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小さきもの

自分を過大評価するのは馬鹿をさらけ出しているようなものでみっともないし、過小評価するのも卑しい自己防衛であったりして醜いから、そのさじ加減は難しい。ただそれを「内に秘める」限りは人間関係に大きく波及しない。問題が生じるのは言動に自己肥大や卑屈さが垣間見える時で、お酒を飲んだりするとそれが露骨になったりする。

今日は免疫力向上させるべく、身体を温めに近所の温泉に行ってきた。平日九時にいけば貸し切りで、水風呂にも入ったりしながら一人でのんびりとすごしていた。そこに

黒船来航

彼は「こんばんは」と挨拶をし、礼儀正しく掛け湯をして、ゆかしく湯船に身を沈めた。非の打ち所のない大人の作法で、異国の地の者が、日本の文化を重んじるというのは立派なものである。しかしだ

モノが立派すぎるのだ

羨望と嫉妬、あるいは言い訳。様々な思いが交錯し、僕は己の心とモノの小ささを実感しつつ「嗚呼」と細く息を吐いた。
その小ささなため息に気が付いた彼は「お疲れ様」と言わんばかりの穏やかな視線を僕に向けた。

違うのだ。そんなんじゃないんだよ。

ここで、動揺を見せると負けだ。僕は内に秘めた卑屈さを圧し殺して柔らかな微笑みで応える。すると彼が口を開きそうになったので、僕はたまらず湯船から身を起こし「お先に」と言って浴室を後にした。

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