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137夜  My Beautiful Dark Twisted Fantasy / KanYe West

ここのところ古いプログレをかけながら仕事をしていたので、違うジャンルの新しいものを、と思って選曲したのがカニエ・ウエストでした。

新しいモノを選んだつもりでしたが、10年以上も前のアルバムなのですね。
しかも3曲目の「POWER」という曲でサンプリングされているのは、キング・クリムゾンの「21世紀の精神異常者」で、どこまでもプログレから逃れられず(笑)。。。
でも、これはインパクトのあるサンプリングでした。

好きな人には「今さら何を」と言われそうですが、歴史的な名盤です。

このアルバムが発表された前年、彼はビデオ・ミュージック・アワードで、テイラー・スイフトのスピーチに乱入して大きな非難を浴びました。(これは本当にダメでした。)
その逆風の中で、ダメな自分さえも題材にしてクリエイティビティを発揮してできたのがこのアルバムです。

9曲目の「Runaway」では、この汚い歌詞がどうしてこんなに美しい曲になるのかと信じられない気持ちになります。
単音で奏でられる切ないピアノの裏で響く不穏な通奏低音。ひどい男の物語が語られ、後半ではノイジーなギターが加わってゆきながら逆にメロディの情感は高まってゆきます。
まさに My Beautiful Dark Twisted Fantasy というリアルを感じます。
短編映画のようなプロモーション・ビデオの中盤、この曲に合わせて踊るバレエダンサーのシーンは後世に残したい美しさです。(Youtubeで観ることができます。)

11曲目「Blame Gmae」の歌詞は、SNSの普及でさらに重みを増し、「Who will survive in America?」と歌われる曲でアルバムは幕を下ろします。

ロック好きのシニア世代には、ヒップ・ホップ系のアーティストを毛嫌いして、RUN D.M.C.の「Walk This Way」で思考停止している方もいますが、そんな人でも、このアルバムは騙されたと思って聴いて損はしないでしょう。
また、発売当時は子供だった今の若いリスナーにも、ここに漲るエネルギーとクリエイティビティを感じてもらえたらと思います。

音楽好きで、このアルバムに出会わないまま死ぬのは惜しいかもですよ。