ジュエリーデザイナーをやめてアヒルを描きはじめた理由
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ジュエリーデザイナーをやめてアヒルを描きはじめた理由

AHIRU LIFE. アヒルライフ

人みたいなアヒルの、言葉のないショートストーリー「AHIRU LIFE. アヒルライフ」をSNSで配信しています。

アヒルとカメレオン

アヒル(と時々カメレオン)しか登場しないので、「どうしてアヒルなんですか?」「アヒルが好きなんですか?」とほぼいつも聞かれます。

結論から言ってしまうと、作者は特別アヒル好きだったわけではありません。じゃあどうして毎日アヒルばかり描いているのか。

その素朴な疑問にお答えするにあたり、そもそもの作品のきっかけと、アヒルライフとはなんなのかを言葉にしてみようと思い立ちました。

アヒルペンw

アヒルライフの誕生にややこしい理屈はありません。でもそこに行き着くまでに、長い年月がありました。

自分の本当の思いに近づきたくて、あれも違うこれも違うと迷いながら様々な企業で働いてきました。そのうち忙しさに目が回って、自分の本心に耳を傾けることを完全に忘れてしまいました。

ハードワーカー

でも身体はうまく出来ていて、あるいは私の潜在的な思いが強かったお陰で、ジュエリーデザイナーを辞めてアヒルを描くようになりました。

どんな人にも、しっくりとくる生き方があると思います。それは他の誰にも決められないし、批評されるべきものでもありません。

誰に何と言われようと揺るがないものが、実は心の奥で辛抱強く出番を待っているかもしれません。

ロックバランシング

このお話は、長いことしっくりとこなかった一人の会社員が、ようやく違和感のないあり方にたどり着いた、というシンプルな体験談です。


* * *


1.笛が鳴る

エンゲージリング

私は子供の頃から絵を描くのが好きでした。高校卒業後にデザインの学校へ行き、卒業後はずっとデザイナー畑で働いていました。

前職はアパレル関連のジュエリーデザイナーでした。ブランドコンセプトに合わせたネックレスやリングをデザインする他に、SNS等の販促関係の業務、イベントや繁忙期に販売応援に入ったり、デザイン業務以外にも色々なことに携わっていました。それ以前は腕時計やバッグメーカーの社内デザイナーを経験しました。

絵を描くことが仕事ではないけど、デザイナーという仕事は絵を描くことが付き物だから、自分が好きなことから遠く離れてはいないように感じられました。

でもだからこそ気づきにくかったのだと思います。どこか完全には納得できない違和感のようなものを感じ続けながらも、好きなことを仕事にしているのにそれ以上を求めるのは贅沢な気がしていました。満足しなければと。

アヒルの着ぐるみw

今から3年ほど前、企業で働いていた私に転機が訪れます。色々な負担が重なり合っていたその時期に、身体が私に警笛を鳴らしたのです。

交通整理w

デザイナー時代は、毎日毎時間、常に急いでいたという記憶です。頭の中は私なりのフル稼働でした。

ある日の勤務中、私はいつものように急いでタイピングをしていました。急いでいるのだけど、頭の回転が突然ゆっくりになりました。文字通り「頭が回らない」感覚です。急がなきゃいけないのに、急げないのです。生まれて初めての体験でした。

その感覚はその日だけのものでしたが、私はこれ以上この生活を続けてはいけないんだと感じ、退職を決意しました。違和感どころか、明らかに「これじゃない」と全身が私に訴えたのでした。


2.何もしない

パンの雲

仕事のために生活をしていたような目まぐるしい日々から、家でひとり静かに過ごす生活に変わりました。

でも離職後しばらくはゆったり休んでいられなくて、仕事を続けられなかった挫折感と、働いていないという罪悪感を打ち消すように毎日家中を掃除しました。

星の雑巾

ひと月かふた月もするとやっと何もしないでいられるようになりました。何もしないとは、生産性のない暮らし。何もしないその時間が、生きる時間を区切らない考え方を私に吹き込みました。

寝たり起きたり食べたりというような、日常におけるひとつひとつの営みが途切れることなく繋がって私の人生をかたち作っていて、働く時間もまたその営みのひとつでしかない、というように。

資本(お金)という世の中の仕組みが関わると、生産性のある営みにこそ価値があるかのように錯覚してしまいます。寝たり起きたり食べたりしている時間も労働の時間も、私の連続した生きる時間なのに。

お花にハグw

あらゆる営みの全てがかけがえのない大切な要素として感じられ、まるごと慈しむようになりました。


3.扉を開く

自動ドア

何もしない毎日から習い事などのリハビリ期間を経て、やっと次のことを考えられる段階になりました。そしてごく自然に、絵を描こうと思い立ちました。

学生時代にグラフィックデザインを学んだとはいえ、本格的なオリジナル作品の創作なんてしたことがありませんでした。小さな頃から変わらず好きなこと。私には絵を描くことしかない、という思いだけが原動力でした。

湖のアヒル

そうしてしばらくはとにかく紙に色々描いてみながら自分のスタイルを探ったけれど、簡単には閃きませんでした。

いつまでも家に篭って落書きしていたって何も始まらない。絵を描くことを生業としたいと思うなら、まずは誰かに見てもらわないと。

今はSNSを使って誰でも気軽に作品を発表することができるけど、果たしてSNSがきっかけでイラストレーターになった人っているんだろうか。

アヒルのインスタ

検索すると割とすぐに記事が出てきて、世の中に発信することで可能性は少なくとも0ではなくなるってことだけは理解しました。

その記事を読んだのがたまたま自分の誕生日の数日前だったから、キリ良く誕生日にイラストアカウントを開設することにしました。こじつけでもなんでも、とにかく一歩踏み出したかったのです。

誕生日

私は比較的のんびりした性格なのに、部分的にせっかちな所もあって、白なの黒なのと前のめりに答えを探し求めてしまいます。

新しいことに挑むのに二の足を踏む人もいると思うけど、私はまだ見ぬ世界への好奇心が勝って、「次の扉を開けたら答えかもしれない」と、考えるより先に次々と扉を開けていくタイプです。

行動力と言えば聞こえはいいのだけど、ようするに前もってあまり考えていません。やってみたいことや知りたいことがあったら扉を開いて飛び込んでしまうのです。

ダイブアヒル

やってみたいとか知りたいという感情はごく自然に湧いてくるものです。ぽっと突然に湧くその思いとは、自分の中の望みの欠片なのだと思います。

だから湧いてきた感情を素直に受けとめて行動することは、自分が望んでいる何かを掴みに行くということ。逆に感情に蓋をして、望みの欠片なんか見なかったことにして生活していたら、きっと自分の思いとは全く別の人生になってしまうでしょう。

星の砂

私は自分の真意を理解したい。そしてそれに正直に生きていきたいのです。


4.はじまり

いよいよInstagramにイラスト用アカウントを開設しました。その時はこれがアヒルのアカウントになるなんて思ってもみませんでした。そう、アヒルライフは入念な企画から生まれたものではないんです。

はじまりの時点では、とにかく思い付くままに手書きイラストを投稿していこうとしか考えていませんでした。アカウント名にアヒルの要素がないのはそれが理由です。

投稿5

開設時のプロフィール画面はアイコンが私物の指輪だったり、名前もアヒルライフではありませんでした。

始まったばかりのアカウント。
なんとなく生まれたての卵を連ねて数字の「1」を描いたら、偶然か必然か、アヒルが誕生しました。

たまご

そしてどういうわけか、立て続けにアヒルを描きました。なんだか分からないけど、さらにアヒルに動作を加えたその時に、私自身がおもしろく感じ始めたような気がします。

以後、なんの因果かアヒルを描くのが楽しくなってしまい、この創作物にAHIRU LIFE.アヒルライフと名付けて現在に至ります。


5.アヒルライフ

長年持ち続けた違和感が、いつしか無視できない警笛となって私に訴えかけ、しばしの休息を経てアヒルライフが生まれました。

私は会社員時代、仕事を楽しみたかったし、情熱を注ぎたいと思っていました。生活の大半を占める活動なので、仕事が好きではなかったりつまらなければ、人生自体がつまらないということになると思っていたからです。

企業の中で一生懸命に時間と体力を消耗したけれど、その力を絵を描くことに注いだら、身体も心も一変しました。それは経験してみないと分からないし、比較すればするほどに、今打ち込んでいるものに確信を持てるのです。

星遊び

そもそも何故アヒルなのか。潜在的に描きたい世界が先にあって、それを表現するのに感覚的に行き着いたモチーフがアヒルだったのだと思います。

冒頭でお話しした通り、そこにややこしい理屈はないんです。

順番が逆みたいですが、アヒルライフを続けていたら、アヒルも黄色も好きになりました。

詰め合わせ


6.描きたい世界

アヒルライフはシンプルで、ユーモアがあり、自由です

私は豊かな暮らしの中に、たくさんのものは必要がないと思っています。心の持ちようで、映る世界は違って見えるはずです。ちょっとしたことで笑ってしまうような、愉快な発想を持つこと。それが豊かさの秘訣だと思うのです。

ちょっと笑ってしまうようなアイディアを描いて、それを見た誰かも笑ってしまうとしたら素敵だなと思います。

それは私が何の気なしに発したひと言が、私の知らないところで誰かに良い影響を与えていた、というのと似た感覚です。私の発したものが知らない誰かをほんの少し幸せにする。何か良いものを偶然拾うように。

作為的でなく、素直な発想で創作したい。
そして風のように自然に、癒しと笑いを誰かに運ぶことができたら幸せです。

アイスパンチ


SANAE FUJITA



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AHIRU LIFE. アヒルライフ

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わーーい!
AHIRU LIFE. アヒルライフ
人みたいなアヒルのショートストーリー作品をふんわり配信中。『黄色と白の、言葉のない世界。ユーモアがあればそれだけで幸せ』| AHIRU LIFE.書籍刊行(詳細はプロフィールへ) | ©️2018 SANAE FUJITA https://lit.link/sanaearts