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『ラーメンのスープと水、交互に無限にイケるときがある』の回

ラーメンってめちゃくちゃ美味しい。まあ、お店にもよりますけども。わたしは基本的にとんこつラーメンが好きで麺は細麺が好みです。麺の硬さにこだわりはなく、普通か硬めであればいいといった感じです。味玉が乗っていたら嬉しいです。半熟になった黄身がトロッと光っている、ただそれだけでなぜあんなにも美味しそうに見えるのでしょうか。味玉の中には黄身が冷たいものがたまにあり、そうすると口に入れたときにそれに気づいて少しテンションが下がるので、とりあえずスープに沈めて温めておきます。でも乗っていなければそれはそれで、わざわざトッピングで注文まではしません。あくまで乗っていたら嬉しいだけであり、マストではありません。あとは海苔も入っていてほしいです。ラーメンのスープをひたひたに吸った海苔、めちゃくちゃ美味しいです。ジューシーとすら思います。逆にもやしはいらないです。あまり食感の変化を求めていないので口の中でシャキシャキされても困ります。あと、なんだかもやしは食べるのがしんどくなります。なのでもしもやしが入っていたら、麺を楽しむために一目散に片付けてしまいます。それぐらいもやしのことを邪魔だと思っています。チャーシューは肉感があって歯応えのあるものよりも、トロトロになるまで煮込まれたもののほうが好みです。なんだか、チャーシューをすぐに食べてしまうのはもったいないような気がして、最後のほうまで取っておきます。そうです、わたしは好きな食べ物は最後まで取っておく派の人間なのです。でも最後のほうになるとお腹がいっぱいになってきて、残っているチャーシューの脂ギッシュさを考えて、ちょっと吐きそうになることがあります。見ていたらウッとなります。でも食べます。最初に食べておいたほうが美味しく感じられていただろうなと思いながらも、次に食べるときもまた最後まで取っておいてしまいます。学習というものを知らないと言うよりは、こんなことは学習するほどの失敗ではないと考えているため(後悔はしています)、いつも改善には至りません。これこそが学習しないと言うのかもしれませんが。そして調子が良い日にはペロッとラーメンを平らげてしまい、最後はスープに手をつけます。乳白色のスープをレンゲで掬い口へ運ぶと、豚骨から滲み出たであろう何かしらの成分が凝縮された旨味を感じます。わたしなんかは素人なもんですから、なんとなく豚骨は煮込めば煮込むほど美味しい出汁がでると思っているのですが、事はそう簡単ではないのでしょう。野菜などを絶妙に配合し、火加減を調節しながら何時間にもわたってアクを取り続けた上で完成されるのがとんこつスープなのでしょう。その手間隙を考えるとより一層美味しく思えてきます。しかしスープばかりを飲んでいると、さすがに喉が乾いてきます。一旦水を挟むため、水滴のついたグラスを手に取り一口飲みます。すると口の中がさっぱりするのと同時に喉も潤され、一口どころかそのままグビクビと一気に飲み干してしまいます。水が喉を通るのがいつもよりハッキリと分かります。完全に口の中がリセットされ、そうすると再びとんこつスープが飲みたくなってきました。再びレンゲでスープを掬い口に含むと、まるで本日初めて出会ったかのような新鮮さで舌の味蕾が刺激されるではありませんか。濃厚な旨味でヨダレが止まりません。またもやスープをガブガブ飲んでいると、再び喉が乾いてきます。先ほど飲み干したことで空になったグラスに水を注ぐと、この何の色も味もない水がとてつもなく美味しそうに見えて、いや、むしろ何の色も味もないからこそそう思えるのでしょう、注ぎ終わった水をまたもや一気に飲み干してしまいます。まるで生まれ変わったかのようにリフレッシュされると、三度スープが飲みたくなってきました。その次は水を、その次はスープを・・・。そんなことを繰り返していると、次第にわたしはとんこつスープが飲みたいのか、それとも本当は水が飲みたいのか、水を飲み喉の渇きを癒すためにとんこつスープを飲んでいるのかが分からなくなってきて、無限の彼方に迷い込んでしまったような気分になり、途中で怖くなってしまいます。そして気づけばラーメンの器の底が顔を出し、スープは一滴も残っておりません。最後に水を一気飲みすると、なにかをやり遂げたような謎の達成感と満足感がわたし自身を包んでいることに気がつきます。ああ、美味しかった・・・と感慨に耽り、席を立ち会計を済ませます。お店を出てしばらく歩いていると、とんこつスープと水が歩くたびにポチャポチャと胃の中で波を打っては混ざり合わずに濁っているような気がしてきて、大変気分が悪くなってきました。それに、あんなに脂の多いスープを飲み干すなんて、なんて身体に悪いことをしてしまったんだろうと後悔の念まで浮かび上がってきました。次はスープを飲み干すなんてことはしないでおこう・・・。そう思いながらも、次に食べに行ったときには再びスープと水のコンビネーションにやられてしまい飲み干してしまうであろう気配を、この時点で薄々と感じています。人生は一進一退。首を洗って待っとけ、とんこつラーメンよ。


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