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後悔していること

私の人生訓は「反省はするけど後悔はしない」です。そんな風に生きていけたらいいなと思いつつ、実際には後悔することもそれなりにあります。

店を始めてから一番後悔していること。それは数年前の、お客様との電話のやりとりです。

私は子供のころから電話が苦手です。できれば出たくない、かけたくない。職場で電話が鳴ればドキドキしながら受話器を持ち、どこかへ連絡しなくてはいけない時は電話以外の方法がないか探します。メールや郵送で済むならそうします。どうしてもかけなくてはいけない時は、緊急でなければ頭の中で(時には実際に紙に)原稿を書き、話すことを文章化してからかけます。

電話が苦手な理由は、相手の反応が音だけで伝わってきて怖いこと。相手がどんな表情なのかがわからないので、声が少しでも不機嫌そうだったりする時には胸がキューっと苦しくなります(恋ではない)。
年を取るにつれて図々しく図太くなってきたのでだいぶマシになりましたが、今でも電話は緊張します。(あと、電話の声が聞きとりにくい、というのもあります)

ある日、店に1本のお電話をいただきました。ご予約のご相談でした。
お客様は、何らかの施設の職員さんで、車椅子の利用者様と行くことができるお店を探していらっしゃるようでした。

実は当店のパパと私は昔、高齢者の介護施設で働いていました。利用者様の遠足を企画してお食事に行くことが年に1回あり、それが大変喜ばれていましたので、状況はすんなり理解できました。
当店は店の入り口に4段ほどの階段がありますが、お許しがあればベビーカーや車椅子の方の昇降をお手伝いしています。そのことをホームページに載せている時期もありました。それをご覧になりお電話くださったのだと思います。

人数を確認すると9名様とのことで、ちょっと当店では狭いかな、どうしよう、と思いながら一度ご確認いただいた方がいいかなと考えていました。

でも、私は電話が苦手だし、とっさのことでうまくご説明できず、「入口に階段がありまして・・・」で言葉がつまってしまいました。
そこで、「それなら結構です」とお客様に言わせてしまったのです。

その後のやり取りははっきり覚えていません。でも、電話を切った後、ものすごい後悔が押し寄せてきました。
娘がお腹にいる時に開店準備を始めました。娘が生まれ、障害があるとわかった時、どんな人でも気軽に来れる店にしたいと夫婦で話しました。それなのに、最低の対応をしてしまった。完全な準備不足だと思いました。悔しくて申し訳なくて、その日は眠れませんでした。

しかし、改めてバリアフリーについて考え直すきっかけにもなりました。
やはり、入り口の4段の階段はなかなかの障害になります。
当店の構造なら他に物件を探した方が早いかもしれません。改築するにも移転するにも、金銭面のハードルが高くすぐには難しい。本当に申し訳ないです。

小さいけれど、誰でも立ち寄ってホッとできる店にしたい。その夢は捨てていません。今はまず「心のバリアフリー」を目指して、娘のように知的障害などがあっても気軽に立ち寄っていただける店にしようと思っています。障害があると、外食に対するハードルは上がりがちですが、「san-rin-syaなら行けるね」と気軽に足を運んでいただける店を目指します。

今はなかなか外食しずらい状況ですが、また店内がにぎやかになる日が早く来ますように。

そしていつか、ハード面もバリアフリーに出来たら・・・あの日お電話をくださったお客様にご来店いただいて、楽しい時間を過ごしていただきたいです。


お読みくださりありがとうございます。もし宜しければサポートいただければ嬉しいです。サポートいただいたお金は、店のバリアフリー計画に大切に使わせていただきますm(__)m