見出し画像

日陰でも日焼け

春早くに買ったベゴニアの鉢を居間に置いて楽しんでいたが
初めから咲いていた花は濃い朱色だったのに
日を経るにつれて色が明るいオレンジ色に「抜けて」きて
ああ、これはもしかして窓越しの日光では足りないのだなと思って
昼間表に出してやったら確かに花は凄みのある赤にはなったものの
「葉焼け」を起こしてしまい、これは直射日光では強すぎたと
置き場所を日陰にしてみたらそこがちょうどよかったと見えて
いい具合に鮮やかな朱色になってくれた
…ここまでお読みになって、お気づきだろうか(六角精児の声で
日陰でも十分に日の光は威力を持っているのだ…。
だから日陰でも日焼けするんだね。
自分にとって人生一番の日焼けは
日焼けというより雪焼けで、これはすさまじかった。
ほぼ火傷でしたな。
昔々、春の十勝岳でスキーをしたことがあった。
スキーを担いでひたすら頂上を目指し、頂上から滑り下りるのである。
頂上付近は凍っていてエッジが効かず
滑るというより、ガリガリとずり落ちていく。
どんどん落ちていくとそのうち固く締まった雪になって
何とか雪にスキーを食いこませて降りて行った。
山の雪というのは強風で斜面に押し付けられていて
所により非常に固く・所によりずぶずぶに柔らかい。
それが不規則なマダラ状になっていて
固いと思ったらいきなりスキーがめり込んだり
スキーがガリガリいうので驚いて足元を見たら
雪がはがれて岩が顔を出したりでまったく予測不能。
それで10メートルごとに転んでいたのではないか。
転ぶと背中のザックが雪にめり込んで起き上がるのが大変だった。
ちなみに山スキーは転ばず安全に山を下るのが鉄則である。(汗

やっと下のスキー場の部分まで降りてきたら
今までの悪斜面がウソのように滑らかにスキーが滑る。
ゲレンデは圧雪車でキレイに均されていて
しかも高度が低いので雪温が高く、春のもろいザラメ雪になっている。
今までさんざん苦しめられた不均衡な雪山の雪は
管理されたスキー用の雪となっていて
最後はパラレルで大きく滑らかなシュプールを描くことができた。

人間が管理した自然と
自然そのものとの
圧倒的な差を感じた春山スキーであった。

登りはスキーを担いで4時間、下りは2時間だったが
ゲレンデ部分はあっという間に滑り降りてしまった。
そして
山にいるときは滑るのに夢中だったので気が付かなかったが
家に帰ってお風呂の鏡を見て驚いた。
なんとなく重く感じていた唇はタラコと化し
顔は茶色のまだらになって皮が浮き、耳はこんがりロースト状態で
数日後、耳たぶの形の焦げた皮膚がぽこりと取れた。
雪山の紫外線は空から降るだけでなく雪面からも反射するのである。
ちなみにその二週間後、友人の結婚式には
まだらに焦げ跡の残る顔に必死で化粧をして出席した。
雪焼け、恐るべし!

そういえば
以前テレビで日焼けについてやっていた。
皮膚科の先生をまじえていろいろ解説があったのだが
皮膚がんや火傷に関係する日焼けと
肌が黒くなる・シミ・シワができる日焼けの違いの話になり
肌を黒くする波長の紫外線は一年中大量に降り注いでいる
ということを説明したとたんに
女性ゲストたちが一斉に
「えーっ、知らなかった!」
「だって先生、今までそんなこと言わなかったからー!」
「何で早く教えてくれなかったんですかー!」
突然責められた先生は困った顔をして
「いや、病気になるわけじゃないから…」

要するに、皮膚がんや火傷につながることじゃないから
肌が黒くなったりシミができたりするのは病気じゃない、と。

でも、テレビに出てくるようなおしゃれな女性たちにとっては
日焼けはまさに「死活問題」だったのだ。

日焼けというものを
医師は医療の問題としてらえ
タレントは美容の問題としてとらえる。
これはかみ合わない話になるわな。

医師「シミができたって健康上何ら問題はありません」
タレント「イヤですー!絶対イヤですー!許せませーん!」

まあ、つまりこれ
別の問題だからさ。
そういうことは分けて考えないとね、ってことで。
色々と思う所のある日焼けの話でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?