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ホンネシリーズ 勉強しろという親 勉強しない親

 基本的に親は子どもに勉強しろと命令すべきではありません。

 命令は自発性を失わせるコミュニケーションです。

 学びとは人間を運命の奴隷から解放し自由と選択肢を増やすことです。強制的に勉強させることは隷属状態を維持することです。これは駄目です。本来の学びには「命令」ではなく「知的好奇心と自発性」が親和的です。

 したがって勉強しろと言うのは誤りです。

義務教育だから強制的に勉強させるわけではない

 義務教育の義務とは、こどもが自発的に受けたい場合に親が教育を与えないといけないというものです。つまり義務教育の義務は親に課せられていると解釈できます。こどもは教育を受ける権利を持っています。そのこどもの権利は親であっても剥奪できないのです。

 これは前段で述べたことと矛盾しません。こどもは自身の未来のために、また、その知的好奇心を満足させるために自発的に勉強する権利を持っているのです。強制的に勉強させられる義務は負っていません。

 もし親がこどもに勉強を強制しているとしたらそれは誤りです。自分のこどもとはいえ、親が別の人間に何かの作業に強制的に隷属させる権利は持っていません。「こどもの未来のために」というお題目を親は用意しているかもしれませんが、動機さえよければ何をしてもよいということにはなりません。「未来のために奴隷を作る」「国のために命を捧げさせる」「社会のためにキャリアを捨てさせる」これらは許されません。動機よければ全てよし…なわけないですよね。「あなた自身のためだから、これをしなさい」って言ったらダメなのです。

 前述した通り、自発性が求められる勉強を強制しているという点でも誤りです。

 つまり義務教育の国において親は子どもに勉強を強制するのは誤りなのです。親が親の義務をスルーして義務教育だからと言って義務を子どもに押し付けるのは親の責任逃れであり強く非難されるべき態度です。

 ではどうすればよいのか。

 それは推奨すること、応援すること、環境を整えることです。もう少し具体的に言うと次の通りです。

推奨、応援、環境を整える

推奨

 推奨すること。それは勉強すると何が得られるのか、しないと何が得られないのか説明することです。また、いろいろな選択肢を提示した上でそのなかで勉強することを推すことです。
 ちなみに選択肢は勉強するしないの二者択一ではありません。

 学校が用意している勉強の中でもいろいろな科目がありますし、他の勉強も世の中にたくさんあります。言語で言えば、別に日本語と英語だけではないですよね。仮に日本語だとしても、ひらがな、カタカナ、漢字、方言、古語、漢語、大和言葉とか、文法とか、詩歌とか、小説、短歌、JPOPの歌詞、新聞の言葉、ビジネス文書、書道、漢字の成り立ち、無数に選択肢が存在しています。

 また勉強の仕方も様々あります。通学、通信、研究、試験勉強、ITを使った勉強、実社会における勉強。それぞれの方法についてメリットとデメリットを説明してあげてください。

 勉強という概念も幅広いです。勉強の目的、哲学、楽しさ、親自身の経歴もわかりやすく子どもに伝えてあげてください。

 勉強の中にも多くの選択肢があります。また、勉強以外にも多くの道があります。

 ちなみに勉強するとこどもの将来の選択肢が増えるから勉強させると言う人がいますが、そもそも無数の選択肢が存在する中で勉強を選ぶ(さらにいまの国の標準的な学校教育を選ぶ)と言うことは選択肢を狭めているのです。「子どもの将来の選択肢が増えるように勉強をやらせている」という人がいますがカッコつけかもしれません(そうでないかもしれません)選択肢を狭めていることにどれだけの人が気づいているでしょうか。あたかも運命の奴隷がこどもを奴隷としての道に進ませようとしているかのようです(そうでないケースももちろんあるでしょう)お為ごかしになってないか自省が必要です。

 親がすべきこと、それは世の中に無数に存在する対象の中から推せるものをできるだけ多く選び、その価値を見出だしてこどもが理解できる言葉で説明してあげることです。

 「そうは言っても何を推せばいいのか分からないし、詳しく説明できるほど理解してない。だから学校が用意している科目だけを推す」というのはやめてください。不勉強です。義務教育を終えてから何年経ったのですか?自発的に学べる機会はいくらでもあったはずです。もしできないというのであれば、あなたは今から大急ぎで世の中にある無数の選択肢を勉強する必要があります。

 推奨するには知るだけではなく、比較検討し、その上であなたならではの意思を込める必要があります。さらにそれを子どもが理解できるレベルで説明しないと意味がありません。そうしてはじめて推奨することができます。

 この推奨は取り返しがつきません。あなたがいま何を推すかその選択の責任は重いのです。しかしそれだけに重要で価値のある仕事です

応援

 応援すること。まず、こどもが頑張ろうとしているときに絶対に邪魔をしないでください。人は集中しているときに話しかけられると注意力が散漫となります。
 こどもが勉強に臨んでいるときは邪魔にならないように細心の注意を払いながら心強くなるような暖かい言葉をかけてあげてください。もしくは、何も言わないことのほうがいい場合もあります。ただし全般的にこどもの勉強をポジティブに思っているという態度を常に見せ続けるよう努力してください。
 よりよく応援をするためにはこれも勉強が必要です。脳、心理学と集中力の基礎と応用実践を学んでください。コーチングを勉強するのもいいでしょう。

環境を整えること

 勉強しやすい部屋、書籍、図鑑、絵本、学習教材、自然、社会に触れやすい環境を用意してください。別にすべてをお金で買う必要はありません。無料で借りられる図書館というものがあります。自然や社会は無料でただそのままの形で世の中に存在しています。部屋も工夫次第で如何様にもなります。

 学ぶというのは真似ることだという言葉もあります。最も効く環境の一つは勉強する親の姿です。
 生涯学習、リスキリング、学び直しという流行り言葉もあります。また日本の成人は諸外国の大人に比べて勉強量が少ないという調査結果もあります。世の中の潮流としては学ぶことが推されている状況です。周りの成人が勉強しない日本においては逆に差をつけるチャンスです。

 こどもの未来のために努力を惜しむ親がどこにいるでしょうか。

 親のみなさんは、すぐにでも勉強を始めるべきです。あなたの親からもらった大切な身体と頭脳を無駄にしてはいませんか?こどもの髪の色や服装にいちゃもんをつけている場合ではありません。見かけよりも中身が重要です。あなたは親からもらった大切な頭脳を磨き続けられていますか?

親からもらった大切な身体

 大人になってしまって頭脳が衰えているので新しく学ぶことができないというのは言い訳です。ある脳科学者は何歳になっても脳は成長を続けると言います。

 勉強の時間がとれないというのもまた言い訳です。こどもだって友人と交流したり学校の時間割に縛られたり大人の都合でいろいろな所に連れ回されたり(仮にそれが楽しみを目的としたドライブや旅行であったとしても)自由時間は限られています。当然勉強以外に子供らしく遊ぶ時間も大量に必要です。親は子どもと違って時間を上手く使う経験を積み重ねてきているので勉強する機会を作る能力を持っているはずです。

 親はこどもよりもたくさんの経験やリソースを持っています。また誘惑に屈しない強い心を持っているはずです。つまり圧倒的に子どもよりも勉強しやすい立場にいるのです。だからこそ勉強のスピードと質、それと楽しさを子どもに見せてあげてください。大学に入ったり、通信授業を受けたり、専門的な研究を続けたり、研究発表するのもいいでしょう。

やってみせ言って聞かせてさせてみせほめてやらねば人は動かじ。話し合い耳を傾け承認し任せてやらねば人は育たず。やっている姿を感謝で見守って信頼せねば人は実らず。
山本五十六

 昔に比べると洗濯や掃除が自動化され大人は少しずつ可処分時間が増えてきています。さらにリモートワークで通勤時間も減ってきて、無料あるいは安価な映像教材もテキストも豊富にあります。過去と比較してもっとも一番勉強できる時代にあなたは生きています。

 あなたの頭脳はあなたの親から授かった大切な頭脳です。それを無駄に遊ばせていてはいけません。洋服や持ち物、娯楽といった表面的なモノにこだわるのはいい加減やめましょう。親は義務を背負っていますが、同時に子どもよりも恵まれた立場に立っています。強くて恵まれているからこそ矢面に立つのです。

 親が背中を見せて、子どもを導き、環境を整え、支援する。まずこれをやること、そのために学ぶことが最初のステップです。今時の親は堕落した。もう駄目だと先人に落胆されないよう、あなたがまず第一歩を踏み出して勉強を始めましょう。あなたはいま人類史上最も勉強しやすい時代を生きているのです。

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