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とても幸せだった母の日。

先週の日曜日は母の日だった。
私の母は料理も掃除も得意ではなく、いわゆるお母さんという雰囲気があるわけでもない。(だからか今も昔も「お母さんの料理で好きなメニューは?」という質問が苦手。)
ただ、私を心から信じて、愛してくれていたことは間違いない。と思う。産まれてから今まで「母に嫌われたらどうしよう…」と悩んだことは皆無だ。

さて、そんな母と当日はショッピングに出かけた。
お互いの家からちょうど中間地点にあたる駅で待ち合わせをし、混雑している商業施設をひたすら巡る。
買い物しながらも止まらない母の話。そんなことある?と驚かされるエピソードもしばしば。普段は私と異なる世界にいる人の話。なんとも刺激に満ちている。

途中お昼休憩をはさみながら最後は本屋へ向かった。
私は小さい頃からよく本を読む子どもだった。今思えばたぶんそれは両親の影響なのだろう。家にはいつも本があった。
母は寝る前に本の読み聞かせをしてくれたこともあったが、「続きが気になるから続きを読んでくれるまで寝ない」と言った私を見て、読み聞かせをやめたらしい。ちなみに私は続きが気になって自分で読み聞かせ用の本を読むようになった。母は黙って隣で本を読んでいた。
子ども用の本に飽きた私は、母が読んでいる途中の本を勝手に読むこともあった。少し背伸びして本を読む時間が、私は結構好きだった。
やるべきことをせずに本を読む私に、一度母が怒った?ことがある。
「そんなに本を読みたいなら、広辞苑でも読んでなさい!」
まだ広辞苑を知らない年齢のことだ。めげない私を見て、母は本当に広辞苑を持ってきて、私の前に置いた。私にもプライドがあったから、「あ」から熟読した記憶がある…。
そんな私と母ではあるが、母は最近本を読んでいないようだった。実家に帰ったときに気付いたのだが本がほとんどなくなってる。両親いわく終活の一つらしいが、少し寂しい。
というわけで本屋で宣言。
「今日はお母さんが読みたい本をすべて私が買います。読み終わって手元に置いときたいと思う本以外はすべて私が引き取るから遠慮せずに選んでね。」
昔から好きだった作家さんの新刊、ハマっている大河ドラマのガイド本、POP に惹かれて買った本などなど…。
最初は「これ、いい?」「あ、これも…いい?」と遠慮がちだった母だが、最後は両手に抱えきれないくらいの本を選んでくれた。(本屋で買い物カゴを使ったのは初めてかもしれない。)

私に読書の楽しさを教えてくれた母に、私のお金で本をプレゼントできることがとても幸せで、なんだか感慨深かった。
家に帰ったらさっそく読もうとなんとなくうきうきしている母を見ているのも嬉しくて、心が静かにわくわくした。視界が少しぼやけた。
読み終わったら貸してね。私も読むから、感想をシェアしよう。
母ではない私が、母がいたから幸せになれた、今年の母の日の話。


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