見出し画像

【ラノベレビュー 36】 『十二月、君は青いパズルだった』

こんにちは、Kanonです。今回は…

神鍵裕貴先生の『十二月、君は青いパズルだった』の感想記事です。

あらすじ

「私、先輩のことが世界で一番――嫌いです!」

高校二年生の霧崎陽奈斗が、下駄箱に治められていた手紙に書かれたメッセージを見て、浮かれながら向かった屋上。
その場に現れた美少女――七草音葉から発せられたのは、とても告白とは思えない言葉だった。

「てことで、私に付き合ってください。先輩♪」

などと言う音葉に不信感を募らせる陽奈斗だが、彼に音葉が語ったのは、記憶が消えてしまう前に、強烈に記憶に残る思い出を作りたいからというもの。

呆れて帰ろうとする陽奈斗に、音葉はさらに強引に迫る。その理由は――! 

記憶というパズルのピースがこぼれ落ちていく中、二人の想い出は美しく積み重なり――! 
青春ラブストーリー開幕!

『十二月、君は青いパズルだった 』神鍵裕貴 ファンタジア文庫
2022年12月28日 発行 より引用

こんな人におすすめ

  • ファンタジー要素のある恋愛小説が好きな人

  • 後半にかけて一気に伏線回収される物語が好きな人

  • ちょっぴり切ない物語が好きな人

感想

物語の構成がお見事

この物語の世界では、「パズル病」という病気が存在します。

それは自分の体の一部が自分の好きなものの記憶と共にパズルのピースのように抜け落ちていくという病です。

この"好きなものの記憶"というのがミソで、"好きな人にまつわるものももれなく好き"という着眼点が面白いです。

好きな人が好きな趣味。

好きな人が好きな食べ物。

好きな人と過ごした時間。

大切に思っている人の全てが徐々に記憶から消えていってしまう物語というのは、いつの時代でも人の心に哀愁を与えてくれます。

この物語、序盤ではヒロインの音葉が一見無鉄砲な行為をしているように映ります。

しかし、物語が展開していくにつれて「パズル病」の症状を前提として行為であることに説得力が生まれていきます。

そして最後には「もしかして…?」とあえて読者に展開を予感させることによってクライマックスへと繋げていく構成が見事でした。

物語の結末(若干ネタバレあり)

構成とクライマックスまでの展開がお見事でした。

「もしやバットエンド…」と読者に思わせることで最後の最後まで楽しむことができます。

少しネタバレをしてしまうと最終的にはハッピーエンドで終わるのですが、個人的に結末は少しだけ納得ができませんでした。

というのは、ラストの展開で音葉が記憶を取り戻す根拠というのが弱いような気がしました。

それまでの展開が絶望ルートまっしぐらな感じがあっただけに、音葉が記憶を取り戻すまでの過程が描かれていればより説得力のある結末になったように思います。

総評

結末に若干思うところがあったものの、トータルとしてはめちゃくちゃ切なくて色鮮やかな青春小説だったように思います。

こういうのを求めてるんですよ…

余談ですが、普段読書していると脳内で特定の誰でもない声がするのですが、この作品に限っては音葉の声が最初から声優の雨宮天さんボイスで再生されていました。

Audibleとかで雨宮さんの朗読版、でないかな…


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?