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受け入れてくれる人

寺尾紗穂さんのお名前を知ったのはつい最近のこと。たまたま何かの媒体で本の紹介をしておられた。

力強い文章だった。

どのようなバックグラウンドなのか気になり調べたところ、音楽家で文筆家。未婚で3人のお子さんを産み育てておられることを知った。

「彗星の孤独」という本を早速借りて読んでみた。大学時代のこと、音楽に関すること、生まれ育った家庭のことなどがつまびらかに綴られていた。

中でも次のことばが心に響いた。

「一番大切なのはひとりの人間にとっての切実な表現と喜びがそこにあるかどうか。それから、それを認めて受け入れてくれる人が身近にいるかどうか。これは、人の幸福を決める大きな要因であり、人が生きていく上で、最強のセーフティーネットになりうるとも思っている。」(p49)

寺尾さんが言及しているのは、音楽活動についてだった。しかし、この文章は芸術に限らず、すべてに当てはまると思った。とりわけ「受け入れてくれる人」の存在は大きい。

私は実両親との課題を長年引きずっている。私自身、人生の折り返し地点を過ぎたというのに、まだこのことに心を乱されることがある。根底にあるのが、「受け入れてくれる」部分の欠如であった。

一番身近である肉親がこの役割を果たせないと、苦しむのはやはり家族である。しかし、相手に求めたとて叶わない場合、いくら切望しても仕方ない。それを私はこの数年で学んだ。「血のつながった肉親」に「受け入れてもらうこと」を求めたこと自体、私の場合はまさに I was barking up the wrong treeだったのだ。

しかし、そうした環境下に置かれたおかげで、肉親以外の「身近」に「受け入れてくれる人」がいることに私は気づかされた。

誰かが誰かのセーフティーネットになる、ということ。

それは家族でなくても構わない。

そう私は思っている。

(「彗星の孤独」寺尾紗穂著、スタンド・ブックス、2018年)

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