見出し画像

『後ろの席の人に椅子を蹴られたらちょっとだけイラッとする』の回

学校の教室や映画館、飛行機の中などで、後ろの席の人に椅子を蹴られたら、ちょっとだけイラッとする。でもなんでこんなことでイラッとするんだろう。そんなことをちゃんと考えたときに、少しだけ理由が分かった。

まず1回目に蹴られたときには、別にイラつきはしない。「!」ってなるだけだ。この蹴られたときのイラつきは2回目から生じる。そして、そのイラつきは回数を増すごとに強くなっていく。なぜわたしは椅子を蹴ってくるやつにイラつくのか。それはやつらが学習しないからだ。普通は一度前の人の椅子を蹴ってしまったら、『あっ、当たってしまった』と思い、それからは足を引っ込めたりして再び当たらないように注意する。でも蹴るやつらはそれを学習しない。やつらは一度蹴っても何もピンとこないまま足を伸ばし続ける。『おーい! 当たってるぞ!』と言いたくなる。そして、また蹴られるぞと意識がそっちにもっていかれるストレス。これはあれだ。学習しないのではなくて、そもそも迷惑をかけている自覚がないのだ。

このジャンルのやつらは他にもいる。電車で自分の座っている席の前に立っている酔っぱらったやつら。やつらは酔っぱらっているから、吊り革を持ちながら前のめりになりカクカクしている。そんな風に前のめりになっているから、吊り革と同時に掴んでいる荷物やネクタイが、座っている人に当たる。でもやつらは酔っぱらっているから、当たっている自覚がない。そして最悪なのが、掴んでいた吊り革から手が離れて、そのままの勢いで座っている人を叩いてしまうといったものだ。わたしは一度、酔っぱらったOLがこんな風にして座っているおっちゃんの頭をバチンッと叩いたところを見たことがある。でも叩いた側のOLは酔っぱらっているから、おっちゃんを叩いてしまったことに気づかず、謝りもしない。おっちゃんはおっちゃんで、怒りたいけど相手は酔っぱらっていてロクに意識もはっきりしていないから怒れない雰囲気であり、とてもかわいそうであった。しかもこういうときは、もう一度同じことが起きる危険性がある。だからといって席を離れるのもなんだか負けたような気がするから難しい。仮におっちゃんが、また同じことが自分の身に起きるのを回避するために席を立ったら、そこにはその元凶である酔っぱらいOLが座ることになるのだろう。いや、そんなんおかしくない? おっちゃんかわいそうやん。でもそのまま座っててもおっちゃん叩かれてまうやん。めっちゃおっちゃんかわいそうやん。おっちゃんがんじからめやん。いつの間にかおっちゃんハメパターンに入ってもうてるやん。もう酔っぱらって意識が朦朧としている人は、酔いがある程度覚めるまで電車に乗るのは控えようよ。おっちゃんがかわいそうやから。がんじがらめになるから。

こんな風にして、やつらは迷惑をかけている自覚がないから、また同じように迷惑をかけてくる。一度やつらに捕まったが最後、こちらが折れるしか方法はない。ただこんなとき思うのが、迷惑をかけている自覚のないやつら同士の間で、同じようなことが起きた場合にどうなるんだろうということだ。これはいわば、ヒソカ対クロロ的な敵同士の争い。そう思うとなんだかワクワクしてきた。人の椅子を蹴るやつの後ろに、人の椅子を蹴るやつを当ててみたい。図書館の自習室でうるさいやつの隣に、うるさいやつを当ててみたい。酔っぱらってカクカクしてるやつには・・・え、どんなやつを当てたらいい? 隣にカクカクを配置してもこの2人のカクカクの前に座っている2人のおっちゃんがかわいそうになるだけだ。おいおい、このカクカクだけ無敵やんけ。対処法がないぞ。目には目を、歯には歯を、カクカクにはカクカクをが通用しない。どうしよう・・・。どうにかしておっちゃんを救いたい。

もうあれやな。カウンターをしよう。カクカクに何度も迷惑をかけられ、それでも治まる雰囲気がなかったら、カウンターを考えよう。カクカクにより顎が下がってくるであろうところに、アッパーの形で拳を置いておこう。こちらから行くのではなく、あくまでこっちがそんなつもりもなく掲げていたアッパーに、カクカクの方から当たってきたように、自然な感じで拳を置いておこう。これがクリーンヒットすれば、カクカクは膝から崩れ落ち、おっちゃんに平穏が訪れることであろう。グッドラック、おっちゃん。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?