですべてを判断して考えるのも現実的じゃない。ちょっと身近なYouTuberとか超有名人じゃない人の方が共感されやすい。自分の趣向に合う情報を得やすく、偏りには気付きづらいという難しい時代だからこそ、人と関わりながらいろいろな考えをぶつけ合い、常に考えをアップデートしていける場はやっぱり重要ですよね。純粋三次思考学会は何を勉強するか?

藤野:メタバースえとせとらのある回で、どんな規模の企業も何かを作ることが必要と言っていたので…21世紀版のホールアースカタログ的な、イケてるものを作るには、ツールや知識だけでなく、パッションや環境や仲間や制作のプロセスなどなど総合格闘技だから、全人類ものづくり時代になるための指南書とか。色々な人類のものづくりと制作プロセスを学ぶ…とかは面白いかも?

佐々木:ものづくり制作プロセス、それ面白いね。色んな現場のものづくり方を学ぶ、と。ものづくり方大学ですね。

藤野:発電所の作り方とか、上下水道の整備方法とか、独立自治区が作れそうなものづくり知識が知りたい(笑)。哲学するには暇が大事だと思うので、はやくベーシックインカム時代来てほしい。

佐々木:こい、インカム。

藤野:もう一つ思いついた。我々が、純粋三次元思考的だと思う制作物を妄想でリバースエンジニアリングしてみる。例えば、手塚治虫の火の鳥を自分が描くとしたら、どんなリサーチや制作チーム、工程なら作れるか?みたいなのを考えるとか。

佐々木:最近思うのは、新しいものを作り出すことは、ゴミを作り出してることだな、と。でも心地よく生きるために必要なものづくりは価値がありますね。エッセンシャルクリエイターか。食、睡眠、遊び、無、とか研究したいな。

藤野:Life3.0という本に、生命が生まれて技術が発展するのはエントロピー増大の効率化である=物理法則に則ったものである、と書いてあって一番個人的にしっくりくる生命論なのですが、どうせゴミを作って生きるなら心地よく生きよう…はすごくいいですね!

佐々木:あと、個人商店とか商店街とか。

藤野:商店街いいですね。いま心地よく生きるために解決すべきことが社会システムの更新なんだなと腑に落ちました。ナショナリズムではない、スペースコロニーの実験的な商店街だ(笑)。

佐々木:こういうことを喋れる場を増やしていくこと自体が、意義がありそうですよね。

藤野:ホントにそう思います。

佐々木:ということで、そろそろ締めましょうかね。今日はありがとうございました。今日話した感じで「純粋三次元思考学会」というものをスタートしていきたいと思っています。リリースイベントとかもしようと思ってますので、引き続きご協力いただけると嬉しいです。

藤野:はい、よろしくお願いします。今日はありがとうございました。

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