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-22時間の恋-

熱しやすく冷めやすい。

恋愛体質の私をそのまま形用するとそうだ。


友人に連れられて、初めて六本木のクラブに踊りに行った時のこと。

入店の時もほぼ顔パスだった友人はそのクラブの常連で、入店すると同時に知り合いの男と挨拶を交わしては、私の知らない話で盛り上がっていた。

あまり馴染めない私をその場から連れ出してくれた男が今回の話の男。

「踊りに行かへん?」

その頃、よく耳にしていた聞きなれたイントネーションで喋る彼に別の男の影を重ね、私は彼に手を引かれるがままに付いていった。

友人とは完全に別行動になり、「何もしない」と言う彼に珍しく微塵の疑いも持たずに彼の部屋に泊めてもらった。

翌日も仕事を控えていた私は、本当に軽く仮眠を取らせてもらうつもりだったし、彼も本当にそんなつもりはなかったと重ねて言う。

結局は全く眠れない結果となるのだが、「こんな彼氏いや?」と聞かれて断る理由なんて私にはなかった。

睡眠不足など気にならないほどに満たされた気分で仕事に向かい、仕事中も幸せだった。


翌日から一週間海外出張だと言う彼は、その日の夜にも私に会おうとしてくれ、私の仕事終わりに最寄り駅まで来てくれた。

駅前のお店に入り、彼が優柔不断なのを知る。

迷った挙句に食べ放題を選んだ彼に対し、数時間前までの彼への気持ちが急激に冷めていくのを私は感じていた。

元国営企業に勤める彼は、自分がどれだけ稼いでいるかを他人と比較して語った。

彼の食べ方は許容できなかった。

数時間越しの2回目で、会話の内容はお笑いだった。

お酒を飲んで顔を赤くしている彼は、同じ内容の話を繰り返し繰り返し、全く面白くなかった。

そして、食事代を割り勘にされる。


もしこの日、無理して会わなければ、彼が海外出張に行っている一週間、私は早く会いたいと彼への想いを募らせ、恋する時間を楽しむことができただろう。

いやしかし、一日たりとも無駄にすることのなかったこの恋も、きっと私の肥やしとなっているはずだ。


私に幸あれ。


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