見出し画像

私たちの駄菓子屋

小学生の頃の楽しみの一つに、駄菓子屋へ行ってお菓子を買うことがあった。
各校それぞれにMY駄菓子屋みたいなものがあった気がする。中学生になるとそれぞれ小学生時代よく使っていた駄菓子屋に連れて行って、「ここは品揃えがすごい!」「ブタメンが20円安い!」みたいにやけに感動したりして。

もちろん私の通っていた小学校の近くにも駄菓子屋があった。近くというより目の前にあった。公園と駄菓子屋と小学校すべてが30秒で行ける位置に集まっていたのだ。

店の外観はかなり古びていて、店内もなかなか年季が入っている。普通のスーパーのように商品棚が横に4列ほど並んでいるのだが、右側の2列は使われていない。そもそも電気が左側しか付かない。蛍光灯がないからだ。右側は積み上がったダンボールやら何やらで埋まっていて、当然商品は並んでいなかった。

左側の2列だけを使っている訳だが、ここにもなかなかの問題がある。まず第一に大半の商品の賞味期限が切れている。入口側には期限内のお菓子も多いのだが、奥に行けば行くほど危険度は増していく。期限切れと言っても1、2週間なんてかわいいものではなく、1年以上過ぎているものがゴロゴロあった。

そんな訳で、私たちには自然と、商品を手に取ってまず賞味期限を確認する、という癖がついていた。ちなみにクラスの男子は「1番賞味期限の古いお菓子を食べれた奴が勝ち」という何とも危険な競争を開催し、参加したほとんどのメンバーがお腹を壊すという結果に陥っていた。

今考えれば色々まずいお店だとは思うのだが、私たちはみんなこの駄菓子屋が好きだった。店主のおじさんは寡黙なタイプであまり話をすることもなかったのだが、たまーーーーに(多分気まぐれで)アイスをまけてくれたりした。

ちなみに、この駄菓子屋から歩いて10分もかからない場所にコンビニもあった。しかし小学校には「学区外に出てはいけない」というルールがあり、誰もどこからが学区外なのか把握していないにも関わらず、「コンビニは学区外だから行ってはいけない」という暗黙の了解が生まれていた(コンビニが本当に学区外だったのかは今でも分からない)。そんなこともあり、私たちはこの危険な駄菓子屋のヘビーユーザーにならざるを得なかったのだ。

とにかく、この駄菓子屋にはかなりの愛着があった。公園から駄菓子屋に向かう下級生には「期限はちゃんと確認するんだよ」といつも先輩風を吹かせていた。

しかし、この愛すべき駄菓子屋は2年ほど前に閉店してしまった。元々経営が厳しいという話は聞いていたし、荒れた店内を見れば長くは続かないであろうことも分かっていた。でも、やはり更地になってしまった姿を見るとどうしようもなく寂しかった。新しく建った歯医者を見る度に、何となく切ない気持ちになってしまう。

そして何より、私たちにとってのMY駄菓子屋がなくなってしまったことが悲しい。残ったのは学区外のコンビニだけだ。

この記事が参加している募集

#スキしてみて

525,537件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?