布団を干したら骨折した話③

随分間が空いてしまいました。誰も読んでいないかと思いますが、一応続きます。
前回までのあらすじ
 娘のおもちゃで足をくじき、左第五中足骨骨折(下駄骨折)をしたママ。
 ドクターの勧めもあり、全身麻酔手術を受けることとなる。

手術前日。入院準備。
1泊なのでそんなに荷物も多くないはずが、入院案内を見ながら準備したらかなりの荷物になった。(でも、その荷物のほどんどは使わなかった)
入院案内を読むと、「手術中、ご家族は待合室にてお待ちください。必ず連絡がつくようにお願いします」と書いてある。私は遠い昔を思い出していた。

某病院で病棟看護師として働いていた1年目の春。その日の受け持ち患者さんが手術日だった。朝早くからご家族は来院して、病棟ラウンジで待機している。
患者さんをオペ室へ送り届け、病棟勤務に戻る。ふと気づいたら、そのご家族が見当たらない。食事にでも行かれたかな。対して気にも留めていなかった私。先輩ナースが私に尋ねる。
「〇〇さんのご家族はどうしたの?」
「いらっしゃらないですね。お食事に行かれたかもしれません」

先輩の顔色が変わる。「どこへ行くかは聞かなかったの?どこかへ行くときは声をかけるように伝えなかったの?」

結局、病棟クラークに食堂へ行くと伝えてくださっていたのだが、新人ナースには先輩の指導が入った。

「手術を甘く考えすぎ。麻酔をかけるということは、いつ何があるかわからないということ。家族には必ず連絡がつくようにしておかなくてはいけないよ。」


昔の苦い記憶を思い出した私は、店主に伝える。

「全身麻酔だから、オペ中は病院待機になるから宜しくね。店は休みにして、私の身に何かあったらこの人とこの人には連絡してね」

店主は「えー、何かあったら困るよ~」といいながらメモをとっていた。

入院日(手術当日)。

子ども達に「お母さん、明日帰ってくるからね。お父さんの言うことよく聞いて、助けてあげてね」と言い聞かせる。子ども達は「はいは~い」とお気楽モード。

松葉杖をつきながら車に乗り込み病院へ向かう。

「麻酔怖いなぁ。大丈夫かなぁ。何かあったら、子ども達のこと宜しくね。頼んだよ」

骨折の手術なのに命懸けのオペへ向かうような気分。

病院の駐車場が空いていなくて、取りあえず私だけ病院の中へ入り、入院手続きをする。

しばらくすると看護師さんが迎えにきてくれた。

「付き添いの方はいらっしゃいますか?」

「あ、今車を置きに行っていて…」

「そうですか。もうここ(待合室)でお別れになるんですけど、どうしましょう?」

「え、付き添いはいらないんですか?」

「今、感染症対策でご家族は病棟に入れないんですよ」

マジか。そうか。なんだ。旦那の付き添いいらないんじゃん。

「そうでしたか、では連絡します~」

店主のLINEに(付き添い不要。帰っていいみたい。)と送り、

「大丈夫です、行きましょう」と病室へ向かった。

病室はいわゆる一般病棟ではなく、コロナ禍なのに手術を受ける短期入院患者用に用意された部屋だった。感染防止対策バッチリ。

部屋の説明を聞いていると、ひょっこりはんのように店主が顔を出した。「あれ、LINE見てないの?」「見てない」「付き添いいらないんだって」と言葉を交わすと、看護師さんが丁寧に説明してくださり、術後の説明も聞かなくていいという店主は帰っていった。

手術前で飲み食いできない私は、お腹が空きそうなものだが緊張のあまりそんな気配は全くなく、不織布の術衣に着替え、手術に呼ばれるのをスマホをいじりながら待っていた。

そのうち、看護師さんが点滴を入れにやってきた。そして、私の腕を見て一言「これは難しいな…」

自慢ではないが、私は前腕に血管が全く浮き出てこない。採血をする肘窩にはわかりやすい血管があるが、点滴を入れるには避けたい場所である。

「ちょっとお待ちくださいね」看護師さんが他の看護師さんに「血管なくて入れられない」と言っているのが聞こえる。申し訳ない。看護師さんチェンジ。

「あ~これは難しいね…」私の右腕をさすりながら呟く看護師さん。「ちょっと痛いです」と1回目トライ。「んー。ごめんなさい。抜きますね」ダメだったか…。

朝から飲まず食わずなので血管も余計に浮き出てこない。

看護師さん、左腕に2回目トライ。お、入ったか?「うーん、点滴落ちないな…ごめんね、抜きます~」あぁ、ホントに申し訳ない。次に手術を受けるときは、ダイエットして筋トレしてからにします。

カーテン越しに看護師さんたちの会話が聞こえる。「次ダメだったら、麻酔科に入れてもらおう」

3回目。「ここに入れると腕をできるだけ伸ばしていないといけないんだけど、いいですか?」肘窩付近を触る看護師さん。「大丈夫です。どこでも」と私。左肘窩に無事に入りました!良かった~。

そしてまたしばらく待ち、結局15時頃に手術室へ歩いて向かった。てか、シーネしてればこんだけ歩けるんだから、手術しなくても良かったんじゃないか?という思いがふと頭をよぎる。でも時既に遅し。私は手術台の上である。

「では、麻酔をかけますね~。マスクをあてたら普通に呼吸していてください。そのまま眠りますよ~」マスクをあてられ、息を吸ったそこから記憶が途切れ…

目が覚めると、左足に激痛が!この痛み、ヤバいんじゃないか?!

…つづく。


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