見出し画像

23歳無職、大阪から東京まで歩く【前日譚】

2023年3月14日。家具が一通り揃い、引っ越し作業もある程度落ち着いた。

仕事は4月3日から始まる。ダンボール出したり近所散策したり仕事の勉強したり、WBC見たりしなきゃなーと考える一方、とある考えが浮かぶ。

「明日大阪出発すれば仕事始まるまでに歩いて東京戻ってこれるんじゃない?」

この時は本当に冗談交じりの考え、というかほぼ冗談。
なんせ思いついただけだし当然一切の準備をしてない。

しかも3週間後には仕事が始まる。
体調は万全の状態で臨まなければならない。

時間的余裕を考えても、旅先で病気をすれば一発アウトの強制送還。あと家でお菓子を食べながら侍ジャパンの応援したい。今回のメンツ豪華だし。

まぁ、普通に考えて無理だよな。と眠りにつく。


翌日3月15日

冗談で思いついたことなのに、どうしても昨日の馬鹿な考えが頭から離れない。

先人達のブログを参考にすると、かかる日数は大体16日。3月31日に到着するには、明日3月16日に出発する必要がある。

逆に言えば、遅くとも明日中に出発しなければこの旅の達成は無理。

気が付けばスケジュールを考え始めている。
いや考えたところで無理でしょ。

こういう大掛かりな旅って数か月前から日程決めて、一週間前から荷物確認して、ルート下調べして、それぐらい念入りにやらないといけないものだろう。

でも、時間・金・体力の3つが揃っているのは、恐らく20代かつ無職の今だけ。今やらなかったら、次にチャンスが来るのは何年後だ。

まぁ一応、一応ね。と思いながら天気予報を確認する。2週間の内、7日間程が揃いも揃って雨マーク。

ほれみろ、諦めよう。

でも、一生で最後のチャンスかも。

そんなめんっっっどくさい逡巡を一日中続け、気付けば夜。

あーもうめんどくさい。行こう。


迷うぐらいなら行っちゃえ。と、勢いで荷造り、といっても、着替えを3泊分詰め込んだだけ。後は替えのマスクぐらい。

どうなろうがもう知らん。明日早朝の新幹線で大阪に行く。
ベッドに入ると、またぐるぐると頭の中に考えが浮かぶ。

「満身創痍で初出社を迎えることになる」
「会社の勉強すべきでは」
「あれだけ楽しみにしていたWBC見れなくなる」
「体調崩した時点で即チャレンジ終了の綱渡り」
「16日のうち7日も雨の中歩くのどう考えてもしんどすぎる」
「この2週間、東京で遊びまくった方がよくないか」
「そもそも大阪から東京まで歩くとか普通に無理では」


・・・・・よし、やめよう!


明日一日を無心でやり過ごそう。日数的に、物理的に不可能になれば諦めがついてこの葛藤も消える。
ひとまず新幹線に乗る必要はなくなったので、わざと寝過ごそう。

明日一日をベッドで過ごして、この雑念からおさらばする。

そういうことで、おやすみなさい。

3月16日早朝

一睡も出来ず。

きっぱり諦めたはずなのに、なぜ。行かないと決めたはずのに。
結局、日中と同じような考えがずっと頭でぐるぐると回っていて、寝過ごすどころか1時間も寝られなかった。

カーテンの隙間からは朝の陽ざしが差し込んでいる。今日は快晴。

行くしかない。

諦めると決めて寝ようとしたのに一睡も出来なかったということは、つまりそういう事。

リュックサックを持って、家を飛び出す。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?