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私の指輪物語

ウチのおばあちゃんは、昔々ゴツイ金の指輪をしていたそうで
その指輪が「四角く」なっていて、それは
指輪をした手で息子(夫)の頭にげんこつを喰らわせていたからだ
と夫が言っていた。
おばあちゃんは「雑巾を絞ったせいだよー!」と、反論していたが。
いやー
どちらも真実なのではw
何にせよ、指輪をした手で頭を叩かれたら
さぞかし痛かったことだろうが
叩かれるようなことをした夫が悪い。

新婚時代、こんな自分でも結婚指輪をはめていた。
だがしかし
イスを持てば「こつん」と当り
水道の栓をつかめば「カツン」と当り
雑巾を絞るたびに「四角くゆがむのでは」と心配し
「いやいや、24金じゃないから大丈夫」と思ったり
色々と支障が出てきたのだが
その中の最大の支障が
手を洗ったときに指輪の下が洗いきれないのと
水が拭き残ってしまうことだった。
これじゃ、手を清潔に保てない。
というワケで、一年しないで指輪は外してしまった。
しばらく見ていないが、今どこにあるのかな(汗)。
とはいえ取り出しても眺めるだけだ。
もはや昔の細い指ではない。

そういえば
中学生の時、空き巣に入られた。
土曜日で、学校から帰ってくると家の中が何となく変な雰囲気で・・・。
そのうち母が帰ってきて「お前、ここ、開けた?」と。
言われて見れば、あちこち不自然に開いていて、畳の上に靴跡が・・・

警察の人が来て色々聞かれた。
母が出かけたのが昼前で・私が帰宅したのが午後1時半。
空き巣が侵入したのはその間だったとわかった。
母は何度も「あんたが帰ってくる前で良かった」と言っていた。

家の中にあった現金は根こそぎ無くなっていた。
私が毎月の小遣いからちびちび貯めていた数百円も貯金箱から消えていた。
母のいくつか持っていた指輪も無くなっていた。
そのとき、生まれて初めて指紋を取られて
近所の聞き込みに行くのに刑事さんを案内していった。
指を一本ずつしっかり「つままれ」て・謄写版のインクをぺたりと付けられ
指の腹を紙に「くるりっ」と押し付けられた感触を覚えている。

刑事さんは「これ、そのうち必ずつかまりますから」
と気楽な調子で言っていたが
しばらくして新聞に窃盗犯が捕まった記事が出た。
「盗みも盗んだり」札幌市内で300件の空き巣を働いたと。
我が家に入ったのはその泥棒だった。
現金は戻らず、宝石はすべて台からはずされて売りさばかれていたとかで
残ったのは母が出かけた時、指にはめていたダイヤの指輪だけだった。

当時の自分は貯金箱の中身を盗られた悔しさで一杯だったが
中学生の娘と泥棒とのニアミスに母がどれだけ肝を冷やしたか
親になった今、身に染みてわかる。
あの頃の自分のなんと幼かったことか。

残された指輪は今
空き巣の思い出とともに自分の元にある。

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