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『メイキング・オブ・モータウン』何が「時代」を変えるのか?

9/30 角川シネマ有楽町

ジャクソン5やスティービーワンダーの事は知っていても、モータウンの事は何も知らなかった。こういう何も知らない世界を知る為に僕はドキュメンタリーを観に行く。

モータウン創始者ベリー・ゴーディの思想がとにかく素晴らしい。儲けるのに「歳」も「人種」も「性的嗜好」も関係ない。重要なのは実力があるかどうかだけ。正しく平等な考えだ。

最初はウケるためのポップスを量産していた。しかし、ヒットしていくと自然の摂理として段々と社会に対して影響力を持っていくと同時に、社会とコミットしていかなければならなくなっていく。大衆的になるとは、社会的になるということであり、社会的になるということは、芸術的になるということだ。よく「娯楽か芸術か」みたいな論争があるが、これを観ると「娯楽も芸術だし芸術も娯楽じゃん」となる。出発点は違っても、最終的に行き着く先は全部同じだ。

いい例がマービン・ゲイの「what`s going on」だ。ベトナム戦争反対運動で揺れるアメリカ内でないと生まれることのなかった、大衆的かつ社会的かつ芸術的なポップスの最高峰。社会的メッセージ性を避けてきたモータウン社は当初この楽曲の製作に反対していた。しかしベリー・ゴーディはとてつもなく柔軟な思考の持ち主だ。その楽曲の素晴らしさに気づき、自ら反省し、新たな考えを取り入れ、自分のマインドを刷新しながら成長を繰り返す。旧態依然とした態度では組織は成長しない。結果「what`s going on」はその年最高のアルバムの一つになり、モータウンの芸術音楽の一つの到達点になった。

モータウンの根底にあったのは「儲ける」という意識のみだった。しかし、その為に辿った正しいプロセスの一つ一つが、大衆を、芸術を、時代を、そしてモータウン自体を変えていった。