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常套句

新聞を読んでいて、ついついツッコミを入れてしまうことがあります。それは「常套句」。いわゆる「決まり文句」のことで、英語ではclichéと言います。CNNニュースでもよくこの「クリーシェイ」という単語は出てきます。ちなみに常套句の「套(とう)」は「おおい」のこと。コートを「外套(がいとう)」と言いますが、同じ漢字です。国語辞典を調べたところ、「常套句」に使われる「套」は「古臭い」という意味だそう。なるほど。

で、何に私はツッコミを入れたかと言うと、数日前に読んだ社会面の記事。街中の声をとらえたものだったのですが、そこに出ていた文末が、

「~とため息をついた」

「~とうつむいた」

などだったのですね。

確かにニュースのトピック柄、そういう雰囲気だったとは思うのですが、その方が本当にため息をついたわけでもうなだれたわけでも無いはず。そう解釈すると突っ込みたくなってしまうのです。もし私が街頭インタビューを受けた際には、「いえ、私、ため息ついたりうつむいたりしませんので、淡々と書いてください」と記者さんに直訴しそうです(いえ、実際にはしませんが)。

ところで日本では首相が施政方針演説を行うと、翌日の新聞には丸一面を使って全文が掲載されます。安倍政権の頃から私は全文を読むのが好きなのですが、じっくりと目を通すと安倍さんが頻繁に使っておられるフレーズの特徴が分かります。特に多かったのが、

「~しようではありませんか」

でした。数年前のこと。思わず蛍光ペンを取り出してこの文末だけハイライトしたところ、複数個所がピンク色になりました。でもこれは安倍さんに限らず。昨年12月の岸田総理の演説にもありました。

PCキーボードで「F3」ボタンを押してから「ありませんか」と入れてみると、岸田総理の演説には同表現が4か所あったことが分かります。

「うーん、政治家にとって『~ありませんか』は常套句なのかも」

というのが私の中の結論でした。

ところが数か月前のこと。放送通訳現場で私自身が初めて訳文の中でこのフレーズが口をついて出てきたのです。どのニュースだったかは忘れてしまったのですが、確か要人の演説と記憶しています。

これぞサブリミナル効果!

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