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武士は己を知る者のために死ぬというけれど

月初め、実は誕生日でした。
2021年、2022年と毎年誕生日には夜番スタッフからの巧妙なサプライズがあり、その後にみんなでちょっとだけ飲みながらご飯を食べるのが定番の流れ。

ところが。
今年は、ない。

確かに当日とその翌日、全員フル稼働でチャンスがなかった、といえばそう。
理性はそう言うけれど、心の声は
あれ、もう3日経ったよ・・?
今年はない系?機を逸した・・?
などと執拗に畳み掛けてくるわけです。

12月末のシェフの誕生日はみんなでやった。
来月にも1人誕生日のメンバーがいて、その人の時にサプライズあったら、なんか私、自信を失いそう・・。

とか、心のざわざわは加速していく。
祝われたいということよりも、あれ?なんか・・あれ?って想像以上に寂しい。

こういう時、この気持ちを隠して引きずると良くないぞ!というのが2022年の最大の学び。

そこで、1番若手女子メンにこっそりと「ケーキ買ってきて」と囁く。
勘がいい彼女は
「誰用のケーキですか?」とバースデーケーキだと察した様子。
「私の。今日は私が私の誕生日パーティをやるんだ」
「え、ほんとですか?ボス誕生日だったんすか?」
と彼女。そうだね、君は過去2年を知らないもんね。

じゃあ、みんなで食べられるサイズのやつ買ってきてね〜とお願いしたものの、彼女が買ってきてくれるかどうかは五分五分。

本人が誕生日ケーキ買うってどうよ?
なんかボス寂しいやつだなって思われたかな
など雑念が頭をよぎりつつも、
ええい、みんなを恨むより良い!と自分に言い聞かせる。それがちょうどディナータイムの始まりどきで、一旦それぞれ仕事に集中モードに。
こうなったらあとは、何が起こるか見守って、起こることを引き受けるだけさ。

忙しさが落ち着いた頃を見計らって、バースペースのいつものデスクで書き物を始める。夜番メンバーたちは依然としていつも通りな感じ。

さすがにケーキは買ってきてもらえなかったか。まあ、それもそうだよな。忙しかったしなと半ば手放して、忘れかけ、書き物に集中していた時。

天井のファンが急に弱くなり
「あれ?停電?電圧下がった?」と2階にいるお客様を心配しつつ振り返ったら、バーにいたスタッフがニヤッと笑って、電気も消され、そこにはケーキとスタッフたちの顔がありました。

ここ2日、忙しかったからー!とワイワイ言うスタッフに囲まれ、なぜか2つあるケーキの火を吹き消して、みんなに合掌してありがとう〜ありがとう〜と言う。

一連の式次第が終わって、いつものようにプチスペシャルディナーセット(だいたいアヒルとチキンの骨つき照り焼き、プラホックソース)が運ばれてきて、それぞれにビールや赤ワインを片手に乾杯する。

そこで「スタッフみんなからです。」と包みを渡された。
触った感じから洋服と察する。

前から私にドレスを着させたいと言い続けているスタッフがこっちを見てニヤッと笑ったので、「まさかドレス…?!」と声に出したら、

「違うよ、ボス。we already know about you.」
笑顔でさらりとそう言われた。

みんなの顔を見ながら改めて包みを開けたら、出てきたのはメンズライクなダークカラーのシュッとした襟付きチェックシャツ。

あぁ、we already know about you が沁みる。

私がふんわりニュアンス服とかパステルカラーとか、あまつさえドレスとか、定番女子的スタイルを好まないことなど百も承知であると。
そういうことよね。

日頃の服の好みや立ち振る舞いを見ているスタッフたちからは、ボスは70%女性で、30%男性だと常々言われているし、自覚も十分にある。

そして、コンポントムでこのサイズ感のメンズ服見つけるのたいへんだっただろうなぁと容易に想像できる。なにせ、女子は女子であることを謳歌する服ばかりが花形の世界にはモノトーンの女性用シャツなど存在しない。

きっとメンズの店を回って、できるだけ小さいサイズを探したんだろうなぁ。

「ありがとう。準備大変じゃなかった?」ときいたらリーダーがニヤニヤ顔で、「だからシフトの入り、遅くなるって連絡したでしょう」と。

お母さんが妹の家から帰ってこないから遅くなるって言ってたあれか!

まあ、今年もまんまとやられました。
来月のリーダーの誕生日はさてどうしてやろうかな。ふふふ。

アヒルも服もケーキも、一緒に飲んだ時間も最高だったけれど、今日いちばんしあわせだったのは we already know you. の一言だ。凸凹で、規格にハマらない私を知ってくれていて、その上で一緒に働き、生きている。
その喜びたるや。

それがなによりのギフトだよ。
私たちsambor villageはともに生きるための形として、ホテルをやっている。

2022.1.20
35min


後日、チャリで少し遠くの銀行に行く途中、道の反対側にある店が目に留まる。
なんか見たことある感じ。

看板にヒゲサングラスのお兄さん

あ、ここか!
やっぱりめっちゃゴリゴリに、メンズ服のお店でした。

わざわざ探してくれて、ほんとありがとう。



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