衆院選2021 沖縄県の情勢を考える(第1回-1) 沖縄1区編

 今回から、全4回にわたって沖縄の選挙情勢を考えていきます。初回は沖縄1区です。

構図 ーオール沖縄vs保守の2名

 今回の構図は以下の通りです。

 赤嶺政賢  前職 当選7回 共産党公認(オール沖縄候補)
 國場幸之助 前職 当選3回 自民党公認・公明党推薦
 下地幹郎  前職 当選6回

 前回構図と同じで、オール沖縄候補と保守候補の2名、合わせて3名が立候補しています。公認・推薦状況もほぼ同じですが、2017年の選挙とは異なり、下地氏は今回無所属で立候補することになっています(IR問題で日本維新の会を除名)。選挙はおおよそ三つ巴の構図ですが、保守合同を成し遂げられず、保革一騎打ちという保守の悲願の構図とはなりませんでした。

選挙区の概況

 沖縄1区は、県庁所在地で中核市指定を受けている那覇市と、慶良間・粟国諸島、久米島町、大東諸島で構成されています。那覇市の人口は30万人超であり、慶良間・粟国諸島や大東諸島はおおよそ人口1000人程度か、数百人台の人口で構成されています。唯一久米島町は7000人の人口を持っています。実質的には那覇市の動向が大きく注目されることになる選挙区です。
那覇市は都市部であり、比較的共産党などの革新勢力が力を持っている地域です。かつてはあの瀬長亀次郎を那覇市長に選出し、またオール沖縄を立ち上げた故・翁長雄志知事も那覇市長を歴任しています。

過去4年の選挙状況、市町村ごと

 ここで、前回衆院選までの選挙の当選者を以下に示します。

画像1

 まず、那覇市の動向をみると、地元の選挙(県議選など)、国政選挙や県知事選といった全県的な選挙ともにオール沖縄候補が勝利していることがわかります。また、前回の衆院選では、赤嶺さんの唯一の勝利区でもあります(逆に那覇で勝ったことで勝利となった)。記してはいませんが、那覇市長もオール沖縄系の方です。

 次に島嶼部ですが、座間味村や久米島町といった地域を除いて、基本的に保守の勝率が高い傾向にあります。前回の衆院選では、北大東村で國場氏が75%の得票を得てトップに立っているほどで、特に大東諸島ではその勝率が高い傾向があります。座間味村や久米島町では多少オール沖縄の候補が勝利しているケースを見ることができ、特に久米島町ではその傾向が顕著にあります。しかし、衆院選では保守の候補が勝利している傾向があるようです。

 以上の過去の選挙傾向を見ると、那覇市では基本的に赤嶺さん有利に、それ以外の地域では國場さんや下地さんといった保守系の候補有利に、それぞれ働く可能性が高いとみられます。

保守合同を果たせなかった自民党

 もしこの傾向が今回の選挙でも続くのなら、やはり順当に赤嶺さんが勝利を収めることになりますが、前回選挙での赤嶺さんの得票率は全体でも40%に届いていないため、必ずしも赤嶺さんが有利だとはいえない状況にあります。全体で40%を切っている要因としては、最も支持が見込める那覇市でも得票率が40%程度であることが挙げられ、島嶼部ではあまり得票が見込めないことがこれをさらに押し下げる要因になっています。

 逆を言えば、保守候補の得票率は全体の6割程度を占めているため、もし保守合同を実現できれば、多少なりとも保守候補の勝利の可能性が上がることになります。特に公示前、自民党総裁選があった時期には、國場さんか下地さんかのいずれかで統一しよう、という動きが活発でした。しかし結局今回、保守合同を果たすことはできず、二候補に分裂する結果を生むことになりました。

 前回の衆院選では、國場さんは54000票を獲得していますが、下地さんも34000票を獲得しているので、國場さんの勝利には下地さんの協力を仰ぐことは極めて重要でした。しかし、下地さんは自身を統一候補として、自民党に復党する考えを変えませんでした。これを自民党県連が調整することができなかったこと、國場さんと下地さんとの間で、何らかのディールを模索することができなかったのが、今回の選挙で保守候補が苦戦を強いられている一番の要因になっています。

赤嶺さんが勝つために

 ここから候補者別で勝つための戦略について書いていきます。

 先ほども述べた通り、保守分裂があるため、赤嶺さんは比較的有利な戦いを進められます。しかし、前回の得票率が40%に届いていないというのは非常に厳しいものです。特に、大票田である那覇市での得票数があまりないというのが大きな痛手です。

 那覇市は、2019年参院選、2018年沖縄県知事選ではそれぞれオール沖縄の候補が56%、57%の得票率を得ており、いくら一騎打ちであったとはいえ、その得票率は衆院選に比較しても大きな差があるといえます。逆に言うと、2017年の状況に比較し、2018年や2019年は得票率を改善できたと考えるならば、今回はもう少し得票率を伸ばせる可能性もあります。いずれにせよ、赤嶺さんは比較的有利だとは言え、那覇市での得票率40%は非常に厳しいところです。ぜひとももう少し得票率を上げて、手堅い勝利を収めることができれば、来年の県知事選に向けても弾みをつけられるのではないかと思います。

國場さん、下地さんが勝つために

 まず國場さんは、前回と今回との大きな差は、金秀グループの会長が今回は応援に回っているという点があるでしょうか。逆にそれ以外には、地元に大きな差はないような気もしています。保守候補が勝利する上に当たって、もちろん島嶼のリードは大切ですが、やはり那覇で勝てないと当選は難しいでしょう。今回は安倍一強政治から大きく変わって、新首相の元ということもあって、”これまでの実績”というのを打ち出すのは難しいかもしれません。来年は2022年、沖縄復帰から50年であり、振興特措法の期限を迎えることから、沖縄振興の新たな形を、経済界から見出していく、そういった訴えを通じて支持を広げていく、とにかく那覇で勝つことが大事でしょう。

 下地さんには特段の支持勢力がないため、今回は草の根からの活動になります。粟国村や久米島町では下地さんの支持があるとはいえ、何度も言うようですが那覇で勝てなければ当選はできません。何より下地さんは今回、IR問題に関する説明責任もあるのではないかと個人的には感じています。ですから、そういった問題への説明と、國場氏と同じようなアプローチを行っていくことが重要になっていきます。

 とはいえはっきり申し上げると、保守合同ができなかった時点で勝ち目があるとはあまり思えません。前回と同様の構図ですから、このままでは前回と同じ結果を得ることになります。何か打開策を打ち出さなければどちらも勝率は低い状況が続くものと思われます。決戦までは残り1週間です。

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