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日本での研修から帰って来た人たちの近況

9月30日、JICAのホームページ上に開設された私のプロジェクトのページで、「カウンターパートの日本研修実施」(9月30日)と題した記事が掲載されました。「9月30日」としていますが、これは、日本研修が9月に実施されたから10月の日付というのは恰好が悪いからで、実際の掲載は10月14日でした。(私が掲載依頼をJICAの現地事務所にお願いしたのは10月4日でしたが、その後ティンプーでチェチュ(大祭)の三連休があり、先週末は日本が三連休だったりと、ふだんより時間がかかったようです。)

プロジェクトのカウンターパート8名が参加したこの日本研修については、上述のプロジェクトニュースの他、「カウンターパート、メイカーフェア東京にデビュー」(9月5日)でも取り上げました。参加した8名は、2週間の日本滞在期間中に日本の多くのファブラボ関係者やものづくり愛好家との親交を深めました。受入れ調整をして下さった日本開発サービスさん、JICA横浜さん、そして彼らを快く受け入れて下さった多くの関係者の方々には、この場を借りて御礼申し上げたいと思います。

研修後、参加した彼らがどうそれを捉えたのか、まとまって話を聞く機会はまだ設けられていません。王立ブータン大学科学技術単科大学(CST)も結構忙しいところで、日本に研修に行った教職員も、研修期間中の授業や実習は休講扱いとなり、戻って来てからその補講を行っていてけっこう多忙らしく、まだ完全に埋め合わせが終わっていないと聞きました。それがひと段落してからでないと、日本研修での見聞をファブラボCSTの活動にフィードバックするというのも、なかなか進まないということでしょう。

ただ、そうはいっても、毎日夕方に行っているファブラボCSTの学生向けオリエンテーションで、日本での見聞は披露してもらいたい―――。私が休暇から戻るのと入れ替わりで、ファブラボCSTでの私の同僚であるテンジン君ほか、今年ファブアカデミーを修了した3名は、10月12日からインドネシア・バリ島で始まっている「第17回世界ファブラボ会議(FAB17)」に出発しました。彼らの留守中の学生向けオリエンテーションやハンズオン研修などは、私が1人で進めなければならない状況ですが、そこのサポートに、彼ら日本研修の参加者に入ってもらうことにしました。

トップバッターで来た教務担当副学長のタシさんは、特に彼が京都産業大学訪問時に見てきたプラスチック再利用の取組み「プレシャスプラスチック」を中心に、CSTの学生でもできるのではないかと、熱く語りかけてくれました。ふだんの生活の中で問題発見できるか、アイデアを出せるかどうかが最も重要という彼のメッセージには、頷かされるところが大いにありました。私もふだんブータンの若者を見ていて、人から言われてそれをやることはできる子たちだけれど、自分で問題を見つけにいって、人が思い付かないような斬新なアイデアやアプローチを打ち出すのは苦手なのではないかと感じていました。

京都産業大学でのワークショップの写真を元に説明するタシ副学長

日本研修のプログラムの編成は、私の派遣されているプロジェクトの業務実施を請け負って下さっている日本開発サービスの方々や、ファブラボ浜松の竹村真郷さんが主にやって下さっていて、現地にいる私が準備期間中に担った役割は人選プロセスの促進ぐらいでした。今回研修に参加した8名のうち、2名はプンツォリン市役所、ブータン工業会(ABI)から入っていただいていて、ファブラボCSTを取り巻く周辺地域でのものづくりのエコシステムを、一緒に形成していって欲しいとの思いがあります。でも、人選に関しては、ちょっとした「悔い」もあります。

1つは、当初は入っておられたチェキ・ドルジCST学長が、王立ブータン大学本部による待機命令で、参加できなくなったこと。これは、現在ブータンで進められている大学改革の影響です。以前、SSブログの方で、「大学改革の方向性」(2022年8月17日)という記事を書いたので、ご関心ある方はこちらの方を参照下さい。学長が日本のファブ界隈をご覧になられていたら、今後の仕事の進めやすさも変わっていたでしょう。

2つめは、もともとの人選は10名だったのに、ブータン出発直前のPCR検査で1名が陽性確認され、さらにもう1名がなんと経由地のバンコクでのPCR検査で陽性となり、隔離滞在後ブータンへと引き返すことになりました。1人目はタシ副学長に続く、本ミッションのナンバー2格だった電気通信学科長で、後者はCSTで進められている起業支援でビジネスプロポーザルを書いたりファイナンスを取ってきたりと学生が考えるにあたり、最も的確なアドバイスができる立場の教員でした。

2人が参加できなくなったことはミッションの格にさらに影響を与えたと思うし、秋葉原電気街で電子工作パーツ等をまとめ買いしてCSTに持って帰らせようとした主催者側の目論見に影響を与える結果にもなりました。そして何よりも、この2人を今後どう活用して行ったらいいのか、私の方ではこれから頭を悩ませることになります。

3つめは、この日本研修の実施時期が9月前半の2週間と決められたことで、本当は入って欲しかったプンツォリンの学校関係者の招聘が難しくなってしまったことです。この時期は、ブータンの初等中等学校は8月後半の短い夏休みを終えて新学期が始まったばかりで、教育行政や教育機関の関係者が部署を空けづらいタイミングでした。結果、「ワイルドカード」の2枠のうち、1枠はプンツォリン市役所の計画課から人選してもらったのですが、本当なら市役所の教育担当官か中等学校の校長先生あたりから人選してもらえたらよかったと思います。日本研修で、STEAM教育普及に力を入れておられるファブラボ(鎌倉、長野)も訪問したり、メイカーフェア東京で小学生が応募したmicro:bitのコンテストの優秀作品の展示を見たりして来ているので、教育関係者が入っていたら、もっと感じるものがあったのではないでしょうか。

そんな「悔い」を埋め合わせて、今後のファブラボCSTの活動につなげていく方法を考えるのが、私たちの仕事だと理解しています。FAB17に参加している4人が帰って来て、この2カ月間で外国のファブラボとのネットワークを広げてきたプロジェクトの関係者がCSTに揃ったタイミングで、これらをどう生かすか、話し合いを行うことになるのでしょう。

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