佐宮圭

ライター歴およそ30年で、サイエンスとビジネスが得意分野。作家としては、小説とノンフィ…

佐宮圭

ライター歴およそ30年で、サイエンスとビジネスが得意分野。作家としては、小説とノンフィクションの本を書いている。数年前から、新人ライターさんに相談される機会が増え、体験談を交えて話したら意外と喜んでもらえたので、個人的な意見や仕事の思い出などをnoteに書いてみることにした。

最近の記事

7月1日(月)からエッセイの連載がスタート!

 第17回小学館ノンフィクション大賞の優秀賞受賞作品として2011年に発行された天才琵琶師・鶴田錦史の伝記『さわり』に関するエッセイ(全11話)を7月1日(月)から毎週、月、水、金のペースでリリースします。  鶴田錦史の伝記執筆を依頼された2000年の取材開始にもかかわらず、どうして『さわり』は出版までに11年もかかってしまったのか。実際に本が出版されるまでには、どんなプロセスがあり、どんなことに気をつけなければならないのか。  「本を出したい!」と思う方のヒントになり、少し

    • カーペンターズがくれた“我慢のご褒美”  後編

      「カレンと一緒に日本に来れなくて寂しくないですか」  もしかしたら「Yes」か「No」だけでも答えてくれるかもしれない――そんな一縷の望みに賭けるしかなかった。  もしダメでも、カレンについての質問をぶつけた瞬間、リチャードがどんな表情を浮かべて、どんな様子で席を立ち、どんな雰囲気でその場を去るのか、脳裏に焼き付けて克明にレポートすることで記事をしめるしかない――そう思っていた。  私はゴクリと生唾を飲み、覚悟を決めて、リチャードの目を真っすぐに見つめる。  通訳者に遮断

      • カーペンターズがくれた“我慢のご褒美”  中編

        「それじゃ意味ないだろ? リチャードからカレンについてのコメントを取ってきてくれ。もし取れなかったら、ほかのグラビアに差し替えるから」  カレンについてリチャード自身にしゃべってもらうことなんて、できるはずなかった。  だからといって、貴重な日本滞在中のスケジュールのなかから3時間近くももらっておきながら記事にしないなんて、そんなこともできるはずなかった。  ついさっきまで幸運にニヤついていた私の顔はすっかり青ざめ強張っていた。  取材当日、集合場所で簡単な挨拶をすませた

        • カーペンターズがくれた“我慢のご褒美”  前編

           取材には相手との「我慢くらべ」のような一面がある。  こちらの「聞きたいこと」が相手の「話したくないこと」なら尚更だ。  そんなとき、取材する側がギリギリまで我慢すれば取材される側もこちらの誠意に応えてくれる。  「カーペンターズ」のリチャード・カーペンターにインタビューしたときがそうだった。 「来日するリチャード・カーペンターをグラビア・ページで取り上げるから、取材しないか」  そう編集者から声をかけられたとき、私は小躍りするほど喜んだ。  1970年にリリースされた「

        7月1日(月)からエッセイの連載がスタート!