見出し画像

労働と対価と物々交換と貨幣と

読書
子育ての風景


「ペレのあたらしいふく」という絵本がある。
子どもだけでなく、大人も新鮮な気持ちになれる本だと思う。
これは、ペレという男の子が
自分の服を親に買ってもらうのではなく
自分の労働の対価として手に入れるお話だ。
ペレは自分が世話をしている自分の子羊を持っていて
子羊の毛を自分で刈り取って、おばあちゃんにその毛を梳いてもらう。
これは、羊毛を紡ぐ前に毛を整える大事な作業だ。
で、おばあちゃんが毛を梳いている間
ペレはおばあちゃんの人参畑の草取りをする。
梳き終わった羊毛を持って今度はもう一人のおばあちゃんのところに行って
それを糸に紡いでもらい・・・糸を染め、機を織ってもらい
仕立て屋さんに仕立ててもらうまでの、洋服を作る一工程ごとに
ペレは自分のために手を動かしてくれる人のために
その人の家の仕事をかいがいしく引き受ける。
そうして手に入れた服を着て
毛をくれた子羊にお礼を言うペレの姿が何だかまぶしくて。
原料 → 加工 → 製品 → 利用♪

労働と対価について小さな子どもでも素直にわかるいい絵本だと思うし
普段お金を介してモノを手に入れている大人にも
自分が作らないでモノを手に入れるということは
自分の代わりに誰かに作ってもらっているのだ、と気付ける本だと思う。
自動販売機にお金を入れたら商品が出てくる、というのでなく
ポチすれば送ってくる、というのでもなく
服を作る工程がひとつひとつ目で見えることで
ペレの「手ごたえ」を感じて
子どもたちはこの絵本で達成感と満足感に浸るのだと思う。
ペレがこの服を大事にするだろう、ということは
子どもでもわかる。
いわんや、大人をや。

さてそこで、なぜ「ペレとあたらしいふく」のことを書いたかというと
ウチの姑の子ども時代・戦中戦後の話を思い出したから。
姑の実家は自転車屋さんだったが、当時そうそう売れるわけもなく仕事のほとんどは修理だった。当時の道路は舗装されてはいなくて砂利道のデコボコだったから、自転車が故障するばかりでなく、タイヤがよくパンクした。
何しろ自動車がまだまだ少なくて、人や荷物の移動に自転車やリヤカーが大活躍していたので、修理に来る人がずいぶんいたのだ。
また、周りが畑と牧場だったのでずいぶん農産物を分けてもらっていたので

贅沢なモノは無かったにせよ・お腹を空かせたことは無かった
・・・が、お金だけは無かった、と。
それでおばあちゃんの兄弟を小学校から上に・中学校や女学校に進学させるかどうかで親は頭を悩ませていた。
父親は器用な人で、自転車を使わない冬の間はブリキ板を切ったり曲げたりしてストーブや煙突を作ったりしていたくらいで、大抵のモノは自分で作れたし、自動車の修理だってできた。
それでも、学校へ行くには「お金」が無ければならなかったのだ。
そうか
大昔でない限り手作りだけでは生活できないのだ。
確かに、授業料や交通費、税金、医療費等々は
どうしてもお金でないと「買えない」モノだ。

そうだ、ペレも染粉を手に入れるのに
ペンキ屋さんの手伝いで一旦お金にしてから「買っていた」。
ペレが学校へ行くときには、両親はどうやってお金を用意したのだろう。
ペレの家の経済が気になるのは
自分が大人になったということかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?