創作:東京


東京が好き。何もない退屈な空間が嫌い。だからなんでもある東京が好き。
音楽が好き。毎日塞ぎ込んでいた日々を救ってくれたから
人混みが好き。田舎で育ってきたから、人が多いとお祭りみたいでワクワクして好き。
新しいものが好き。いつも最先端で、オシャレで、煌びやかな東京が好き。

そして、ライヴハウスが好き。いろんな想いで人生を賭けて演奏している人たちは輝いてみえた

だから僕は、住んでいた街から上京して東京にいる。たくさんの好きに触れたいから

上京した頃を思い出した。当時はただ漠然と「東京に行けば何かが変わる」と思っていた
だけど自分自身の本質はビックリするほど何も変わらなくて、東京で音楽をやる意味もフワフワしていた。自分自身で選んだ道なのに

どこに行っても東京は凄いところだった。どこに行っても煌びやかで、歌が上手いやつなんていっぱいいて残酷な街でもあった

メンバーを探してバンドを始めた
スタジオとライブハウスに入り浸る日々を送った。メンバーとたくさん練習して、曲を書いて、やり直して、いいものが出来たらみんなで喜んだ

だけど、バンドは解散した

俺の歌いたかったことはこんなことじゃない
俺のやりたかった音楽はこんなんじゃない
なんで。なんで。なんで
ぐるぐる。ぐるぐる。ぐるぐる。
お腹の中に黒い、嫉妬に近い汚い感情が渦巻いている

たくさん振り回して、ワガママを言って、傷つけたこともあった

でもそれでも立ち止まるわけには行かなかった
進むしかなかった
東京で自分が自分らしく生きるにはそれしかないって本当に思った

またメンバーを探した
僕のCDを毎日聴いてるリスナーを誘った
スタジオで毎週顔を合わせる先輩を誘った
解散したバンドのメンバーの1人が僕にまた声をかけてくれた

最高のメンバーが集まった
また僕は、東京で歌が歌える


僕が東京で音楽をやる理由は売れたいとか、東京なら音楽をやる人がたくさんいるからメンバーがみつけられるとか、そんなのもあったけど、好きなものを好きと歌うため

地元で寄り添った日々を捨ててでも、ここにはその価値がある

東京が好きだ
僕はまた、ステージでマイクを握っている

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