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端を折る

随分前に辞書編纂について綴った「舟を編む」がベストセラーになった。今日のタイトルは何となくそれに韻を踏んでいるということで。

一昨日、観劇に出かけた。土産物店で購入したのが豆大福。日本橋の老舗が劇場に出店していたのだ。久しぶりに和菓子を購入した。

帰宅して食べようとした際、お皿を出すまででもなかったので(いや、本当はちゃんと器に出すべきだが)某カフェの紙ナプキンを敷くことにした。表には創業年の「1971」の文字が入っている(店名を書かないのであえてこんな感じで示唆)。

トレイの上で紙ナプキンを大きく広げようとしたときのこと。端の所が微妙にずれていることに気づいた。ぴったりと紙の端が重なっていると広げづらい。が、これなら出っ張っている方をつまめばすぐに大きくなる。「うわー、こんな細かいところまで心くばりがあるとは」と感激した。

日本には折り紙や包む文化がある。だからなのだろう。お店では袋にセロテープをする際、店員さんはテープの端を折って貼り付けてくれる。帰宅後はそこをつまめばすぐに開封できる。ちなみに小麦粉のジッパー付きパッケージなど、最近は上の部分を切ると切り口が少しずれる仕様になっている。「開けやすくなりました」との表示も見かけたことがある。最近のパッケージはそこまでしてくれるのだ。こういう細やかな仕様に私は唸ってしまう。何しろ長年暮らしたイギリスではそういう文化が無かったから。

以来、私も誰かにプレゼントを差し上げる際にはテープの端を折るのが習慣になった。相手に気づいてもらえなくても構わない。ただ、そのようなちょっとした工夫をすること自体が幸せなのだ。

余談だが、大学生のころ、デパートでアルバイトをした。研修で最初に教わったのが包装紙を使ったギフトラップの方法。ラッピングペーパーの広げ方、ボックスの置く位置と角度は今でも覚えている。最小限の面積の紙で美しく包み上げる。これも素晴らしい日本文化だと思う。

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