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国際ロボット五輪同行学生に訊く

2022年10月24日付のSSブログで、「次回の出場はどうなる?」と題した記事を書きました。ブータン国営テレビ(BBS)が報じたブータンチームの国際ロボコン「FIRST Global Challenge」参加のニュースに絡めた形で、今年はなんとか出場できたけれど、来年もブータンは出場できるのだろうかと問題提起をしたものです。

ここにも、たびたびnoteの記事でふれている「ファブラボ・ブータンの経営譲渡」が絡んでいます。FIRST Global Challeng(以下、FGC)の国際ロボット五輪へのブータンチームの派遣はファブラボ・ブータンが窓口になって2018年から始まったものです。この年8月にメキシコシティで開催されたFGCで、初出場だったブータンチームはベスト16にまで残り、このことが国内メディアでも報じられて、ブータンではSTEM教育ブームが起きました。

これを受けて、翌2019年5月には、東部のモンガルで「STEM Olympiad」(以下、STEM五輪)が開催され、この運営にもファブラボ・ブータンは関わっていたのです。(この時期、私はブータンにいなかったので、STEM五輪の概要や、会場の様子はよくわかりません。)


さて、くだんのSSブログの記事では、不明な点もあるので、うちの大学(CST)の学生であるR君が、大学に戻ってきたら訊いてみようと結びました。それが、ファブラボCSTが10月29日(土)からはじめた「FabLab CST Users Forum」の初回ゲストスピーカーという形で早くも実現しました。

このフォーラムは、ファブラボCSTのユーザー向けが、さまざまな有識者や経験者からお話を聴くことで、新たな知見や創作のヒントを得らえるような交流の場として、そろそろ始めたいと思っていたものです。20分程度の話題提供と質疑応答から成り、1時間以内で終わることを目指しています。話者には、ファブラボCSTですでに何かの試作を行ったユーザーや、大学を訪れる研究者や有識者、企業家や援助機関の方、誰でもいいと思っています。(青年海外協力隊員の方とか、JICAのプロジェクトの方とかでも歓迎です。)

第1回FabLab CST Users Forumの様子

その1回目で来てもらったR君、フォーラム前後の雑談を通じて、今回のFGCへのブータンチーム参加について私が抱いていた疑問点に、以下のように答えてくれました。


1.参加費用の捻出

FGCは参加料が1チーム1万ドルかかります。これによって、現地宿泊費や食事代、その他開催にかかる費用はまかなわれます。(合計180チームあまり、参加料総額は180万ドル!)これがブータンチーム参加の最大のボトルネックでした。2018年の初出場の時は、FIRST事務局がブータンに対して参加料免除にしてくれました。この特権は、初出場から3年間は適用可能とのこと。

従って、本来であれば2021年開催からブータンチームには参加料が発生します。しかし、2020年と2021年はオンライン開催でした。ブータンチームはこのあたりの事情を主催者に伝えて、参加料免除の適用ができないか検討を求めました。結果として、FIRST事務局は参加料免除を認めたそうです。

でも、スイス・ジュネーブまでの渡航費用は自身で捻出せねばならない。このため、彼らはJICAブータン事務所以外にも、ティンプーでいくつかの事業所を訪問して、支援を求めました。十数社を回って、支援回答があったのは3社だったそうです。全部は覚えていませんが、金融機関が2行含まれていました。

加えて、チームのメンバーひとりひとりに、1人100ドルの資金調達ノルマが課せられたとのことです。家族や親戚、友人などからの寄付を募ったということでしょう。私も、出発直前になって、R君からカンパを依頼されましたので、個人的にはいくらかの拠出を行いました。


2.来年以降はどこが窓口になるのか?

これは、まだファブラボ・ブータンのカルマ元代表がまだ握っているそうです。180ヵ国以上が参加しているイベントなので、来年もブータンからチームを出さないわけにはいかないと思いますが、経営譲渡されたファブラボ・ブータンが、その窓口を務めるということがあり得るのでしょうか。実際問題として、FGC出場に必要で毎年使い回しされるロボット組立キットは、今年のブータンチームがジュネーブで使った後持ち帰って来られ、今はカルマ元代表が保管しているそうです。

FGCのロボット工作キットを組み立てたラジコンカーを走らせる
FGCのロボット工作キットは、左端の学生の足元のグレイのボックスの中に保管されている

2023年の参加は、参加料免除というわけにもいかないでしょう。資金調達が必要なのであれば、クラウドファンディングをやって国際社会にアピールするとか、国際機関や民間企業などへのスポンサー要請とか、早めに手を打てれば、1万ドルというのは集められない額ではないと思いますが、そういう計画的な行動を取るのが果たして可能なのか…。今年は土壇場でなんとかなってしまったので、来年以降も直前になってバタバタするような行為が繰り返される気がしてなりません。

ファブラボ・ブータンなき後、FGC対応が事業継承先に引き継がれなければならないわけではなく、引き続きカルマ元代表が何らかの受け皿組織を立ち上げて、FGC対応を細々とやっていくという選択肢もあり得るとは思います。そういう気がカルマ元代表にあるのかどうか、まだわかりません。


3.CSTは受け皿になれないのか?

R君をメンターとして送り出したうちの大学(CST)では、ファブラボCST
と同じ建物の中に「ロボティクスラボ」という研究室を開設する予定があるため、学長はFGC対応をCSTで引き継ぐことを一瞬ですが考えられたことがあります。FGCは18歳未満の小中高生が参加資格を有する国際ロボコンですので、大学生が関与できるのはメンターとしてのみということになります。それでも、経験豊富なメンターの輩出元として、CSTは確かに有望です。また、近い将来、機械工学科がCSTに移設されるという構想もあると聞きます。

しかし、ここでもまた「参加料1万ドル」がネックになり、学長は断念されました。

来年以降のメンターがCSTの学生から選ばれるのかどうかはわかりません。今回R君がメンターとして声がかかったのも、私のプロジェクトで昨年行ったファブラボ・ブータン見学会や、CST学生向けハンズオン研修、冬休みのOJTなどで、彼がファブラボ・ブータンに出入りしていたからです。そういう声のかけ方でメンターを決めるのであれば、毎年CSTから学生が出るということはないのかもしれません。


それで、来年のFGC出場はどうなるのでしょうか。神のみぞ知るですかね。

CSTの学生を連れて、ファブラボ・ブータンを見学(2021年7月)
ファブラボ・ブータンを借りて行ったCST学生向けハンズオン研修(2022年1月)
R君の初めてのレーザー加工機利用作品

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