「鎖って、かっこいいよね。」から始まる、鎖の歴史。
さて、次に私が気になったのは鎖。日常的にさまざまな場所で見るもので、形も用途もさまざま。道を封鎖するのに使ったり、紐の代わりに使ったり、はたまた、装飾用に使ったり。
他にもゲームなどの2次元では鎖鎌などの武器で使われたりすることもあります。特にこの二次元で使われる鎖はかっこいいものしか見たことなく、もし、自分が何かキャラクターを作るなら鎖を使ったバトルのできるキャラを作ってみたいと思うくらいです。
そんな鎖ですが、その歴史もまた、私の心をくすぐられるかっこいいものでした。
昔から存在していた鎖
昔というものの定義は難しいのですが、昔、鎖が存在していたのは3つの時代。一番古いもので紀元前からあったようです。
紀元前、ギリシャの港の入り口を防ぐための鎖
古代ギリシャ史の中でも2番目に古く、紀元前500年から350年存在していた古典時代。アテネの外港として築かれたピレウスの港の入り口を封鎖するために使われたのが初めてだと記されています。
アテネの外港と言われてピンとこない人もいるかと思われますが、要は「アテネという大都市の玄関のような役割を果たす港」のことです。そして、その港こそがピレウスという港です。ピレウスは今も存在しており、アテネの港湾都市になっています。
話は戻って、ピレウスは最初からあった港ではありません。その前に、その土地にあった港はファンレスという港でした。ファンレスは、とても開放的な港だったそうで、人の交流や物の流通が多く、とても活気にあふれた素敵な港だったのだと思います。(知らんけど)
しかし、ギリシャはペルシャ(イラン)とペルシア戦争を始めます。戦争が始まってしまえば開放的な素敵な港も、ただ外敵が入りやすいだけの国を守る気ゼロの港に変わり果ててしまいます。(物は見ようですね。)そこで、当時、アテネの海軍を指揮していた将軍は言います。
「こんな港いらないから、代わりに防御力マックスの港を作れ」と。
実際になんと言ったか定かではありませんが、こうして作られたのがピレウスの港というわけです。将軍の一声で完成したピレウスの港は、入り口以外はすべて城壁で囲われており、ネズミ一匹通さない程の鉄壁さを誇る港になります。
入り口まで城壁で囲えたら良かったのですが、流石に入り口を塞いでしまうと港としての機能しなくなります。「港としての機能は失ってはならぬ。しかし、この気高き壁以外にいいものはないだろうか」と将軍様を考え、悩んだことでしょう。考えた結果、港の入り口を塞ぐため、城壁の代わりに選ばれたのが鎖、歴史上最古の鎖だったということです。
港を塞ぐ鎖ってどんな規模なのか気になったのですが、そこまではわからずじまい。ドラえもんがいたら、ぜひその鎖を一目見るためにタイムトラベルしてみたいものです。
かの有名なヴァイキングでも使われていた?
ヴァイキングというと、皆さんのイメージでは山中にいる山賊というイメージが強いかと思われます。しかし、実際は山賊的なことだけでなく、海賊的なことも行なっていました。
紀元前、古代ギリシャから時代かなり経った、8世紀から11世紀。世はまさに大ヴァイキング時代。そんな時代に鎖は登場します。
ここで登場する鎖は、戦争中に港の入り口を塞ぐための用途としての鎖とはまた一味違う「アンカーチェーン」として使われていました。
聞いたことがあるようでないような鎖ですが、この鎖は文字通りのアンカーを繋ぐ「チェーン」です。
アンカーというと鎖同様に色々な用途が連想されますが、今回ヴァイキングで使われていたアンカーチェーンは、船を水上で固定するために使われていたものになります。
当時、大ヴァイキング時代、もとい、大海賊時代だったために、多くの船が大海原に飛び出して行ったことでしょう。飛び出して行ったところまではいいのですが、ただ水上を進むだけでなく、目的に留まることも考慮しなくてはいけません。
人生同様、時には止まることも必要です。
その際、船を陸地に上げるのではなく、水上に浮かしておくのですが、その際にどこかにいってしまわないよう、その場に留めておく必要があります。
そういった時に使われるのがこのアンカーになります。
アンカーはそれまで船との間を麻のロープで繋がれていたそうですが、海底に沈めたり、陸地の出っ張りにひっかけることで船体を水上に固定してきました。
大航海時代。
ワンピースを見てもわかるよう、船は船員が増えたりなんなりで巨大化していきます。
そうなる前までは、麻のロープで十分事足りていたのですが、船が大きくなっていけばなるほど、頑丈な麻のロープでも船体を、その場に留めておくことができず、ちぎれてしまいます。
ヴァイキングの皆さんは、船が大きく立派になることに誇りつつも、麻のロープが千切れてその誇らしい船がどっか言ってしまうんじゃないかと、頭を悩ませたんじゃないでしょうか?実際に流されてしまったヴァイキングさんもいたことでしょう。悩ませた結果、麻に代わるアンカーと船を繋ぐものとして、金属でできた鎖を採用したのです。
ここで金属が出てきたのは驚きでした。なぜなら、私にとってヴァイキングの皆さんのイメージは脳筋で、何でもかんでも筋肉で解決しようとすると思ったからです。
だから、筋肉だるまの船員たちにそのロープがわりになってもらうとか、今となっては被人道的な方法で解決すると思っていました。
しかし、ヴァイキングさんにもそれなりの良識はあったようで、鎖を使うという選択をしたようです。
麻のロープに変わって、突然出てきた鎖。脳筋のイメージのヴァイキングさんから出たとは思えないひらめきだと感じ、賢いと思ったのですが、実は閃いたわけではないそうです。
というのも、船体の大型化に伴い、船体の強化も行なっていたそうで、その際に鉄などの金属を使用しており、流れで金属というものが出てきたといいます。
ヴァイキングの中の一人が、「麻の代わりに金属を使えばいいじゃないか!」と閃いたわけではなく、そこにあった金属を見て思いついただけと知り、「なんだ天才的なひらめきがあったわけではないのか。賢くないじゃん。」などと思いましたが、そこにあるものを見てその発想になるのは十分に賢いですね。
金属について、という「デ・レ・メタリカ」
「デ・レ・メタリカ」とは、鉱山学の父と呼ばれていた、ゲオルク・アグリコラが書いた書物で、12巻にも渡る超大作です。
もちろんですが、12巻にも渡って、鎖のことを書いたものではありません。鉱山学の父と呼ばれているわけですから、金属について書かれた書物になります。書物の名前「デ・レ・メタリカ」も日本語訳すると「金属について」となりますしね。
その中では港の入り口を塞ぐための鎖や、水上で船を固定するためにアンカーと、船と繋ぐための鎖だけでなく、さまざまな用途の鎖書き記されていたといいます。
時代も1533年から1550年にかけて、書かれたものだけあり、ヴァイキング時代から数百年以上が経っているため、鎖にそれだけの用途があってもおかしくないですよね。
ちなみに、この書物の初版は著者であるゲオルグ・アグリコラさんが亡くなって4ヶ月後に発行されました。
「鉱山学の父」が残した最後の書物。その前に何か出版されていたかはわかりませんが、「デ・レ・メタリカ」は、ヨーロッパの鉱山関係者の間では18世紀までバイブルとされていたそうです。
余談という名の終わりに。
余談にはなりますが、この鎖に関して書こうと思ったのはお盆について書いた直後でした。特にこれといった理由はありませんでしたが、ふと思いつき、書こうと思ったものの、5000文字ほどを目安にしていたもので、腰が重くなり、「ゆっくり書こう」ということになったのです。
しかし、見てわかる通り、ゆっくり書いていくうちに、他に書きたいものができてしまい、そちらを手軽に書こうと書いた結果今日に公開することになりました。
仕事柄文字を書く時、どうしても文字数を気にしてしまうあまり、noteでの執筆の際もそこに囚われていたのです。
今こそ、そんな考えを改め、執筆することにしたので、俊足のごとくスピードと、天使の羽のような軽さで書くことができています。
これからは、そんな小学生のような気持ちと、相も変わらない拙い文章で執筆を進めていこうと思いますので、お付き合いいただけたら幸いです。
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それでは。
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