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毎日来る郵便屋さん

まだかな…まだかな…と首を長くして郵便屋さんを待っている子供がいる。
「あっ、きた!」
一軒ずつ家のポストへ郵便物を入れ、待っている子供の家にだんだんと近づいてくる。
「つぎは、ぼくの家だ」
その子がワクワクしながら待っていた郵便物とは、子供向け知育教材。
「コレを待っていたの? はい、お届け物です」
「わーい、お母さん、きたよ! ゆうびんやさん、ありがとう」

私の仕事は、郵便配達をしている。
この頃は、SNSの普及で封書の手紙やハガキの郵便が無くなってきている。その反対にダイレクトメールや通販のカタログが目立つようになった。その他に小さな荷物も運ぶようになり、郵便配達業務も昔と違って様変わりをしてきている。
そんな折に、会社全体で営業の強化が広がりつつある。
昔ほど、”目標 〇〇〇万枚!”
なんていうスローガンは無くなり、客取り合戦や自腹営業も無くなった。
昔に比べれば気が楽になったと言えばそうなんだが、個人の意識改革で仕事をするようになったと思う。やはり会社で働いている以上、利益が出なければお給料は無いと思わなくてはならない。
会社にぶら下がっているお荷物には、なりたくないと思った。

新人の頃、「配達の時間がかかりすぎる」と叱られたことがあった。サボっていたわけではない。配達をしながら、一軒一軒様子を見ていた。
書留があれば、お客様と冗談交じりの話や世間話をした。一見、遊んでいるようにも見えるが私は情報を仕入れていたのだ。ただ配達をしているだけの仕事では、情報を得られない。このお宅には何が必要なのかを考え、世間話をする。だから、会社に戻るまで時間がかかってしまうのだった。

しかし、私はそのスタイルを貫いて良かったと、今では思う。
”毎日来る 郵便屋さん”
これが私の代名詞。この地域の人達は私のことをこう呼ぶ。
夏が来れば、「お中元、頼むね」
年末が近づけば、「お歳暮と年賀はがき頼むよ」
入学お祝い、出産お祝い、お見舞いの品…いろいろと声をかけてもらえるようになった。
”その声を私にかけてもらえている”ということを誇らしく思う。
私のことを信用してもらって、お金を払って預けてくれる。本当に信用されなければ、できない仕事だ。

自分を信じてやってきた営業スタイルが、今年表彰された。
毎月5〜10件の成約を途絶えず続けてきた。時には一人のお客様から100件頼まれたこともあった。それが今年で丸10年になる。
どのような営業でも、人は人を信用しない限り品物を買ってはくれない。
その信用を自分にも向けて、「絶対、私はできる」と信じて貫くことだ。
やはり、地道にコツコツと毎日やり続けることこそが、一番の近道。

営業とは、どれだけ笑顔でコミュニケーションを取ったか、どれだけ“ありがとう”の気持ちを伝えられたか、で決まると私は思う。

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