人はなぜセプテンバーを歌う
なぜ人は「９月」を歌うのか。
いつかリサーチしようと思いながら、きょうついに時が訪れた。
そして、衝撃の事実を知ることになる…
きょう義母が子どもたちを映画に連れて行ってくれるというので、私は「遊ぶがよろしい」との自分の声に従い、カラオケボックスへ行くことにした。目的は一つ。
「なぜ９月を歌った歌が多いのか」を探ること。
太田裕美や竹内まりや、海外ではEarth,Wind&Fire まで、「セプテンバー」を歌っている。きっと１年の中でセプテンバーを歌った歌が一番多く、それには何か理由があるはず…私はいつかこの理由を探ってやろうと、長年野望を抱いていたのだ。
自宅から最も近いカラオケボックスに歩いていった。家族連れでごった返す受付。「３時間待ちです」。世の中に家族との休日をカラオケで過ごす人がこんなに多いことを初めて知った。幸い生活圏にあと２軒カラオケボックスがある。バスで２駅の店へ。１人で入るのは初めてで、そうか、お1人様加算があるのか…と思いながら受付を済ませ、フリードリンクのカルピスソーダを注いだ。ビール飲みたい…いや、きょうは遊びではない、任務なのだ、と自制心を保ち、部屋に入った。
はやる気持ちを抑え、リモコンに「くがつ」と入力する。すると37件ヒットした。
外国曲を除いて36件と記録する。よしよし。さあ、他の月はどうなんだい！
「いちがつ」５件。話にならない。１月よ、さようなら。
「にがつ」21件。よしよし。おっと！「２月のセプテンバー」という曲がある！セプテンバー最強だな！
（ちなみに、同じ歌手が歌っている同じ曲はダブりとしてノーカウント、外国曲も除き、カバー曲はそのまま加算した）
「さんがつ」うわー…37件！！！
「くがつ」を超えてしまった…仮説崩壊か。
いやいや、あんなにセプテンバーセプテンバー言ってたのに、「せぷてんばー」で検索してなかった！やり直し！
「せぷてんばー」38件！！！「くがつ」36件と合計74件！
「まーち」は13件で「さんがつ」37件と計50件！！！
勝った、勝ったよ…９月圧勝！
「しがつ」42件！
また超えてきたー！いや、私にはセプテンバーがついている。
「えいぷりる」。どうだーっ。17件。計59件！
おっしゃーーー。
「ごがつ」43件。ちっ、他の月も手ごわいな…
「めい」（名前を歌っている可能性もあり、歌詞で５月のことかどうかを判断）13件。計56件。よし。
「ろくがつ」48件。まだ来るか…
「じゅーん」9件。少なっ！計57件。
「しちがつ」27件、「じゅらい」６件。
余裕じゃん！このまま逃げ切れるんじゃないの？
そして運命の時がやってきた…
「はちがつ」97件！！！！！
９月敗れたーーーーー！！！！！ガラガラガラ…（仮説が崩壊する音）。
ま、まさか、９月最強説を長年信じていたのに…
「おーがすと」はたった３件、なのに、なのに…まさかの計100件！！！
私の野望はここでついえたのであった…
だからといって10月11月12月をないがしろにするわけにはいかない。
「じゅうがつ」17件、「おくとーばー」６件 計23件
「じゅういちがつ」９件、「のーべんばー」11件 計20件
「じゅうにがつ」51件、「でぃせんばー/でぃっせんばー」18件 計69件
「〇月」で始まる日本語の歌で一番多いのは８月、９月は2位、という結果になったとさ。
おしまい。
というわけにもいかない。
長年執着していたセプテンバーとの関係に区切りをつけて前に進もう。
さて、セプテンバーにはどんなことが歌われているのか。
セプテンバーが最も多いと思っていた私の仮説は、恋して遊んで経験を積んだ夏が終わり、あなたも去っていく…秋風めいた感傷を歌いたくなる、というものだった。
ランダムにキーワードを拾うと、
憂い
消えゆく
夏ももう終わり
置き去り
さよなら
雨
寂しい
静けさ
秋風
など。やはり物悲しい感じがする。
中には、「楽しい夏は終わったけど、前を向いて歩きだそう」みたいな歌もあった。
体と感情を思いっきり動かした後にやってくる「季節の変わり目」には、多くの人が立ち止まり、詩を書き、曲を作り、歌って経験を味わい、次の季節へ進む心持ちをセットする、ということなのかもしれない。
１位の8月（夏休み）、3位の12月（クリスマス、年末）、4位の4月（出会い、新生活）は「動」の季節、と分類できるだろうか。そんな中で9月が3位に入っているのは、やはり特別に思える。
9月のもう一つの特徴は、他の月に比べて英語で「セプテンバー」と歌われる歌が圧倒的に多いことだ。「セプテンバー」は37件で、2位の「エイプリル」17件を大きく引き離している。竹内まりやの印象的なサビのように、他の季節よりもリズムがよいことがあるかもしれない。
いまは8月真っ盛り。人の動きとともに言葉も湧き出る季節。
それが終わればセプテンバーがやってくる。人はどんな感情を味わい、言葉にするのだろう。私はどんな言葉を選ぶのだろう。
秋が楽しみになってきた。
〈注〉
今回検索に使用したのは数あるカラオケの１システムであり、検索語は冒頭のみ一致する方式で、タイトルの中に月名が入っている曲を含んでいません。また、本当にその季節を歌っているかどうかは筆者の主観によります。他のカラオケシステム、より客観的な抽出方法など、今後の研究成果が待たれます。
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