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『電車の中で空いてるのに近くに立ってくるおっちゃんに緊張する』の回

人との距離感がおかしい人っている。別に心理的な距離感のことではなくて、そのまんまの意味で物理的な距離感がおかしい人。そんな人の中で特に腹が立つのが、電車の中で空いているのに近くに立ってくるおっちゃんである。

平日のお昼過ぎなどに電車に乗ると、車内は空いているため乗客の大半は席に座っており、立っている人はほとんどいない。そんな状態の車両に乗り込み、3駅ぐらいですぐに降りるときには、わざわざ席に座らずにドアの近くに立つ。本当に誰も立っていないから、ドアの近くには自分しかいない。そして次の駅。開かない側のドアを背にした状態で立ち、反対側の開く側のドアの方を眺めていると、ホームで電車に乗り込もうと待っているおっちゃんの姿が目に入る。ドアが開く。おっちゃんが電車に乗ってくる。するとおっちゃんは、なんと車両に乗り込んできてそのまま自分の目の前に立ってくるではないか。え、なんでぇ? え、頭おかしいん? なんでわざわざ目の前を選んで立ってくるん? 他にめっちゃ空いてるとこあるのに。そこに立たれたら普通に気まずいから。どこ見たらいいか分からんから。パーソナルスペースっていう概念ないんかい。っていうかそっち側も気まずいやろ。どっかにあるそういう気まずさを感じる器官がぶっ壊れてんのか? なんでこんな空いてる状態で知らんオッサンと向き合って気まずい時間を過ごさなあかんねん。

とりあえず、自分がドアを背にしているところを振り返ってドア側に向けば、オッサンと向かい合う状況からは脱することはできる。しかしそうすると、オッサンに背後を取られたことになり、それはそれで謎のプレッシャーを感じることになる。では車両は空いていることだし、自分が場所を移動すれば、オッサンから離れることが出来て万事解決となる。しかし、なんだかそれは釈然としない。なんで最初から居た自分の方が移動しなければならないのか。なぜオッサンに追い出されて場所を奪われなければならないのか。ここで移動したら、なんか負けた気がする。というちっちゃい心がめちゃくちゃに暴れ出して、逆に意地になって動けなくなる。そもそも勝ちなんてあるのか、この意味の分からない状況に。さっさと移動すればいいのに。ていうかホンマになんで目の前に立ってくんの、オッサンよ?

自分の近くに立ってくる時点で、このオッサンは気まずさなんて感じていないし、おそらく不快な思いも抱いていない。なんや、無敵か。なんでこっちだけ不利な状況やねん。オッサンからしたら勝ち戦やんけ。と思うが、そもそもオッサンは勝ちも負けも何も意識していないだろう。ただ、一方的に自分だけがオッサンとの距離を気にしている。こっちのことなんて全く気にしてないような素っ気ない態度をとるオッサン。正直悔しい。この一方通行の想い。敵とすら認めてもらえず、Out of 眼中とは。ハンターハンターでモントゥトゥユピーに虫けらのように一瞥されたシュートの気持ちが今なら分かる。おれもナックルやったら飛び出してるわ。いや今まさに自分がシュートのように相手にされてないんだけれど。

まあ何にせよ、オッサンにパーソナルスペースを侵害されながらの3駅は、ストレスで体感時間が狂ってめちゃくちゃ長く感じる。それこそシュートが舞うのを涙ながらに眺めていたナックルのように。だからこの際、そんなオッサンたちに告ぐ。電車の中ではもっとパーソナルスペースを意識しよう。じゃないと怒りで我を忘れて、知らない間におっちゃんのことをオッサンと呼んでしまうことになるから。


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