見出し画像

勉強しなかったツケの支払い(マシュマロへの回答)


先日、マシュマロをいただきました。マシュマロというのは匿名でメッセージを送れるサービスです。

何らかの原因で画像が見えなくなったときのために文字で書いておくとこうです。

「小学校・中学校でちゃんと勉強しなかったツケ」っていつ支払いを迫られると考えていますか?

ツイートで短くお答えするのが難しいご質問だと思いましたので記事の形でお返事を書くことにしました。以下はそのお返事です。


こんにちは。ご質問ありがとうございます。ツケというもの・支払いというものをどう捉えるかによるのではないかと思います。

まず知識面について見ると、高校入試・大学入試といった大きな試験の場面が考えられます。中学1年間の内容が頭に入っていないだけでも周囲に追いつくのはけっこう大変です。たとえば「あなたはサッカーをしますか?」という文を英語に訳してもらうと "Are you play soccer?" と答える生徒は珍しくありませんが、この場合、英文法がそもそも何もわかっていない状況です。この状況で目の前の定期テストに向けた勉強をしつつ、自分に抜けているところを学んで実力をたくわえていくにはかなりの根気が必要です。当然そういう状況では定期テストの点数もよくなりませんから、内申点も低くなってしまいます。このため、入試で思うように結果が出せないことがよくあります。

その状況では定期テストの点数を上げることは当面考えず、自分の理解度を上げていくことを考えた方が結局のところ早道だと思いますが、塾でそれをやるとして、上手くいくとは限りません。勉強しても定期テストの点数が上がらない状況で本人のやる気が続くかどうか、保護者の方の理解が得られるかどうか、塾の経営者や上司の理解が得られるかどうかといった問題があります。


次に、学習スタイルや習慣の問題があります。「勉強してこなかったツケはいつ支払うことになるのか」というご質問に関し、学習スタイルや習慣の観点からお答えすると「ほとんど常に」というものになってしまいます。

小学校時点から勉強を不得手にしている生徒の場合、そもそも勉強に対して強いマイナスイメージを持っているのがむしろ普通です。「勉強したくない」気持ちが強くてそもそも勉強をスタートできないとか、スタートしてもすぐに嫌になってやめてしまうために効果が上がらないとか、「覚えるまで何度も繰り返す」経験がないのでどうすればいいかわからないとか、他人に判読できる文字を書けないとか、学校の数学で今習っていることに必要な概念を理解しても小学レベルの計算ができないために最終的に正解できないとか、記述問題で自分の考えていることを言語化できないとか、色々な課題が出てきます。

日本語を母語としていて普段の生活には困難がなくても、自分の学年の国語の教科書に書かれている文章がほとんど読めない生徒も珍しくありません。中には医療的なケアを要する生徒もいるでしょうし、そうでない生徒もいるでしょうが、教育関係者は医師ではないので診断はできません。

もちろん、勉強が好きで好きでたまらない、何時間やっていても飽きないという生徒の方が珍しく、たいていの生徒は嫌だなあと思いながら勉強しています。しかし、嫌だと思う気持ちにも程度があります。「楽しくはないが、まあ許容できる」と思いながら勉強するのと、「嫌で嫌で仕方ない。勉強時間を1秒でも短くしたい」と思いながら勉強するのとでは、成果が異なる可能性が高いでしょう。そして勉強してこなかった生徒の方が「勉強時間を1秒でも短くしたい」と思う率が高いように思われます。このため、周囲に追いつくのは想像以上に大変です。

入試などの大きな試験が一つの突破口になることもあります。入試は勉強の締切として働くため、これまで「勉強は嫌だから先延ばしにしよう」と考えてきた生徒が「入試があるから仕方ない、やるか」と考えて勉強し、実力を身につけるケースもみられます。

また高校は中学と違って学力が近い生徒が集まります。公立中学校ではいくらやっても順位が上がらず自信を失っていた生徒が「高校では頑張ればクラストップになれる」ことに気づいて自信を取り戻すケースも決して珍しくありません。なお、中高一貫校では高校入試がないでしょうから締切が少なくなり、締切効果を利用した実力アップのチャンスが減る可能性はあるかもしれません。しかし私は中高一貫校の生徒を指導した経験が乏しいのでこれ以上は申し上げられません。


「大人になってからツケを支払うことがあるか」については、私は小学生~高校生までの塾講師なので正直わかりません。ただ、現代は社会の変化が激しいので、職業生活を営むにせよそうでないにせよ、何らかの学習が必要になる場面があるはずです。その学習を進めていくにあたっては、学校で学んだこと(知識も、学習スタイルも)が影響するのではないかと思います。たとえば文章を読んで内容を頭に入れることができるかどうか、わからないことを言語化して誰かに質問できるかどうか、根気よく学習を続けることができるかどうかなどです。もっとも大人になれば動画コンテンツや資格取得予備校にアクセスできる可能性が高まりますし、学校以外で蓄積した学びの量も増えていきますから、「小学校・中学校でちゃんと勉強しなかった」影響は相対的には学生時代より小さくなるようにも思えます。


以上を現時点でのお答えとしたいと思います。

サポートいただいた分は本を買ったりご飯を食べたりするのに使わせていただきます。ありがとうございます。