絹腰さむゑ

キヌゴシさむえと申します。 しがない物書き気取りの与太郎でございます。 食べたり、…

絹腰さむゑ

キヌゴシさむえと申します。 しがない物書き気取りの与太郎でございます。 食べたり、飲んだり、ふらりと散策したり…… だけど本当は、素敵な小説を書きたかったり? ここは、そんな感じで諸々を綴る自由帳です。

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「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第1話

あらすじ  宇宙西暦3189年。『──もうじき戦争が始まる』。  太陽系最大の都市タルシスシティでは不穏な噂が広まりつつあった。マリネリスの密林を根城とする自由主義者たちは、火星暫定政府に対する強力なレジスタンス運動を展開していたが、過熱するゲリラ行為の鎮圧のため、ついに宇宙連合軍が動いたのだ。  タルシスで暮らす少年レンはそんなこと気にも留めていなかった。貧しい日々を生き抜くだけで精一杯なレンにとっては、獣亜人の少女ニナや幼い仲間たちとともに今年こそは如何にして美味しく楽

    • 【ぶらり】品川駅で500円モーニング

       いきなりだけども。あたしゃ、もっぱら米食い虫で。  例えばステーキハウスのセットでパンかライスかと聞かれればそりゃあライスだし。  泊まったホテルの朝食ブッフェがたとえ洋食気味のラインアップでも、ボイルドウインナーとスクランブルエッグにお醤油ぶちかけて、カリー&ライス用の白米と一緒にかっ込むってぇわけでございます。  そんなあたしが何を血迷ったのか。朝メシ食いそびれてうろついてたJR品川駅は改札内の『駅人(えきゅうど)』だか『エ○キュート』だか知んねぇけど、こないだ冷蔵庫

      • 第一回令和小噺「奈井江の羆」

         ここだけの話だけども、北海道は奈井江町が猟友会と仲違いしてんのは、羆が裏で手ぇ回してっからだよ。  あたしこないだ聞いたんだ。  国道沿いの松林で役所の若いのが、これまた若い2、3歳くらいの羆っから 「あんた方が猟友会と手ぇ切るってんなら、こっちはたまに顔出すくらいにしとくクマ~。おっかぁと、おっとぉも、そう言ってるべや~」  ってぇ言われちまってんで。そしたら役所の若いの、こう言うんだね。 「前向きに検討します。これは町長からほんのお気持ちです」  なぁんて言

        • 「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第12話 (終)

           やっと、カビ臭い地下空間から脱出した。重い鋼鉄製のハッチを開け放つと、眩しい太陽光が降り注ぐ。そして、地下では微かだった銃声や爆発音がより現実味のある騒音として、ハッキリと鼓膜と腹の底を揺さぶってくる。  レンは懐のピストルに手をかけたまま周囲を警戒し、コンテナ置き場を通り抜け、大通りまで辿り着く。路肩には何台か車が駐車していて、一台の黄色いキャブにだけは、運転手が乗っていた。 「どこまで? あたし好みのお客さん」 「家まで。俺の新しい家だ」 「ふぅん。それじゃあ、本当

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        「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第1話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第11話

           ────宇宙西暦3191年。タルシスシティの工業区画を一台の黒いワゴン車が猛速で走り抜ける。続いて一台、さらに一台の警察用高機動車が、甲高いサイレンを吹鳴しながらパトランプを点灯させ、ワゴン車を追跡する。 《エイカー3からエイカー1。容疑車両は東三条通りを宇宙港方面へ、時速70マイルで直進中。人質の安否は不明だ》 《エイカー1了解。エイカー1からエイカー司令室。空港警備の軍に連絡はいってるか?》 《エイカー1へ──現在防衛軍へ連絡中です。連合軍の部隊がいるらしいわ。共同対

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第11話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第10話

          「……ニナは。まだイヤだって言ってんのか」 「うん。レンとは会いたくないって」  十二月二十六日の深夜。日付が変わってやっと第二港区の臨時収容所から解放されたレンたちは、皆で第三港区のアジトへと戻っていた。  連合軍の犯罪捜査部門から取り調べを受けたレンは、”自らを軍属であると虚偽の申告をした罪”に問われそうになった。しかし、件のテラーマン大尉が『一般的な危機的状況において、十代の少年が錯乱状態に陥り迎合するのは何も不思議ではない。現行の宇宙連合軍法に彼を罰する規定は存在し

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第10話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第9話

           ────レンが目覚めたのは、第二港区での騒動から約8時間後のことだった。    目覚めてから、おそらくは数分後。朧気ながら五感で世界を感知出来るようになり、寝そべったまま周囲を観察する。まずは自分の左胸の辺りで、ニナが丸まるように寄り添いながら胸に顔を突っ伏して眠っているのが分かった。さらに、反対側の右胸では、マサムネが涎を垂らしながら寝息を立てていた。  それでも、『いや、まだだ』と、昂ぶる感情を抑えて周囲を必死に観察した結果、リヒトとメイメイは自分の右足を枕にして肩を並

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第9話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第8話

          「ウワ゛アアアアアアアア!? アアアアアアアアアア!!!!」 「消せ!! 早く消火しろ!! 衛生兵!!!!」  宇宙連合軍がデモ隊に対して音響兵器を使用してから、第二港区が戦場と化すまで全く時間は掛からなかった。民衆に紛れた一人のゲリラが、隠し持っていた火炎瓶を火星防衛軍の海兵へ投げつけたのだ。  これを皮切りに、暴徒鎮圧部隊からは鉄条網のこちら側へ、強化ゴム弾で容赦の無い一斉射撃が浴びせられた。 「追撃しろ! 高圧放水車、前へ!!」 「虐殺者に裁きを!! 火星に自由を

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第8話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第7話

          「おい、聞いたか? なんでも、連合軍のでっけぇ戦艦がそこの宇宙海軍基地に入港したんだとよ」 「当たり前だろ! 今朝からうちのラジオも、街中のTVモニターもそんなニュースばかりでもうウンザリだ! クソ宇宙連合め」 「戦艦じゃねぇよ。さっき見てきたけど、ありゃあ強襲揚陸艦さ。あの無愛想な顔無しどもがわんさか乗ってる軍艦だよ。それが一隻どころか、遠征艦隊レベルの数で火星に集結してるってんで、噂になってる。明日には戦争が始まるってな」 「戦争だって? 誰と誰が?? まさか、火星を攻撃

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第7話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第6話

           ────十二月二十五日、早朝。  タルシス第三港区の放棄された工事現場に、レーザー・ガンの銃声が鳴り響く。 「こちらマサムネ隊員!! リヒト隊員、応援はまだか!?」 「こちらエースパイロットのリヒトだ!! マサムネ隊員、またせたな! コウクーシエンを開始する! 頭を下げろ! ひゅぅぅぅん、どどどー!」  瓦礫に隠れて新品のレーザー・ガンを構えるマサムネの頭上をリヒトの右手が操る模型戦闘機が掠めていく。しかし、その先ではなんとも可愛らしい人形の女の子が両手を広げていた──

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第6話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第5話

          「そんなポンチョで寒くないのかい、お嬢ちゃん」 「……はい。内側に着込んでいるので」 「そいつはいい。俺ももう少し着込んでくればよかったよ。支給品のジャンパーは見た目だけの安物でさ。断熱材のかわりに、特売品のマシュマロが詰まってる」  気さくな警官はフラッシュライトで照らすのをやめ、沈んだ声色のニナを元気付けようと他愛ない冗談を投げかけてくる。相変わらず深く俯いたまま反応の薄いニナの代わりに、レンが「アハハハハ──」と、電子ボイス付き玩具のようにわざとらしく笑う。 「悪い

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第5話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第4話

           宇宙西暦3189年────。人類による本格的な火星のテラフォーミングと移住プロジェクトの始動から800年ほどの年月が過ぎた今、タルシスシティは太陽系最大の”開放型惑星都市”となっていた。  開放型惑星都市とは、都市全体を防護する物理的な隔壁と気密性を必要としないコロニーの形態であり、地球型生命の生存に必要な大気や温度などの条件が揃ったごく一部の惑星においてのみ建設・運用が可能である。これは、かつて人類が地球上で生活していた頃の形態に最も近く、多くの場合では最低限のシールド発

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第4話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第3話

          「マサムネ~……今日は何の日だぁ~?」  虚ろな視線で天井を見上げながらリヒトがマサムネに問いかける。 「クリスマスだよ。なー、リヒト?」  マサムネがゴロゴロと床で転がりながらさりげなく隣のレンに体当たりする。レンは、小さく舌打ちをしながらマサムネを追い払う。 「そー、そー。サンタなんて居ないけど、代わりにレンがごちそうをたんまり持って帰ってくるはずだったんだぁ……」  マサムネとリヒトが細く、そして長く溜息をつく。 「俺だってなあ────。…………まぁ、悪かっ

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第3話

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第2話

          「レン! 早くしてよー!」  壁を這う太いパイプや、天井に張り巡らされた色とりどりの電線だらけの点検用トンネル──。それらの一角でひしめき合う浮浪児たちの影があった。よく見れば、宇宙港からアジトまで獲物の小型コンテナを持ち帰ったパイロット・ジャンパー姿の少年のほかは、まだ乳歯も抜け切っていないような幼い子供ばかりだ。 「うっさいなぁ……! 今、やってるって──」  彼らが『レン』と呼んだその少年は、盗み出したコンテナの意外なほどに頑丈な錠前を開けようとマイナスドライバー

          「惑星降下猟兵3192~獣亜人と恋に落ちた少年の物語」第2話

          【ご挨拶】絹腰さむゑと申します。格好はつきませんが、note始めてまいります。

          はじめにごあいさつ  お初にお目にかかります。  絹腰さむゑ(きぬごしさむえ)と申します。  生まれ育ちはかつての屯田────限界集落田舎町。  言われた気がした質実剛健。思い立ったが吉日放浪。  酸いも甘いも噛み分けて、いまや無味無臭の人生を歩んでおります。  夢は物書き。何か小説など書いてみたいと、思い焦がれております。  ・・・さて、ここではさも気取った物言いを心がけておりますが、あたしにはそういう学も何もありません。ただ何となく、自分の聞き心地の良い言葉をそれらし

          【ご挨拶】絹腰さむゑと申します。格好はつきませんが、note始めてまいります。