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フジファブリック活動休止に寄せて


また一つ、好きなバンドが遠くなってしまう。

その判断に至った理由、そしてフジファブリックの「活動休止」と言う意味。
ファンであればあるほど、なぜ「活動休止」という形にしたのかは分かると思う。
「消え」はしない。そこは本人たちがこだわりを持っている。
しかし今回の発表で、かなり遠いところに行ってしまうのは間違いないと思う。

もちろん、メンバーの意志をファンとしては尊重しなければならない。よくバンドマンはファンあってのバンドだというが、違う。バンドあってのファンなのだ。バンドが音楽を鳴らし続けてくれるから、ファンはファンでいられる。それだけバンドマンに対してはリスペクトしなければいけない。

それを前提として、少し自分と「フジファブリック」について思い出したいと思う。

歴は浅い。

僕がフジファブリックと音楽としっかり対面したのは2019年の秋。多くの人にとってはついこないだかもしれない。
バズリズムライブだった。確かKing gnuやsumika、KEYTALK目当てで、その中にフジファブリックがいた。当時は若者のすべてしか知らない状態だった。志村正彦が既にいないということも知っていた。

ライブ前の「予習」で、ちょうど直近に出ていた二枚のベストアルバムを聴いた。一曲目の『茜色の夕日』を聴いて、衝撃を受けた。二曲目の『星降る夜になったら』でもっと衝撃を受けた。三曲目の『銀河』でさらに衝撃を受け、四曲目の『赤黄色の金木犀』でもうファンになっていた。抒情的な歌詞が、自分にとってのロックとポップの黄金比のサウンドで放たれる。なんだこのバンドは。

少し時間を置いて聴いた二枚目の山内メインになってからのベスト盤も、一曲目の『LIFE』と二曲目の『Green Bird』で、「フジファブリック=志村正彦」という概念を矢継ぎ早に壊された。

バズリズムライブ2019でのパフォーマンスは、最高だった。
YouTubeにその日のステージがフルで上がっている。(違法なのでこれ以上は何も言わない)
新旧交えたセットリスト、オケで入るもう一本のギターの音、迫力あるビジョン演出。フジファブリックとの初めての出会いが、あの日でよかったと心の底から思っている。

これはワンマンに行かなくてはと、年明けの「I FAB U」ツアーの横浜に参加した。ワンマンということでもちろん聴ける曲のボリュームも多く、バンドもファンも穏やかな雰囲気で(でも演奏は激アツ)高揚感あるライブだった。
そこからコロナ禍もありつつ、ツアーやライブに多く参加した。

気がつけば、自分の中で「生きがい」のバンドの一つになっていた。

特別なバンド

自分語りもここまでにして、少しこのバンドについて日頃思っているいことを話したいと思う。

このバンドは、他のバンドとは少々事情が違う。

バンドを作り、フロントマンとして作詞作曲をし引っ張った志村正彦が2009年のクリスマスイブに急逝、なんてことはわざわざ書かなくてもいいと思うが、あまりにも大きすぎる出来事を乗り越えて、今のフジファブリックはあった。(私はもちろん当時小学生であったため、志村正彦を生でみたことはない。)

バンドを続ける意志

フロントマンを欠くという状況の中、「バンドを続ける」「フジファブリックを続ける」という意志を固めたこと、そしてここまでバンドが続いたことは奇跡に近いが、「奇跡」という言葉で簡単に片付けてはいけない。残された三人のメンバーは全員作詞作曲ができ、それも志村時代の音楽の系譜をしっかり継いでいて、なのに三人らしさもしっかりある。そんなバンドの歴史を汲みつつも、常に今に全力で、未来をむき続けるバンドだった。

しかし、「志村正彦」の存在が、もしかしたら現メンバーには重かったのかもしれない。

やはり志村時代を知っているファンは、それ以降は聴いてなかったり、聴けなかったりする人もいた。(そういった人と出会うたびに勧めてはいる。)
僕は三人体制が志村時代の年数を超え始めた辺りから聞き始めているので、分別というか「それはそれ、これはこれ」ができるのだが、やはりリアルタイムで観てきたファンはそうも行かない。
その気持ちももちろん分かるし、尊重もしたいが、勿体無いなと思う気持ちももちろんある。

ファン側の話をしたが、メンバー側も、ずっと志村と比較をされ、「死別」というどうしようもない現実故に、バンドを守り続けなければという使命感もあったと思う。

普通のバンドとは、訳がちがうのだ。

最近のフジファブリック

僕はコロナの自粛期間中はフジファブリックをc/wまで狂ったように聴き、メルカリで昔のCDまでコンプするほど、沼にハマっていた。

しかし2021年の『I Love You』のアルバムが出る前後から、少し不安というか、なんというか、よくわからない感情を1ファンとして抱くようになった。

このアルバムは、ゲストボーカルが参加する曲が三曲、そしてライブで山内がギターを持たない曲も増え、今までのフジファブリックとは違う(なんて聞き始めて5年も経たない奴が何を言ってるんだという感じであるが)、何かそれまでの作品からは大きく離れた雰囲気を感じる一枚だった。

さらに、山内のソロ活動もあった。
忘れられない2022年2月、雪の日のLINE CUBE SHIBUYAでのライブ。
フジファブリックとしてのライブだったが、一曲、山内がソロ作品に収録されている『白』という曲を披露した。歌詞は明らかに志村に向けたもので、その日の天気も相まって本当に心に響き、山内総一郎の覚悟や、今までの想いを受け止められた。

しかし、なぜフジファブリックとして出さないのか。当時の僕にはそこがすごく疑問で、不安に思っていた。

そう思っていた矢先、山内は「ソロやると不安でしょ、バンドも続けるよ」と言った趣旨のMCをしたと記憶している。

さらに山内は、ライブのMCでことあるごとに「このバンドは絶対に解散しない」「ずっと続ける」ということを何度も口にしていた。

そんな言葉が、僕らファンを安心させてくれていた。

その後フレデリックとコラボしたり、『ミラクルレボリューションNo.9』や『Particle Dreams』など、僕の思う、フジファブリックらしさと新しさがいい感じに融合している感覚がして、アルバムの発売もあってまた新しいフジファブリックが見れるのかなと期待していた。ライブもほぼ毎ツアー参加していた。(サンプラザはチケットが取れず、プラネットコロコロツアーは私用でいけなかったのが本当に悔やまれる)

突然すぎる発表

公式LINEから18:00ちょうどに、不穏な通知が来た。

明らかにいつもとはちがう、こういったお知らせ系の類では最も重い雰囲気を感じた。最初は、怖くて開けなかった。

意を決して開くと、ご存じのとおりの文面が。

まさか、まさかだった。

あまりに突然の発表に混乱しながらも、脱退ですかそうですかで二人でやってくこともせず、かといって「解散」するわけでもなく、三人の状態で「活動休止」という選択肢を選んだのも、フジファブリックらしいとすぐに感じることができた。

アニバーサリーライブも控えていて、来年の2月までの活動。なぜこのタイミングの発表になったかはわからない。
そして、金澤の「燃え尽きた」と言った趣旨の理由も、本人の言葉を聞かないと真相はわからない。


勝手に悔しい想いを抱いている

SNSを見ると、「志村がいなくなってから、よく続けたよ」「あのときから聴いてないけど、ついに」と言った言葉が多かった。

すごく悔しかった。

確かに志村の創った音楽は最高だし、僕の入口もそうだった。でも、確実に今の三人はそれを踏まえつつも自分たちのバンドとして進化していた。しかし、やはり志村のバンドだったのか。

山内の発言しか聞けてなかったし、それがバンド「意志」だと思っていたが、他の二人はまた別の想いを持っていたのかもしれない、など考えなくていいことまで考えてしまう。

ただ、バンドを続けた三人の力と苦悩は、ファンからしても計り知れない。それでも、最高の作品を世に送り続けてくれたことに、感謝しかない。

僕らにできることは、残されたフジファブリックとの約半年間を楽しむしかない。夏フェス等の影響で金銭的に迷っていた有明のチケットも確保した。(ラブシャも来てくれ)


そして、戻ってくるのを待つしかない。


ありがとう、フジファブリック。
もっと早く出会いたかったと、心の底から思ってます。
またバンドがやりたくなったら、戻ってきて欲しいです。

そして、8月の有明、どういう感情で観にいったらいいのか教えて下さい。





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