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118夜 Dance / Gary Numan

ライブの映像などは観たことがありません。
数少ない写真などからの印象は、「ブレードランナー」のレプリカントなのかと思わせるような、非人間的で妖しいものでした。
もちろん、クラフトワークなどの先人はありましたが、彼の方が良い意味で人造人間の哀しみを背負っているように感じられたのです。

彼がソロでデビューする前に活動していたバンド、TUBEWAY ARMY に「Replicas」というアルバムがありました。
このバンドは、70年代後期に活動していたのですが、80年代のエレ・ポップとは毛色の違うカッコ良さや危険な香りがありました。
このバンドは、またどこかで振り返るとしましょう。

ゲーリー・ニューマンのアルバムを選ぶとすれば、普通ならファースト「The Pleasure Principle」か、セカンド「Telekon」だと思います。
シンセサイザーによるサウンドと感情を排したヴォーカルによる無機質な音楽は、近未来的な魅力があり、シングル・ヒットも生まれました。
しかし、ムーブメントはすぐに移り変わり、エレ・ポップの主流は、恋愛がテーマの踊れて健康的な音楽になってゆきます。
今夜、私がセレクトしたのは、彼の人気が陰った3作目です。

まず、ジャケットの写真がいただけません。ロボットからレプリカントに進化したと思ったら、これでは質の悪いマネキンです。
音楽は暗く内省的です。これはトレンドと逆行しています。
しかし、このアルバムは、いわゆるエレ・ポップというカテゴリーとは関係なく、聴く価値があると思えます。

同じ頃に「錻力の太鼓」をリリースした ジャパン の影響が強く感じられるのは、実際に ミック・カーンのフレットレス・ベースが鳴りまくっているせいでしょう。なんだか歌い方までディヴィッド・シルビアンに寄せた感じに聴こえてきます。
私は ジャパン の大ファンなのですが、ジャパンが好きでも、このアルバムを知らない方は多いような気がします。ミック・カーンのクセがすごいベースが好きな方には、お勧めです。

コレと言った名曲があるわけではありませんし、革新的なサウンドを生み出したわけではありませんので、音楽史的には重要な作品では無いのでしょう。
それでも、トレンドに背を向けて我が道を行く、潔いアルバムです。
ジャケットさえ良ければ・・・。