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123夜 Behaviour / Pet Shop Boys

80年代も半ばになってくると、いわゆるエレ・ポップもヒットの方程式のようなものが分かってくる反面、音としての先進性は失われてきました。
そんな中、なんだか無邪気にエレ・ポップのど真ん中を突いてヒットしたのがペット・ショップ・ボーイズです。

バンドやメンバーについて詳しく知らないのですが、あまり戦略的ではなく、純粋にこういう音に触れて育った人が、「これ面白くない?」くらいのフットワークで演っている感じがしていました。
なので、あの頃の私は正直言って重要視していませんでした。

でも、曲が良いのです。
ポップ・センスがあって、音選びも洗練されています。
革新性や芸術性については置いておくとして、この軽やかさは稀有なものを感じます。
ワム!やカルチャークラブやスタイル・カウンシルなどは、ソウル・ミュージックの要素が入ることによって、表層的ではない深みを感じられましたが、彼らはどこまでもポップです。
スタンダードナンバーだろうが、大物ロック・バンドの曲だろうが、ディスコでかかるようなアレンジにしてしまいます。
きっと、不遜なわけでも売るための戦略でもなく、彼らにとっては普通のことだったのでしょう。

で、選曲したのは80年代のシングル・ヒットの入ったアルバムでは無く、地味な90年のアルバムです。
前回のデペッシュ・モードと同じ年のエレ・ポップ作品ですが、趣は随分と異なっています。
このアルバムには以前のようなヒット曲こそありませんが、メロディの優しい、居心地の良い曲が詰まっています。
売れた後、人気に陰りが見えている時期に、こうした肩の力が抜けた良曲をちりばめたアルバムを作れるということに驚かされます。
生き方のスタンスがフラットなのでしょうか。羨ましい感性です。

ペット・ショップ・ボーイズも、当時、過小評価してしまっていたグループです。
ポップ・ミュージックを作るのは、簡単なようでいて難しいものです。
彼らには、そのセンスが感じられます。
知らないのはもったいない、隠れた名盤です。