見出し画像

しっかりと味わう

ピアニストの仲道郁代さん。多くのファンがおられる。私はまだ直接コンサートで拝聴したことは無いのだが、色々な所でエッセイは拝読している。名文家でもあられる。

日経新聞9月24日夕刊で仲道さんは『道すがら』というタイトルで寄稿なさっていた。それを読むと、演奏も人生も似ているなと思う。

仲道さんによれば、作品というのは出発点があり、そこから到着点を目指していくものだ。その道のりの途中には美しい音色がある。よって、単に音として捉えたままではつまらなくなってしまうが、一つ一つの音に意味を見出せば、音楽に共感し、感動できるという。

「人生の道のり」もこのようなものだと、仲道さんは説く。人生における到着点とは、自分の人生の終焉を意味する。だからこそ、

「その道すがらに大いに心を寄せて共感し、感動し、心に刻みたい。その道のりを確かに歩いたという実感を得たい。心ここにあらずで直進しては、もったいない。」

と仲道さん結んでいる。

確かにそう。過去や未来に心が行ってしまっては、今を生きることから遠ざかってしまう。時は確実に「終着地点」へと向かっている。だからこそ、丁寧に、自分ならではの人生を実感しながら歩みたいと思う。

(日本経済新聞2022年9月24日夕刊「明日への話題」)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?