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ロシアのインターネット事情

上記画像は、Beeline の4G普及度マップ。

あまり知られていないが、ロシアは優秀なIT人材の宝庫であり、IT大国である。
実際、ロシア国内ではソ連時代から技術系人材の育成が盛んで、質・量ともに世界屈指のレベルを誇る。
ITエンジニアの出身国と言えばインドやアメリカを思い浮かべがちだが、ソフトウェア開発者/プログラマーの出身国ランキングで2022年、ロシアは世界第2位である。
では実際、ロシアのインターネット事情について詳しく見てみよう。
 
ロシア国内のインターネット普及率(直近4年間の推移;ユーザー数、カッコ内は全人口比)
2023年1月:127,600,000人(88.2%)
2022年1月:129,800,000人(89.0%)
2021年1月:124,000,000人(85.0%)
2020年1月:118,000,000人(81.0%)
※Datareportal.com、政府ウェブサイトより。
 
1.家庭用インターネット(ホームインターネット)
・有線接続で、インターネットサービスプロバイダー(Internet Service Provider;以下、ISP)を介して使用。
・通常、都市部では誰でも簡単に接続が可能。(→居室数の多い集合住宅では、予めISPが参入しており、すでに通信用の配線設備が整っている。接続作業は通常、無料である。)
・Wi-Fiルーターを置けば、スマートフォンやタブレットからの接続も可能。
・ISPとのサブスクリプション(定期購読)契約で、有料テレビチャンネルやオンライン映画サービスなどが利用できる。(ロシアでは、テレビ塔経由の無料デジタル放送は20チャンネルあるが、ISP経由では提供されるチャンネル数が200~300と格段に増える。また日本同様、ウイルス対策ソフトの加入、クラウドストレージ、ゲームプラットフォームでのゲームボーナスといったオプションサービスもある。)
・同じ都市でも契約するISPによって利用料金が異なる。(最大30%程の差はよく見られるが、都市によってその差はさらに大きくなる。)

利点
・光ファイバーケーブル(固定回線)を通じて接続されるため、最高速のデータ転送が可能。
★通信速度の平均比較
2023年1月:74.92 Mbps(固定回線)VS 21.73 Mbps(携帯電話回線)
2022年1月:61.65 Mbps(固定回線)VS 17.84 Mbps(携帯電話回線)
※Datareportal.com(Ookla社の「インターネット速度テスト」)より。
・風や雪などの悪天候に強い。
・通信量に制限がない。
 
欠点
・有線依存である。
・都市郊外や地方の小さな村/集落では、元々の配線がなく設備工事が必要となるため、接続費用が高額になる場合がある。
 
通信速度
全体平均
74.92 Mbps(2023年1月時点)
61.65 Mbps(2022年1月時点)
※ただし、ISP加入では100~1000 Mbpsとプランにより異なる。
 
ISP加入時の利用料金
月額400~1000ルーブル(プランにより異なる;日本円で約700円~1700円;1ルーブル=1.7円で換算)
 
ISP普及率(2022年春時点)
全体ユーザー数:348,000,000人(61%)
1つの都市では2~5社のISPが競合することが多い。
 
主なISPと利用者状況(2022年春時点)
1.Ростелеком(Rostelecom;ソ連時代の通信会社をベースとした国営企業で、国内最大手)35%
2.МТС(MTS)12%
3.ЭР-Телеком(ER-Telecom、商標名Дом.ru/Dom.ru)11%
4.ВымпелКом(VimpelCom、商標名Билайн/Beeline)9%
5.その他33%
※ТМТ Консалтинг(TMT Consulting)より。
 
2.携帯電話インターネット(モバイルインターネット)
・携帯電話網を通じて提供されるインターネット接続サービス(モバイルネットワーク)である。
・携帯電話事業者が携帯電話に付随するサービスとして提供する。
・インターネット通信量はギガバイト単位で提供される。(一般的な通信量は10~60ギガ/月だが、サービスプランにより料金は異なる。)
・追加のオプションサービス(音楽配信、オンライン映画館、ライブラリ、ゲームプラットフォームでのボーナスなど)をサブスクリプションで利用できる。
・一つの都市で4事業者以上が競合することが多い。
 
利点:
・携帯電話の電波塔が設置されている場所であればどこでも利用ができる(最大の利点)。
・同じ携帯電話会社同士での通話が無制限かつ無料になる場合が多い。
・一部のメッセンジャーやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)、YouTubeは利用無制限である。
・ロシア国民のほとんどが4Gインターネットにアクセスできる(一部の都市では5Gも利用可能)。
・携帯電話会社がISP事業も行っている場合に、携帯電話と家庭用インターネットの2つを同じ事業者で契約すると割安価格になる。
 
欠点:
・有線インターネットに比べて、通信速度が遅い。
・有線インターネットに比べて、データ受信量が制限される。
・街/町から遠く離れた小さな村では、集落間の距離が大きく、インターネットの速度がさらに低下することがある。
・SMS(ショートメッセージサービス)の利用や他社番号への無料通話には制限がある。
 
通信速度
全体平均
21.73 Mbps(2023年1月時点)
17.84 Mbps(2022年1月時点)
 
携帯電話契約時の利用料金
月額400~1000ルーブル(日本円で約700円~1700円;1ルーブル=1.7円で換算)。
※一般的な利用料金は有線インターネットとほぼ同じ。
 
SIMカード普及率(2022年末時点)
ユーザー数:256,000,000人(175%)
多くの人は通話料金を安くするため、異なる携帯キャリアを利用して複数のSIMカードを保有。
※ТМТ Консалтинг(TMT Consulting)より。
 
主な携帯電話会社と利用者状況(2022年末時点)
1.МТС(MTS)80,000,000人(31%)
2.МегаФон(MegaFon)75,300,000人(29%)
3.Билайн(Beeline)44,800,000人(18%)
4.Tele2-公開情報なし(47,500,000人;2021年末時点)(19%)
5.その他(3%)
※ロシアの新聞"Ведомости"ウェブサイト、ТМТ Консалтинг(TMT Consulting)より。
※Tele2は元々スウェーデンの企業で、2003年にTele2 Russiaとして設立されたが、2013年にРостелеком(Rostelecom)と合併し、2020年以降はРостелеком(Rostelecom)の子会社である。
 
また上記の大手4社は、M2M(Machine to Machine;ネットワークに接続された機器同士が直接的に通信し、データの送受信や機器の自動制御を行う技術)向けのSIMカードでも約40,000,000枚を供給している(M2Mのサービス市場で83%を占める)。
大手4社の内訳
1. МегаФон(MegaFon)43%
2. МТС(MTS)40%
3. Билайн(Beeline)14%
4. Tele2 3%
※iKS-Consultingより。
 
ただし、新聞"Ведомости"によると、公開されているSIMカードユーザーのうち、約15%は端末で使用されている。
M2M接続の内訳
国営企業13%
一般企業87%
※TelecomDailyより。
 
参考までに、M2M接続で最も需要の大きい分野は以下である。
1. エネルギー、住宅・共同住宅サービス37%
2. 工業16%
3. 交通機関15%(位置情報の追跡、センサーなど)
4. 不動産13%(スマートハウス機器など)
5. 貿易/小売業11%(支払い端末など)
6. 金融6%(ATMなど)
7. その他2%
 
主な携帯電話会社別通信速度(2022年2月時点)
1. МегаФон(MegaFon)33.2 Mbps
2. МТС(MTS)19.2 Mbps
3. Билайн(Beeline)18.7 Mbps
4. Tele2 14,2 Mbps
※ロシアの情報エージェンシーTelecomDailyウェブサイトより。
 
移動体通信システム技術(3G/LTE~4G、4G+、5G)
3G(LTE)
ほとんどの地域で利用可能。
ただし、現在は4Gが主流。大都市部では2025年まで、地方では2027年まで継続予定。
4G
ほとんどの地域で利用可能。
4G+
МегаФон(MegaFon)のマーケティング戦略による表示で、LTE-A(LTE Advanced)のこと。2014年にモスクワでサービス開始。現在では、多くの地域で利用可能。
5G
一部の大都市で利用可能。
※ただし、ロシアの北部地域(シベリア地方)は、これらの通信技術は範囲対象外。極寒地域のため、居住者が極端に少ないことが理由。
 
3.その他のインターネット
衛星インターネット
人口の少ない地域(例えば、シベリアなどロシアの北部地域)では、そもそもネット接続のための配線がなく携帯の電波も届かない。
このような地域では、一部のISPが衛星インターネットサービスを提供している。(ただし、衛星放送受信アンテナの設置が必要となる。)
このタイプは費用が高く速度も遅い。
 
無料Wi-Fi
都市部では、Wi-Fiによる無料インターネット接続が可能なエリアがある。商業施設が利用客にサービスとして提供している(例えば、ショップやカフェ、フィットネスクラブなど)。

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