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「戦場記者」

ずっと気になっていたTBSのドキュメンタリー映画「戦場記者」を観た。

これまで私自身、放送通訳業務の中でBBCやCNNの戦場特派員たちのレポートを訳してきた。どの記者たちも戦地でのすさまじい様子を映像で伝えてくれる。戦火の中、現地入りして取材をするだけでも、どれほど大変なことだろうと想像する。

カメラがとらえるのは、戦争により家や家族、すべてを失った人たちだ。私はそうした方々が画面に映し出されるたびに、放送通訳をしているスタジオにおいて、「なぜ私はこのように空調のきいた場所で、通訳できているのだろう?」と考える。敬愛する精神科医・神谷美恵子先生の「なぜ私たちでなくてあなたが?」という一文を思い出す。

有楽町の映画館で観た「戦場記者」に登場するのは、TBSの須賀川拓記者。アフガニスタンや中東、ウクライナなどを取材した様子が描かれている。TBSロンドン支局があるロンドン西部のChiswick地区。オフィス近くの公園で須賀川記者は、「世界で2番目においしい」という中東料理ファラフェルを食べながら、これまでの取材を振り返る。緑豊かなロンドンの公園。行きかうロンドン市民。空にはヒースロー空港に向かって着陸態勢に入る飛行機。そんな平和な光景のあと、氏が取材してきたレポートが映し出される。

20年以上前、私がBBCで放送通訳デビューしたころは、ユーゴ紛争があった。BBCを退職して帰国した直後には、イラク戦争があった。これほど月日が経ってもなお、今、世界のどこかで戦いが続き、人々が傷ついている。その不条理をどう私たちは解釈し、どのようにしたら未来につなげていけるのだろう?

そのことを考えさせられた素晴らしいドキュメンタリーだった。


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